上 下
69 / 119

第69話 気が早い家族

しおりを挟む
「成程…そのような事があったとは…」

父が腕組みをして頷く。

「うん。彼となら良い義理の兄弟関係を築けそうだな」

兄が笑みを浮かべて私を見た。

「え…ええっ?!きょ、兄弟関係ですかっ?!」

何て気の早い…。

「でもアンジェラの話を聞く限りではとても好青年だと思うわ。何しろ誰一人としてニコラス様に叩かれそうになっているアンジェラを助けようとしない所へデリクさんが現れて助けてくれたのでしょう?おまけに教会に暮らす貧しい子供たちの為に食べ物を届けてあげるなんて…きっとその青年ならきっとアンジェラを幸せにしてくれるはずだわ」

「お、お母様まで…」

すると兄が父に尋ねた。

「ところで父上からはデリクと言う人物はどのように見えましたか?」

「うん…そうだな。兎に角穏やかで…とても優しそうな人物に思えたよ。まさにニコラス様とは真逆なタイプだな。それに何より彼自身がアンジェラに興味を持っていたからね」

そして父はチラリと私を見た。

デリクさんが私に興味を…?

その言葉にますます自分の顔が赤くなる。すると父が私に声を掛けて来た。

「…それでどうする?アンジェラ。デリクさんと…会って話をしてみるかい?」

「え?!あ、あの…。は、はい…お願いします…」

私は真っ赤になりながら、返事をした―。



****

 その日の夜―


 いつもの様に睡眠前の日課となった出品用の布小物を縫っていると、ベッドメイキングをしていたミルバが声を掛けて来た。

「アンジェラ様、今夜は随分ご機嫌ですね。何か良いことでもありましたか?」

「あ?分っちゃった?さすがはミルバね」

「ええ。何と言っても私はアンジェラお嬢様の専属メイドですから」

ミルバはニッコリ笑みを浮かべると私を見た。

「実はね…私に新しい婚約者候補の方が現れたのだけど、今度の方はとても素敵な男性なのよ。それが嬉しくてつい…ね」

恥ずかしそうに言うと、ミルバが目を見開いた。

「まぁ!そうだったのですか?それは良かったですね。おめでとうございますっ!」

ミルバはまるで自分の事の様に喜んでいる。

「アンジェラ様。こんな言い方をしては失礼かもしれませんが…はっきり申し上げて、ニコラス様は婚約者としてはいかがなものかとずっと以前から思っていたのです。ましてやあの方は平気で弱い者たちに手を上げて来るような人でしたから…。だから私、こんな縁組潰れてしまえばいいとずっと思っていたんです。でもこれで一安心です。アンジェラ様に嫌がらせをするパメラもいなくなり、ニコラス様との悪縁も切れて、良縁に恵まれたのですから」

「良縁に恵まれたなんて…気が早いわよ。まだ婚約者候補としては正式にお会いした事が無いのだから」

けれど口ではそう言いながら私は内心期待に胸を膨らませていた。デリクさんは男性でありながら私の手作り商品にとても関心を示してくれた。

あの人となら、この先もずっと良い関係を築いていけそうな予感がする―。


しおりを挟む
感想 309

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

婚約破棄されてすぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者が反対してきます

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私ミレッサは、婚約者のウルクに罪を捏造されて婚約破棄を言い渡されてしまう。    私が無実だと友人のカインがその場で説明して――カインが私の新しい婚約者になっていた。  すぐに新しい婚約者ができたけど、元婚約者ウルクは反対してくる。  元婚約者が何を言っても、私には何も関係がなかった。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...