5 / 119
第5話 証拠は?
しおりを挟む
「ほら!これが証拠だ」
「…」
私はあまりの言いがかりに反論する気にもなれなかった。確かにノートは無惨に破かれてはいるが何処に私が破いたという証拠があるのだろう?
「黙っている…と言う事はその通りなのだろう?何故破いたのだ!言えっ!」
「あの…私が破いたという証拠はどこにあるのですか?」
「証拠だと?彼女たちが見ていたのだからな、証拠などいらないだろう」
ニコラスは後ろに立つ3人の女子学生たちに言う。
「ええ。私達は見たわ」
「アンジェラさんはパメラから無理やりノートを奪ったのよ」
「ひどい人だわ…いきなりページを破くんだから」
「どうだ?彼女たちはああ言っているが?」
そしてニコラスはパメラを振り向くと言った。
「パメラはお前が謝罪してくれれば許すと言ってるぞ?そうだろう?パメラ」
「は、はい…アンジェラさんは私がニコラスと仲が良いのが許せなかったのだと思うの。それであんな真似をしたのでしょう…。きっと頭に血が登っての咄嗟のことだったのじゃないかしら?だから…謝ってくれれば私はそれで構わないわ」
そして私をチラリと見た。
「…」
私は半ば呆れながらパメラを見た。一応私は子爵家の令嬢であり、パメラは平民。通常貴族が平民に頭を下げることなどありえない。それは貴族のメンツを潰すことになるからだ。
パメラは私が余程気に入らないのだろう。なんとしても頭を下げさせたいのだろう。だが、私は今迄一度たりとも頭を下げたことは無い。何しろ私は何一つ悪いことはしていないのだから。
「どうした!黙っていないでさっさと謝れっ!」
ニコラスが怒鳴るが、彼の怒鳴り声など少しも怖くはなかった。
「それはおかしな話ですね」
私は腕組みしながら言う。
「…何がおかしいのだ?」
「それでは聞くけど、何時頃の話なの?」
私はパメラに尋ねた。
「えっと…確か16時半頃かしら?」
16時半と言えば、学生たちはほとんど帰宅している。恐らく誰にも見られていない環境下で私に嫌がらせをされたと訴えたいのだろう。
「それはおかしな話ね。16時半なら私は家に帰っている時間よ」
「あ、な、なら16時くらいだったかもしれないわ。ね?そうだったわよね?」
パメラは焦ったように3人の友人たちに同意を求める。
「そ、そうそう。あれは16時だったわね」
「ええ、そうだったわね」
「私達の勘違いだったわ」
3人の女子学生が慌てて頷く。全く…こんな子供でもバレるような嘘を良くも平気でつけるものだ。
「それなら…つまり3人共私がパメラのノートを破くところを見たというのね?」
「ええ、そうよ」
1人の女子学生が返事をする。
「何だ?お前は何が言いたい?」
不機嫌そうにニコラスが尋ねてくる。
「つまり彼女たちはパメラのノートが私に破かれるのを黙って見ていたと言うことですよね?止めることもせず…。それっておかしくないですか?」
「な…っ!パ、パメラ…」
ニコラスがパメラを振り向く。
「ニコラス…わ、私…嘘なんてついていないわ…彼女たちはアンジェラさんが貴族だったから…何も言えなかったのよ…」
パメラが涙目でニコラスを見る。
「「「…」」」
3人の女子学生たちは黙ってうつむいている。
「あ、ああ…分かった。信じるよ。パメラの事を」
ニコラスはパメラの頭を撫でながら言う。恐らくニコラスはパメラの言葉なんか信用していないだろう。だが、ニコラスに取ってパメラは大切な幼馴染であり恋人だ。彼にとって私はパメラとの仲を引き裂く悪女でしか無いのだろう。
「…いい加減にしてくれませんか?兎に角私は何もしていないので謝るつもりはこれっぽっちもありません」
肩をすくめて言う。
「な、何だとっ?!お前はまたそんな口を叩くのかっ?!」
「ええ。事実を述べただけですが?それに私は昨日、16時には帰宅しています。証拠ならありますよ?屋敷の人たちが証明してくれるでしょうから」
「お前は…本当に可愛げの無い女なのだな?!だから俺はお前のそういう所が嫌なんだっ!」
「ええ。その台詞も聞き飽きました。それではもう戻ってもいいですか?授業が始まりそうなので」
それだけ言うと私はニコラス達を置いて空き教室を出て行った。
「この分だと…今日の放課後また呼び出しを食らいそうね…」
そして私はため息を付いた―。
「…」
私はあまりの言いがかりに反論する気にもなれなかった。確かにノートは無惨に破かれてはいるが何処に私が破いたという証拠があるのだろう?
「黙っている…と言う事はその通りなのだろう?何故破いたのだ!言えっ!」
「あの…私が破いたという証拠はどこにあるのですか?」
「証拠だと?彼女たちが見ていたのだからな、証拠などいらないだろう」
ニコラスは後ろに立つ3人の女子学生たちに言う。
「ええ。私達は見たわ」
「アンジェラさんはパメラから無理やりノートを奪ったのよ」
「ひどい人だわ…いきなりページを破くんだから」
「どうだ?彼女たちはああ言っているが?」
そしてニコラスはパメラを振り向くと言った。
「パメラはお前が謝罪してくれれば許すと言ってるぞ?そうだろう?パメラ」
「は、はい…アンジェラさんは私がニコラスと仲が良いのが許せなかったのだと思うの。それであんな真似をしたのでしょう…。きっと頭に血が登っての咄嗟のことだったのじゃないかしら?だから…謝ってくれれば私はそれで構わないわ」
そして私をチラリと見た。
「…」
私は半ば呆れながらパメラを見た。一応私は子爵家の令嬢であり、パメラは平民。通常貴族が平民に頭を下げることなどありえない。それは貴族のメンツを潰すことになるからだ。
パメラは私が余程気に入らないのだろう。なんとしても頭を下げさせたいのだろう。だが、私は今迄一度たりとも頭を下げたことは無い。何しろ私は何一つ悪いことはしていないのだから。
「どうした!黙っていないでさっさと謝れっ!」
ニコラスが怒鳴るが、彼の怒鳴り声など少しも怖くはなかった。
「それはおかしな話ですね」
私は腕組みしながら言う。
「…何がおかしいのだ?」
「それでは聞くけど、何時頃の話なの?」
私はパメラに尋ねた。
「えっと…確か16時半頃かしら?」
16時半と言えば、学生たちはほとんど帰宅している。恐らく誰にも見られていない環境下で私に嫌がらせをされたと訴えたいのだろう。
「それはおかしな話ね。16時半なら私は家に帰っている時間よ」
「あ、な、なら16時くらいだったかもしれないわ。ね?そうだったわよね?」
パメラは焦ったように3人の友人たちに同意を求める。
「そ、そうそう。あれは16時だったわね」
「ええ、そうだったわね」
「私達の勘違いだったわ」
3人の女子学生が慌てて頷く。全く…こんな子供でもバレるような嘘を良くも平気でつけるものだ。
「それなら…つまり3人共私がパメラのノートを破くところを見たというのね?」
「ええ、そうよ」
1人の女子学生が返事をする。
「何だ?お前は何が言いたい?」
不機嫌そうにニコラスが尋ねてくる。
「つまり彼女たちはパメラのノートが私に破かれるのを黙って見ていたと言うことですよね?止めることもせず…。それっておかしくないですか?」
「な…っ!パ、パメラ…」
ニコラスがパメラを振り向く。
「ニコラス…わ、私…嘘なんてついていないわ…彼女たちはアンジェラさんが貴族だったから…何も言えなかったのよ…」
パメラが涙目でニコラスを見る。
「「「…」」」
3人の女子学生たちは黙ってうつむいている。
「あ、ああ…分かった。信じるよ。パメラの事を」
ニコラスはパメラの頭を撫でながら言う。恐らくニコラスはパメラの言葉なんか信用していないだろう。だが、ニコラスに取ってパメラは大切な幼馴染であり恋人だ。彼にとって私はパメラとの仲を引き裂く悪女でしか無いのだろう。
「…いい加減にしてくれませんか?兎に角私は何もしていないので謝るつもりはこれっぽっちもありません」
肩をすくめて言う。
「な、何だとっ?!お前はまたそんな口を叩くのかっ?!」
「ええ。事実を述べただけですが?それに私は昨日、16時には帰宅しています。証拠ならありますよ?屋敷の人たちが証明してくれるでしょうから」
「お前は…本当に可愛げの無い女なのだな?!だから俺はお前のそういう所が嫌なんだっ!」
「ええ。その台詞も聞き飽きました。それではもう戻ってもいいですか?授業が始まりそうなので」
それだけ言うと私はニコラス達を置いて空き教室を出て行った。
「この分だと…今日の放課後また呼び出しを食らいそうね…」
そして私はため息を付いた―。
83
お気に入りに追加
4,669
あなたにおすすめの小説
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる