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第81話 一難去って…?
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ニコラスが私を襲撃?する為に学園に乗り込み、教師達に捕まって連行されてから数日が経過し、すっかり私の周囲は平和になっていた。それと同時に私とデリクさんの仲も少しずつ進展していった。
…尤も、まだデリクさんに肝心の前世の話は出来ないでいたけれども。
いきなり突拍子も無いことを口にして、デリクさんに引かれてしまうのが怖かったからだ。
そして今日は待ちに待った週末―。
****
朝食の席で父が私に声を掛けてきた。
「アンジェラ、今日も店の開店準備で出かけるのだろう?」
「はい、そうです」
「デリクさんは来るのかしら?」
母が意味深な表情を浮かべて私を見た。
「あ…デリクさんは…今日は実家の方に行くと話していました。コンラート家に養子になるにあたり、戸籍が必要ということで…取りに行くそうです」
デリクさんの実家は汽車で片道4時間かかる片田舎だと聞かされていた。デリクさんはもともとそこで中等部の臨時教師をしていけれども、一度も会った事のない遠縁にあたるコンラート家からデリクさんの両親を通して上京することを勧められ…ついに決心して3ヶ月程前に上京してきたのだった。恐らくデリクさんに上京を勧めていた時からコンラート家ではニコラスの事で頭を悩まし、次期伯爵家の跡取りとしてデリクさんに白羽の矢を立てていたようだった。
「そうか。確かに養子縁組するには戸籍を取りに行く必要があるからな。デリクさんに会えなくて寂しいんじゃないのか?」
兄が何処か、からかうような口ぶりで私に言う。
「そ、それは…確かに寂しい事もありますけど…今日はお店のオープンに向けて色々事前準備をしなければならないことがあって、忙しいので大丈夫です」
デリクさんの事を持ち出され、思わず顔が赤らんでしまう。
「そうだったな。確かオープンまで後半月を切ったし…。ところでアンジェラ。話は変わるが…ひょっとすると近いうちにパメラが出所するかもしれないらしいんだ」
父の突然の話に私を含め、母も兄も驚いた。
「まぁ!本当ですか、あなた!」
「父上、一体どういう事なのです?あの悪女が出所なんて!」
兄はパメラの事をはっきり悪女と言い切った。
「お父様…出所するかもしれないのはパメラだけなのですか?それとも…」
私の言葉に父が言った。
「ああ、あくまで噂なのだが…恐らく出所するとなればパメラだけだと思う」
「そうなのですか?でも何故です?あの悪女は親の権力を使って、自分より立場の弱い人間を脅迫してアンジェラに嫌がらせを働いていたし、平民のくせにアンジェラに嫌がらせを働いてきたのですよ?」
兄が興奮気味に父に言う。
「ああ…その事なのだが、理由はまだパメラが18歳だからなのかもしれない。成人年齢として扱われるのは19歳からだからな…未成年はあまり厳しく処罰出来ないのが現状だからこればかりは仕方ないかもしれない」
折角鬱陶しいニコラスが排除されたと思ったのに、今度はあのパメラが出所するかもしれないなんて…。
「大丈夫?アンジェラ」
私が黙り込んでしまった様子を見て母が心配そうに声を掛けてきた。
「ええ、大丈夫です。ニコラスの後ろ盾が無くなったパメラなど所詮私の相手にはなりませんから」
私は笑みを浮かべて母に言った。
そう、私が気がかりなのはパメラの嫌がらせなどではなく、パメラごときを相手にする時間が惜しいだけなのだから―。
…尤も、まだデリクさんに肝心の前世の話は出来ないでいたけれども。
いきなり突拍子も無いことを口にして、デリクさんに引かれてしまうのが怖かったからだ。
そして今日は待ちに待った週末―。
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朝食の席で父が私に声を掛けてきた。
「アンジェラ、今日も店の開店準備で出かけるのだろう?」
「はい、そうです」
「デリクさんは来るのかしら?」
母が意味深な表情を浮かべて私を見た。
「あ…デリクさんは…今日は実家の方に行くと話していました。コンラート家に養子になるにあたり、戸籍が必要ということで…取りに行くそうです」
デリクさんの実家は汽車で片道4時間かかる片田舎だと聞かされていた。デリクさんはもともとそこで中等部の臨時教師をしていけれども、一度も会った事のない遠縁にあたるコンラート家からデリクさんの両親を通して上京することを勧められ…ついに決心して3ヶ月程前に上京してきたのだった。恐らくデリクさんに上京を勧めていた時からコンラート家ではニコラスの事で頭を悩まし、次期伯爵家の跡取りとしてデリクさんに白羽の矢を立てていたようだった。
「そうか。確かに養子縁組するには戸籍を取りに行く必要があるからな。デリクさんに会えなくて寂しいんじゃないのか?」
兄が何処か、からかうような口ぶりで私に言う。
「そ、それは…確かに寂しい事もありますけど…今日はお店のオープンに向けて色々事前準備をしなければならないことがあって、忙しいので大丈夫です」
デリクさんの事を持ち出され、思わず顔が赤らんでしまう。
「そうだったな。確かオープンまで後半月を切ったし…。ところでアンジェラ。話は変わるが…ひょっとすると近いうちにパメラが出所するかもしれないらしいんだ」
父の突然の話に私を含め、母も兄も驚いた。
「まぁ!本当ですか、あなた!」
「父上、一体どういう事なのです?あの悪女が出所なんて!」
兄はパメラの事をはっきり悪女と言い切った。
「お父様…出所するかもしれないのはパメラだけなのですか?それとも…」
私の言葉に父が言った。
「ああ、あくまで噂なのだが…恐らく出所するとなればパメラだけだと思う」
「そうなのですか?でも何故です?あの悪女は親の権力を使って、自分より立場の弱い人間を脅迫してアンジェラに嫌がらせを働いていたし、平民のくせにアンジェラに嫌がらせを働いてきたのですよ?」
兄が興奮気味に父に言う。
「ああ…その事なのだが、理由はまだパメラが18歳だからなのかもしれない。成人年齢として扱われるのは19歳からだからな…未成年はあまり厳しく処罰出来ないのが現状だからこればかりは仕方ないかもしれない」
折角鬱陶しいニコラスが排除されたと思ったのに、今度はあのパメラが出所するかもしれないなんて…。
「大丈夫?アンジェラ」
私が黙り込んでしまった様子を見て母が心配そうに声を掛けてきた。
「ええ、大丈夫です。ニコラスの後ろ盾が無くなったパメラなど所詮私の相手にはなりませんから」
私は笑みを浮かべて母に言った。
そう、私が気がかりなのはパメラの嫌がらせなどではなく、パメラごときを相手にする時間が惜しいだけなのだから―。
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