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第17話 私の思惑通り
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「この馬鹿息子がっ!」
「うるさいっ!馬鹿親っ!」
「親に向かって馬鹿親とは何ですかっ!!」
応接室の扉の前に立つと部屋の中から激しい親子喧嘩の声が聞こえてくる。
「全く…何という方達だ…親子喧嘩を他人の屋敷でするとは…」
父がため息をつく。
「お父様、早く中へ入りましょう。そうでなければ親子喧嘩はますます激しくなっていくかもしれません」
私の言葉に兄が賛同した。
「ええ、アンジェラの言う通りだと思います」
「ああ、分かった。では中へ入るぞ」
そして父はノブを握ると、扉を大きく開け放った。
「どうもお待たせ致しました。娘を連れてまいりましたよ」
するとコンラート親子は3人共ソファから立ち上がったままで一斉にこちらを振り向いた。
「アンジェラッ!」
私の姿を見たニコラスはすかさず鋭い声を上げ…。
「いい加減にしろっ!」
コンラート伯爵に無理やり頭を鷲掴みにされ、再び頭を下げさせられた。
「アンジェラ嬢、この度は息子が君に手を上げそうになったと聞かされた。本当に申し訳なかった。どうか愚かな息子を許しては頂けないだろうか?屋敷に連れ帰った後もよーく言い聞かせるので、どうか許してくれっ!」
「ええ、私からもどうかお願いします。馬鹿な息子を許して頂けないかしら?私達は貴女程ニコラスの妻としてふさわしいお嬢さんはいないと思っているのよ。ニコラスを支えていけるのは貴女の様に大人びて賢い方だけなの。だから許して貰えないかしら?」
夫人が懇願してきた。
「…」
一方のニコラスは未だに伯爵に頭を押さえつけられたまま、口を閉ざしている。しかし、その肩は小刻みに震えている。ひょっとすると必死で怒りを抑えているのかもしれない。
「まぁ、皆さん落ち着いて下さい。取りあえず掛けませんか?アンジェラがニコラス様に話があるそうなので」
父の言葉に、その場にいた全員がソファに腰かけた。そして私は父の隣に座る。
向かい側の席にはニコラスが両親に挟まれて座っていた。
「アンジェラ嬢からの話?ああ、ぜひ伺わせてくれ。おい、良く聞いているんだぞ?」
コンラート伯爵はニコラスに言い聞かせた。
「そうよ、アンジェラさんの話を一言一句聞き洩らさないようにしなさい」
夫人はニコラスの耳元で言う。
「…」
ニコラスは両サイドから両親に言い聞かせられ、明らかに不満そうな表情を浮かべながら私に言った。
「アンジェラ…話とは何だ?」
すると兄がすかさず口を挟む。
「ニコラス様、まずはアンジェラに始めに言う事があるのではないですか?」
「!」
ビクリとニコラスの肩が跳ね…怯えた様子で私を見ると頭を下げて来た。
「わ、悪かった…アンジェラ…つい、今日はあ、頭に血が上って…アンジェラに手を上げてしまいそうになって…すまなかった…です。ゆ、許して下さい…」
ニコラスは私に頭を下げて来たけれども、心からの謝罪でないことはすぐに分った。恐らくコンラート伯爵夫妻もその事は気付いているだろう。その証拠に2人共私の事をちらちらと見ている。
「…分りました。今回は…特別に許して差し上げます。ただ…今後同じような事を後3回繰り返した場合はこちらから婚約破棄させて頂きます。それで宜しいでしょうか?」
「な、何と3回も?!流石はアンジェラ嬢だ!我が息子の度量の無さを考慮して3回もチャンスを与えてくれるなんて…本当にニコラスの嫁になって頂くのにこれ以上の優れた人材はいない。そうは思わないか?」
コンラート伯爵は嬉しそうに夫人に言う。
「ええ、本当ですわ。ニコラス、アンジェラ嬢に感謝しなさい?お前の様に怒りっぽい人間を3回も許して下さるそうなのだから感謝するのよ?」
先程からニコラスは怒りを抑えてブルブルと震えている。…ひょっとしてニコラスは私が待ち望んでいた言葉を発するのだろうか?
私は固唾を飲んで見守った。
「ふ、ふざけないでくれっ!何が後3回も?だ!よし、いいだろう!そこまで言うまら…後1度でもアンジェラに手を上げそうになってしまった場合…人前だろうとどこであろうとアンジェラからの即刻婚約破棄を受けてやるよっ!どうだ?」
「ニコラスッ!」
「お前、何て事を言うのだっ!」
伯爵と夫人が同時に声を上げた。
「はい、ではそうさせて頂きます」
私はすかさず返事をした。やはりニコラス。私の思惑通りの言動を取ってくれた。彼の短気な性格を利用しつつ、自分の株を上げる。これこそが私の狙いだ。
「「「「「「え…?」」」」」」
私の家族をはじめ、全員が驚いた様子で私を見る。
「ニコラス様の言う通り…後一度でも私に手を上げる素振りを見せた場合、即刻その場で婚約破棄をこちらか申し上げます。宜しいですね?」
しかし、ニコラスは返事をしない。
「ニコラス様?お返事が聞こえないのですが?」
「あ、ああっ!わ、分ったよ…」
ニコラスはやけ気味に返事をした。
こうして私の思惑通り、ニコラスが後1度でも手を上げようとしたならば、即刻その場で婚約破棄出来る権利を私は手に入れたのだった―。
「うるさいっ!馬鹿親っ!」
「親に向かって馬鹿親とは何ですかっ!!」
応接室の扉の前に立つと部屋の中から激しい親子喧嘩の声が聞こえてくる。
「全く…何という方達だ…親子喧嘩を他人の屋敷でするとは…」
父がため息をつく。
「お父様、早く中へ入りましょう。そうでなければ親子喧嘩はますます激しくなっていくかもしれません」
私の言葉に兄が賛同した。
「ええ、アンジェラの言う通りだと思います」
「ああ、分かった。では中へ入るぞ」
そして父はノブを握ると、扉を大きく開け放った。
「どうもお待たせ致しました。娘を連れてまいりましたよ」
するとコンラート親子は3人共ソファから立ち上がったままで一斉にこちらを振り向いた。
「アンジェラッ!」
私の姿を見たニコラスはすかさず鋭い声を上げ…。
「いい加減にしろっ!」
コンラート伯爵に無理やり頭を鷲掴みにされ、再び頭を下げさせられた。
「アンジェラ嬢、この度は息子が君に手を上げそうになったと聞かされた。本当に申し訳なかった。どうか愚かな息子を許しては頂けないだろうか?屋敷に連れ帰った後もよーく言い聞かせるので、どうか許してくれっ!」
「ええ、私からもどうかお願いします。馬鹿な息子を許して頂けないかしら?私達は貴女程ニコラスの妻としてふさわしいお嬢さんはいないと思っているのよ。ニコラスを支えていけるのは貴女の様に大人びて賢い方だけなの。だから許して貰えないかしら?」
夫人が懇願してきた。
「…」
一方のニコラスは未だに伯爵に頭を押さえつけられたまま、口を閉ざしている。しかし、その肩は小刻みに震えている。ひょっとすると必死で怒りを抑えているのかもしれない。
「まぁ、皆さん落ち着いて下さい。取りあえず掛けませんか?アンジェラがニコラス様に話があるそうなので」
父の言葉に、その場にいた全員がソファに腰かけた。そして私は父の隣に座る。
向かい側の席にはニコラスが両親に挟まれて座っていた。
「アンジェラ嬢からの話?ああ、ぜひ伺わせてくれ。おい、良く聞いているんだぞ?」
コンラート伯爵はニコラスに言い聞かせた。
「そうよ、アンジェラさんの話を一言一句聞き洩らさないようにしなさい」
夫人はニコラスの耳元で言う。
「…」
ニコラスは両サイドから両親に言い聞かせられ、明らかに不満そうな表情を浮かべながら私に言った。
「アンジェラ…話とは何だ?」
すると兄がすかさず口を挟む。
「ニコラス様、まずはアンジェラに始めに言う事があるのではないですか?」
「!」
ビクリとニコラスの肩が跳ね…怯えた様子で私を見ると頭を下げて来た。
「わ、悪かった…アンジェラ…つい、今日はあ、頭に血が上って…アンジェラに手を上げてしまいそうになって…すまなかった…です。ゆ、許して下さい…」
ニコラスは私に頭を下げて来たけれども、心からの謝罪でないことはすぐに分った。恐らくコンラート伯爵夫妻もその事は気付いているだろう。その証拠に2人共私の事をちらちらと見ている。
「…分りました。今回は…特別に許して差し上げます。ただ…今後同じような事を後3回繰り返した場合はこちらから婚約破棄させて頂きます。それで宜しいでしょうか?」
「な、何と3回も?!流石はアンジェラ嬢だ!我が息子の度量の無さを考慮して3回もチャンスを与えてくれるなんて…本当にニコラスの嫁になって頂くのにこれ以上の優れた人材はいない。そうは思わないか?」
コンラート伯爵は嬉しそうに夫人に言う。
「ええ、本当ですわ。ニコラス、アンジェラ嬢に感謝しなさい?お前の様に怒りっぽい人間を3回も許して下さるそうなのだから感謝するのよ?」
先程からニコラスは怒りを抑えてブルブルと震えている。…ひょっとしてニコラスは私が待ち望んでいた言葉を発するのだろうか?
私は固唾を飲んで見守った。
「ふ、ふざけないでくれっ!何が後3回も?だ!よし、いいだろう!そこまで言うまら…後1度でもアンジェラに手を上げそうになってしまった場合…人前だろうとどこであろうとアンジェラからの即刻婚約破棄を受けてやるよっ!どうだ?」
「ニコラスッ!」
「お前、何て事を言うのだっ!」
伯爵と夫人が同時に声を上げた。
「はい、ではそうさせて頂きます」
私はすかさず返事をした。やはりニコラス。私の思惑通りの言動を取ってくれた。彼の短気な性格を利用しつつ、自分の株を上げる。これこそが私の狙いだ。
「「「「「「え…?」」」」」」
私の家族をはじめ、全員が驚いた様子で私を見る。
「ニコラス様の言う通り…後一度でも私に手を上げる素振りを見せた場合、即刻その場で婚約破棄をこちらか申し上げます。宜しいですね?」
しかし、ニコラスは返事をしない。
「ニコラス様?お返事が聞こえないのですが?」
「あ、ああっ!わ、分ったよ…」
ニコラスはやけ気味に返事をした。
こうして私の思惑通り、ニコラスが後1度でも手を上げようとしたならば、即刻その場で婚約破棄出来る権利を私は手に入れたのだった―。
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