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第2話 私の秘密
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7時―
両親と5歳年上の兄と一緒に家族揃って朝食を食べていた。
「アンジェラ。今日も学校の帰りに店に寄るのか?」
父がフォークとナイフを動かしながら尋ねて来た。
「はい、そうです。でも納品だけしてくるのですぐに戻ってきます」
「そうよね。貴女がお店を開けるのはもう少し先ですものね」
母がスープを飲みながら私を見た。
「アンジェラ…お前は子爵家の令嬢でありながら、町で店を開くなんて事が世間に知られたらどうするんだ?特にお前の許婚のニコラスに知られたら何を言われるか分ったものじゃないぞ?」
今年23歳になるダンテお兄様が話しかけてきた。ニコラスとは私と同じ18歳の青年であり、一応私の許婚でもある。
「私はお店に出るときは眼鏡にカツラをかぶる予定ですからバレる事は無いと思います。それにニコラス様は私が何をしようが、興味を持ちませんから」
私の言葉に父の顔が曇った。
「アンジェラ…すまないな。ニコラス様の父君から是非、お前を息子の妻に迎えたいと押し切られてしまったばかりに…」
「気にしないで下さい、お父様。家同士の結婚なのですから。私は別に幸せな結婚等望んでいませんもの」
そう、だって私には前世の記憶があるのだから―。
****
私、アンジェラ・ベルモンドは家族に秘密を持っている。
実は前世の記憶を持ってこの世に生まれて来た。
前世の私は日本で生まれ育ち、手芸作家として活躍していた。元々手芸が趣味でネット販売をしている内に話題になり、いつしかプロの手芸作家として活躍していたのだ。私生活も順調で優しい恋人と結婚秒読みの段階だった。
幸せになれるはずだったのに…。
ある日突然私は病に倒れてしまったのだ。そして闘病生活の末、28歳の若さで世を去り…目覚めればベビーベッドの中だった。
前世の大人の記憶を持っている為か、私は早熟な子供だった。そこが気に入られてしまったのだろう。
15歳の時に父と一緒に伯爵家であるニコラスの屋敷を訪ねた際、彼の父親に気に入られ、気付けば私はいつの間にかニコラス・コンラートの許婚にされてしまっていた。
しかし、彼には平民である幼馴染の大切な少女、パメラ・カストロフ・ウッドがいた―。
****
「私はもともとニコラス様には何の興味も抱いておりませんからあの方に恋人がいようがいまいが関係ありません。だからどうか気になさらないで下さいね」
両親に心配を掛けないように、ニッコリと笑みを浮かべた。そう、だって私が恋する相手は今も前世の恋人の彼だけだから…。
「まぁ…アンジェラアがそれで構わないなら…私からは何も言う事は無いが…すまないな」
父は申し訳なさそうな顔で私を見た。
「いいんですよ。どうか気にしないで下さいね。それでは食事も済んだことですし、学校へ行く準備があるのでこれで失礼します」
ガタンと席を立ち、私は家族に挨拶するとダイニングルームを出て行った。
私の興味は今のところ、手芸だけだ。ニコラスもパメラも…そして2人の取り巻き達も何かにつけて私に言いがかりをつけてくるが、所詮私から見れば彼らは全員お子様だ。そんな連中を相手にしている程私は暇人では無い。何しろ半月後には私の手作り品の雑貨屋さんがオープンするのだから。
「まだ登校するまでには時間があるわね…。部屋に戻ってパッチワークの続きをしなくちゃ」
私は急ぎ足で自室へ向かった―。
両親と5歳年上の兄と一緒に家族揃って朝食を食べていた。
「アンジェラ。今日も学校の帰りに店に寄るのか?」
父がフォークとナイフを動かしながら尋ねて来た。
「はい、そうです。でも納品だけしてくるのですぐに戻ってきます」
「そうよね。貴女がお店を開けるのはもう少し先ですものね」
母がスープを飲みながら私を見た。
「アンジェラ…お前は子爵家の令嬢でありながら、町で店を開くなんて事が世間に知られたらどうするんだ?特にお前の許婚のニコラスに知られたら何を言われるか分ったものじゃないぞ?」
今年23歳になるダンテお兄様が話しかけてきた。ニコラスとは私と同じ18歳の青年であり、一応私の許婚でもある。
「私はお店に出るときは眼鏡にカツラをかぶる予定ですからバレる事は無いと思います。それにニコラス様は私が何をしようが、興味を持ちませんから」
私の言葉に父の顔が曇った。
「アンジェラ…すまないな。ニコラス様の父君から是非、お前を息子の妻に迎えたいと押し切られてしまったばかりに…」
「気にしないで下さい、お父様。家同士の結婚なのですから。私は別に幸せな結婚等望んでいませんもの」
そう、だって私には前世の記憶があるのだから―。
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私、アンジェラ・ベルモンドは家族に秘密を持っている。
実は前世の記憶を持ってこの世に生まれて来た。
前世の私は日本で生まれ育ち、手芸作家として活躍していた。元々手芸が趣味でネット販売をしている内に話題になり、いつしかプロの手芸作家として活躍していたのだ。私生活も順調で優しい恋人と結婚秒読みの段階だった。
幸せになれるはずだったのに…。
ある日突然私は病に倒れてしまったのだ。そして闘病生活の末、28歳の若さで世を去り…目覚めればベビーベッドの中だった。
前世の大人の記憶を持っている為か、私は早熟な子供だった。そこが気に入られてしまったのだろう。
15歳の時に父と一緒に伯爵家であるニコラスの屋敷を訪ねた際、彼の父親に気に入られ、気付けば私はいつの間にかニコラス・コンラートの許婚にされてしまっていた。
しかし、彼には平民である幼馴染の大切な少女、パメラ・カストロフ・ウッドがいた―。
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「私はもともとニコラス様には何の興味も抱いておりませんからあの方に恋人がいようがいまいが関係ありません。だからどうか気になさらないで下さいね」
両親に心配を掛けないように、ニッコリと笑みを浮かべた。そう、だって私が恋する相手は今も前世の恋人の彼だけだから…。
「まぁ…アンジェラアがそれで構わないなら…私からは何も言う事は無いが…すまないな」
父は申し訳なさそうな顔で私を見た。
「いいんですよ。どうか気にしないで下さいね。それでは食事も済んだことですし、学校へ行く準備があるのでこれで失礼します」
ガタンと席を立ち、私は家族に挨拶するとダイニングルームを出て行った。
私の興味は今のところ、手芸だけだ。ニコラスもパメラも…そして2人の取り巻き達も何かにつけて私に言いがかりをつけてくるが、所詮私から見れば彼らは全員お子様だ。そんな連中を相手にしている程私は暇人では無い。何しろ半月後には私の手作り品の雑貨屋さんがオープンするのだから。
「まだ登校するまでには時間があるわね…。部屋に戻ってパッチワークの続きをしなくちゃ」
私は急ぎ足で自室へ向かった―。
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