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第65話 耳を疑う言葉
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「廃嫡処分に退学ですか…それはまた驚きの内容ですね」
「ああ、私も突然の話に驚いた。朝食会で呼ばれた時は、婚約破棄の件は無かった事にしてもらいたいと頼み込まれるのではないかと思っていたよ。尤もそんな事を言われても承諾する気持ちはこちらには全く無かったけどね」
「ええ、私もそう思っておりました。ですがお父様のことを信頼しておりましたので何も心配はしておりませんでした」
「そうか?信頼してもらえて嬉しい限りだ。兎に角、こちらも意気込んで朝食会に望んだのだが、コンラート伯爵は私に会うなりいきなり謝罪してきたのだ。『ニコラスが迷惑を掛けたようで申し訳なかった』と。そして婚約破棄を承諾してくれたよ」
「コンラート伯爵はなかなか潔い方ですね」
私の言葉に父が頷く。
「全くだ。てっきりゴネてくるとばかり思っていただけに少し拍子抜けしたくらいだからな。そして昨夜の内にニコラス様を廃嫡処分にして、ついでに退学させたそうだ」
「退学させた理由は何ですか?」
「う、うむ…その事なのだが…」
何故か父は言い淀む。
「?」
私は首を傾げた。
「まぁ、一つ目の理由だが…それはアンジェラを守る為だと話されていたな」
「私を守る…ですか?」
「ああ、ニコラス様は昨夜帰宅後も『アンジェラに復讐してやる』と喚いていたそうだ。その発言が廃嫡処分の決定打になったようだな」
「そうだったのですか?」
「ああ、退学させた理由もやはりアンジェラの為だと話されていた。同じ学校にいれば嫌でも2人は顔を合わせるだろう?伯爵はこう言っていたよ。『ニコラスの事だ。アンジェラの悪口を周囲に言いふらし、婚約破棄をしたのはアンジェラが原因だと言いかねないので退学させることにした』とね」
「それはまた…随分伯爵は私の味方をして下さったのですね。第一、こんなにあっさり婚約破棄を受け入れて下さったのですから…感謝しないといけませんね」
「そうか…?アンジェラはそう思っているのか?」
父は私をじっと見つめてくる。
「え?ええ。そうですが…。でも…私にはもう関係無いことですが、そうなりますとコンラート家は跡継ぎをどうされるのでしょうね?ニコラス様は1人きりのご子息でしたから、廃嫡処分にしてしまっては跡継ぎがいなくなるのではありませんか?」
伯爵家でありながら跡継ぎが不在となると色々大変なのではないだろうか?
「ああ…実はその事なのだが、もう既に手は打ってあるそうなのだ」
「そうなのですか?」
「遠縁の男性を養子にする事が決定したそうなのだよ。それで私もその人物に本日会わせてもらったのだよ」
「え?お父様がお会いになったのですか?」
何故だろう?
すると父がゴホンと咳払いし、私を見た。
「アンジェラ…そ、その…もう一度婚約をしてみる気は…あるか?」
「え…?」
私は父の言葉に耳を疑った―。
「ああ、私も突然の話に驚いた。朝食会で呼ばれた時は、婚約破棄の件は無かった事にしてもらいたいと頼み込まれるのではないかと思っていたよ。尤もそんな事を言われても承諾する気持ちはこちらには全く無かったけどね」
「ええ、私もそう思っておりました。ですがお父様のことを信頼しておりましたので何も心配はしておりませんでした」
「そうか?信頼してもらえて嬉しい限りだ。兎に角、こちらも意気込んで朝食会に望んだのだが、コンラート伯爵は私に会うなりいきなり謝罪してきたのだ。『ニコラスが迷惑を掛けたようで申し訳なかった』と。そして婚約破棄を承諾してくれたよ」
「コンラート伯爵はなかなか潔い方ですね」
私の言葉に父が頷く。
「全くだ。てっきりゴネてくるとばかり思っていただけに少し拍子抜けしたくらいだからな。そして昨夜の内にニコラス様を廃嫡処分にして、ついでに退学させたそうだ」
「退学させた理由は何ですか?」
「う、うむ…その事なのだが…」
何故か父は言い淀む。
「?」
私は首を傾げた。
「まぁ、一つ目の理由だが…それはアンジェラを守る為だと話されていたな」
「私を守る…ですか?」
「ああ、ニコラス様は昨夜帰宅後も『アンジェラに復讐してやる』と喚いていたそうだ。その発言が廃嫡処分の決定打になったようだな」
「そうだったのですか?」
「ああ、退学させた理由もやはりアンジェラの為だと話されていた。同じ学校にいれば嫌でも2人は顔を合わせるだろう?伯爵はこう言っていたよ。『ニコラスの事だ。アンジェラの悪口を周囲に言いふらし、婚約破棄をしたのはアンジェラが原因だと言いかねないので退学させることにした』とね」
「それはまた…随分伯爵は私の味方をして下さったのですね。第一、こんなにあっさり婚約破棄を受け入れて下さったのですから…感謝しないといけませんね」
「そうか…?アンジェラはそう思っているのか?」
父は私をじっと見つめてくる。
「え?ええ。そうですが…。でも…私にはもう関係無いことですが、そうなりますとコンラート家は跡継ぎをどうされるのでしょうね?ニコラス様は1人きりのご子息でしたから、廃嫡処分にしてしまっては跡継ぎがいなくなるのではありませんか?」
伯爵家でありながら跡継ぎが不在となると色々大変なのではないだろうか?
「ああ…実はその事なのだが、もう既に手は打ってあるそうなのだ」
「そうなのですか?」
「遠縁の男性を養子にする事が決定したそうなのだよ。それで私もその人物に本日会わせてもらったのだよ」
「え?お父様がお会いになったのですか?」
何故だろう?
すると父がゴホンと咳払いし、私を見た。
「アンジェラ…そ、その…もう一度婚約をしてみる気は…あるか?」
「え…?」
私は父の言葉に耳を疑った―。
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