お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

第48話 我慢の限界に達した時

　突然現れて、私達の前で暴言を吐いてきたパメラ。その声はあまりに大きく、周囲にいた全員が固まり、静まり返ってしまった。

それにしても…パメラがここまで怖いもの知らずだとは思わなかった。今自分が何を言ったのか、理解出来ているのだろうか？
この場にいる父と兄でさえ、呆気に盗られて口を開けてパメラを見ている。


そしてその静寂を破ったのがウッド氏であった。

「パメラッ！！な、何と言う愚かな娘だ…！お前は何を考えているのだっ！」

ウッド氏は自分の立場が窮地にあるにも関わらず、パメラに向かって叱りつけた。まだ娘の身を案ずるだけの余裕があるのだろうか？

「何言ってるのよ！私達家族がこんな目に遭ったのはこの悪女のせいなのよっ！このまま黙って見過ごせるはずないでしょう？！」

「そうよ、パメラ。よく言ったわ。流石は私の娘ね」

パメラの母が手を叩く。

「こ、この…馬鹿親子めっ！！」

ウッド氏が暴れると、その場にいた男性たちに取り押さえられた。

「静かにしろっ！」
「暴れるんじゃないっ！」

「ええいっ！は、離せっ！あの馬鹿親子を黙らせなければならないんだっ！あっ！な、何をする！！よせっ！私を一体何処へ連れて行こうとするんだ！」

尚も暴れるウッド氏はとうとう、労働組合の男性たちに無理やり何処かへ連行されてしまった。

そんな様子を冷ややかな目で見ていたパメラはため息をつく。

「はぁ～…全く煩い親ね」

再び私に視線を移すと、再びヒステリックに喚いた。

「どうしてくれるのよ？！アンジェラさんのせいでお父さんが捕まったじゃない！こんな事…私にしてもいいと思っているの？貴女が蒔いた種なんだから…何とかしなさいよっ！」

「そうよ、パメラ。もっと言ってやりなさい。貴女にはニコラスがついているのだから」

背後でパメラを煽る母親。

一体何処まで愚かな母娘なのだろう？自分が今どれだけ窮地に立たされているのか気付いていないのだろうか？

「…全く…。パメラ、貴女一体…」

ため息をついて言いかけた時、兄が口を挟んできた。

「おい…一体誰に向かって口を聞いているんだ？」

その声には微かな怒気が含まれている。

「あら…？貴方は誰？身なりからすると労働者には見えないけれど…ひょっとして今父を連れ去った連中の仲間なの？」

驚いたことにパメラは兄にも横柄な口を叩いた。

「まぁ、確かに我々は彼らの仲間と言えるかもしれないけれどね…」

父も口元に笑みを浮かべながらパメラに話しかけるけれども、その目は笑って等はいなかった。

「ふ～ん…だったら言わせてもらいますけどね、この女は私に個人的恨みを持っていて、その嫌がらせの為にうちの農園が悪いことをしていると、組合に訴えているだけなのよ？恐らく書類だってこの女が偽造したに決まっているわ」

そして私を指さしてきた。もうこの言葉に我慢出来なかった。

「おい！お前っ！」
「君…それ以上言うと…！」

父と兄が顔色を変えてパミラに声をかけるより早く、私は叫んだ。

「パメラッ！！いい加減にしなさいっ！！」

私の剣幕に驚いて言葉を失う皆。パメラもよほど驚いたのか、口をぽかんと開けて私を見ている。

「さっきから黙って話を聞いていればいい気になって…一体誰に向かってそんな失礼な口を叩いているのよっ？！この農園に嫌がらせをする為に私が書類を偽造した？ふざけないで頂戴っ！言葉を返すようだけどね…私は貴女が思っているほど暇人ではないのよっ！！今、こうやって貴女の相手をしているだけでもはっきり言って時間の無駄だと思っている位なのよっ！」

ついに…私の我慢は限界に達した―。