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第68話 もっと罰を!
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「アンジェラ…も、もしかしてその反応は…?」
兄が愕然とした表情を浮かべて私を見た。
「まさか…」
「ひょっとして…?」
父も母も私の方を見つめる。
「あ、あの。実は授業を教わった事は無いのですが…学校でお会いしたことがあるんです」
「え?!そ、そんな話は初耳だが?一体いつどこで知り合ったのだ?」
普段冷静な父が何故か狼狽えている。
「教えてくれ!」
「そうよ、話して頂戴?」
兄も母も詰め寄って来た。
「はい、実は…」
そこで私はデリクさんとどのようにして知り合ったのか詳しい経緯を説明した。
親友のペリーヌと学食でランチを食べていた時にパメラが1人で私たちの元へやってきて、いきなりランチボックスを奪ったこと。
そしてわざと床に落とし、中に入っていたロールサンドを全て駄目にされてしまったところまでを話し終えると、兄が怒りを露わにした。
「何だってっ?!その生意気な平民パメラは生意気にもお前のランチボックスを奪って食べ物を床に落としたのか?何故そんな肝心な事を言わなかったのだ?」
「ああ、そうだ。人の物を取り上げて食べ物を粗末にするなど許せる範疇を超えているぞ?」
父は手にしていたフォークを強く握りしめ…柄をグニャリと歪ませてしまった。
「本当に彼女は性格が歪んでいるわね…」
母は溜息をついた。
「ええ、そうです。そこで私は注意したのですが、わざとでは無いと涙目で訴えて来たのです。そこへニコラス様が現れて…」
その後、ニコラスに手を上げられそうになった話までを終えたところ、話が中断されてしまった。何故なら兄が突然口を開いたからだ。
「あの馬鹿はそこまであの平民にいれこんでいたのか?!本当に救いようが無い阿保だ!」
兄は吐き捨てる様に言った。
「うむ、まさにその通りだ。常識的で考えれば普通は分る筈なのだが…。アンジェラはコンラート家から直々にニコラス様の許婚にしたいと申し出てきているのに、よりにもよってお前を蔑ろにし、代わりに平民の恋人に入れ込むとは…情けない…」
父が腕組しながら難しい顔をする。
「本当に腹立たしい話ですわね。でもこのまま黙っているのは癪に障ります。あなた、今からでも遅くありません。今の話も伯爵家に告げるべきです!」
母が強気な態度で父に訴える。
「ええ、そうですね。この際だから些細な事でも全て報告するべきでしょう。あの阿保はもっと罰を受けるべきなのです」
兄が頷く。
「え~と…話が大分それてしまいましたが…でもニコラス様はもう廃嫡処分になって屋敷を追い出されたのですよね?だったら今更コンラート家にそのような報告をしても遅いのではありませんか?」
すると兄が反論した。
「いいや、アンジェラ。遅いことは何も無いぞ?あの阿保は廃嫡処分にはされたが、まだ家族の縁が切れたわけでは無い。挙句に財産まで分けて貰えているのだ」
「確かにそうですが…」
「今の話をコンラート家に報告すれば、ひょっとしてもっとニコラス様に罰を与えるかもしれないわよ?」
「でも…もう十分ニコラスは罰を与えられたと思いますが…」
「うむ…しかし、ニコラス様はもっと処罰されるべきかもしれないな…。もとはと言えば、パメラがお前に対する態度をそこまで増長させた全ての原因はニコラス様にあるのだからな…。取りあえず、明日コンラート家に報告しよう。それで?デリクさんと出会った時の続きを聞かせてくれるかい?」
父が笑みを浮かべながら、催促して来る。
「はい」
そして私はその後の続きを話した。
叩かれそうになった私を止めに現れた人物がデリクさんだった事、床に落ちてしまったロールサンドを一緒に拾ってくれた事、ニコラスが置いて行った学食の食事を教会で暮らす身寄りのない子供たちの為に持って行った事を―。
兄が愕然とした表情を浮かべて私を見た。
「まさか…」
「ひょっとして…?」
父も母も私の方を見つめる。
「あ、あの。実は授業を教わった事は無いのですが…学校でお会いしたことがあるんです」
「え?!そ、そんな話は初耳だが?一体いつどこで知り合ったのだ?」
普段冷静な父が何故か狼狽えている。
「教えてくれ!」
「そうよ、話して頂戴?」
兄も母も詰め寄って来た。
「はい、実は…」
そこで私はデリクさんとどのようにして知り合ったのか詳しい経緯を説明した。
親友のペリーヌと学食でランチを食べていた時にパメラが1人で私たちの元へやってきて、いきなりランチボックスを奪ったこと。
そしてわざと床に落とし、中に入っていたロールサンドを全て駄目にされてしまったところまでを話し終えると、兄が怒りを露わにした。
「何だってっ?!その生意気な平民パメラは生意気にもお前のランチボックスを奪って食べ物を床に落としたのか?何故そんな肝心な事を言わなかったのだ?」
「ああ、そうだ。人の物を取り上げて食べ物を粗末にするなど許せる範疇を超えているぞ?」
父は手にしていたフォークを強く握りしめ…柄をグニャリと歪ませてしまった。
「本当に彼女は性格が歪んでいるわね…」
母は溜息をついた。
「ええ、そうです。そこで私は注意したのですが、わざとでは無いと涙目で訴えて来たのです。そこへニコラス様が現れて…」
その後、ニコラスに手を上げられそうになった話までを終えたところ、話が中断されてしまった。何故なら兄が突然口を開いたからだ。
「あの馬鹿はそこまであの平民にいれこんでいたのか?!本当に救いようが無い阿保だ!」
兄は吐き捨てる様に言った。
「うむ、まさにその通りだ。常識的で考えれば普通は分る筈なのだが…。アンジェラはコンラート家から直々にニコラス様の許婚にしたいと申し出てきているのに、よりにもよってお前を蔑ろにし、代わりに平民の恋人に入れ込むとは…情けない…」
父が腕組しながら難しい顔をする。
「本当に腹立たしい話ですわね。でもこのまま黙っているのは癪に障ります。あなた、今からでも遅くありません。今の話も伯爵家に告げるべきです!」
母が強気な態度で父に訴える。
「ええ、そうですね。この際だから些細な事でも全て報告するべきでしょう。あの阿保はもっと罰を受けるべきなのです」
兄が頷く。
「え~と…話が大分それてしまいましたが…でもニコラス様はもう廃嫡処分になって屋敷を追い出されたのですよね?だったら今更コンラート家にそのような報告をしても遅いのではありませんか?」
すると兄が反論した。
「いいや、アンジェラ。遅いことは何も無いぞ?あの阿保は廃嫡処分にはされたが、まだ家族の縁が切れたわけでは無い。挙句に財産まで分けて貰えているのだ」
「確かにそうですが…」
「今の話をコンラート家に報告すれば、ひょっとしてもっとニコラス様に罰を与えるかもしれないわよ?」
「でも…もう十分ニコラスは罰を与えられたと思いますが…」
「うむ…しかし、ニコラス様はもっと処罰されるべきかもしれないな…。もとはと言えば、パメラがお前に対する態度をそこまで増長させた全ての原因はニコラス様にあるのだからな…。取りあえず、明日コンラート家に報告しよう。それで?デリクさんと出会った時の続きを聞かせてくれるかい?」
父が笑みを浮かべながら、催促して来る。
「はい」
そして私はその後の続きを話した。
叩かれそうになった私を止めに現れた人物がデリクさんだった事、床に落ちてしまったロールサンドを一緒に拾ってくれた事、ニコラスが置いて行った学食の食事を教会で暮らす身寄りのない子供たちの為に持って行った事を―。
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