上 下
34 / 119

第34話 悪い芽は早めに摘み取りましょう

しおりを挟む
 その夜の事―

家族全員揃っての夕食の席で父が話しをした。

「母さん、ダンテ。聞いてくれ。今日、学校でアンジェラが大変な目に遭ったそうだ」

「え?何があったんだ?」

兄の食事をする動きが止まり、私を見た。

「はい、実は…」

そこで私は母と兄に父に説明した時と同様の話をすると2人とも驚いた様子で私を見た。

「何だって?!あの馬鹿はパメラとかいう平民女と結託して今迄お前に嫌がらせを働いていたのか?!」

ついに兄はニコラスの固有名詞すら出さずに馬鹿呼ばわりした。

「何てことなの…。そうだと分かっていれば昨夜の段階で私から婚約破棄を申し出たのに…」

母がため息をついた。

「いやいや、母さん。それは無理だ。アンジェラ本人から婚約破棄を宣言しなければコンラート伯爵夫妻は認めてくれないよ」

父が母に説明する。

「それより、本日ニコラス様は何をしに屋敷を訪ねてきたのでしょう?学校は休んだし…そちらが気になります」

私の言葉に兄が反応した。

「何っ?!あの馬鹿がこの屋敷に来たのかっ?!」

「ええ、そうなのよ。でも面倒だったから部屋には招き入れたけど放置しておいたわ。何も文句を言わずにいつの間にか帰っていたみたいね。あら、今日のお魚は特に美味しいわね」

母は魚料理を口にし、満足げに笑みを浮かべる。

「そうだな。それにしてもニコラス様はよほど暇なお方なのだろう。まぁ伝言も残さずに帰られたのだから大した用事は無かったのだろう」

父はワインを美味しそうに飲みながら語る。

「それでアンジェラ。明日はお休みだからまた開店準備に町へ行くのかしら?」

母が尋ねてきた。

「いいえ。明日はお店には行きません。父とパメラの父親の経営する農園に行ってきます」

すると兄が目を輝かせた。

「何だって?そんな面白い…いや、重要な問題を抱えている農園に行くのなら当然僕も一緒に行かなければ。いいですよね?父上」

「うむ、そうだな。悪徳経営者を裁く…いや、実態を知るには良い機会かもしれないし…なら3人で行こう」

「「はい」」

私と兄は同時に返事をし…明日は急遽3人でパメラの父親が経営する農園に視察?に行くことが決定した―。



****


22時―

 自室に戻り、入浴を済ませた私は刺繍をしていた。

「アンジェラ様。ハーブティーが入りました」

ミルバが声を掛けてきた。

「ありがとう、ミルバ」

刺繍の手を止めると目の前に湯気の立つティーカップをミルバが置いてくれた。

「素敵な香りね…これはカモミールティーかしら?」

「はい、そうです。安眠効果がありますよ?今日アンジェラ様が学校で不愉快な目に遭われたと聞かされたので」

「う~ん…不愉快な目にならほぼ毎日遭っていたのだけどね…」

「え?そうだったのですか?!」

ミルバが目を丸くする。

「ええ、でもわざわざ報告するほどのものでもなかったし…黙っていたのだけど、流石に今回は見過ごせなかったのよ」

そして一口ハーブティーを飲む。

「うん、美味しい…」

そして私はミルバに言った、

「やっぱり悪い事をする人間は放置しておくと駄目ね。放っておくとエスカレートするもの。悪い芽は早めに摘み取って置かなくちゃ。そうしないと良い品物は作れないわ。例えばこのハーブティーのようにね?」

「え?は、はい。そのとおりですね」

「あ~お茶が美味しい」

そして私は残りのハーブティーを飲み干した―。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】今夜さよならをします

たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。 あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。 だったら婚約解消いたしましょう。 シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。 よくある婚約解消の話です。 そして新しい恋を見つける話。 なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!! ★すみません。 長編へと変更させていただきます。 書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。 いつも読んでいただきありがとうございます!

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。

和泉 凪紗
恋愛
 伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。  三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。  久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。

処理中です...