上 下
86 / 108

5章 2 現れた人達

しおりを挟む
 私とエイダは『風属性』の魔法科の受講教室に到着した。

階段教室に入ると既に大勢の女子学生たちが集まり、あちこちでお喋りに花を咲かせていた。
中にはまだ友人がいないのか、1人で待機している女子学生たちの姿もある。

「すごい大人数ね……驚きだわ。一体何人ぐらいいるのかしら?」

「そうね、恐らく100人以上はいると思うわ」

「100人……」

エイダの言葉に何か胸騒ぎを感じて周囲を見渡してみた。

「クラリス、辺りを見渡してどうかしたの?」

「え? う、うん。空いてる席は無いかと思って探していたの」

「そうね……あ! あの席が空いているみたいよ」

エイダは真ん中の列の席を指さと、一列だけ空席になっている。

「エイダ、それじゃあの席に座らない?」

「ええ、いいわよ」

2人で空いている席に座ると、エイダが興奮した様子で話し始めた。

「やっと念願の授業を受けられるんだわ。この日をどんなに夢見てたことかしら」

「そんなに楽しみにしていたの?」

「当然よ。『ニルヴァーナ』大学がこの大陸一番魔術課の授業レベルが高いのだから。私ね、将来は魔術協会に就職したいのよ」

「え!? ど、どうして!?」

魔術協会という言葉に思わず動揺してしまう。

「そんなに驚くことかしら? 魔術協会に入れば……」

そのとき。

「あら? あなたは確か……クラリスさんじゃないの?」

不意に声をかけられ、振り向くと見知らぬ女子学生が私を見下ろしていた。彼女は
3人の女子学生を引き連れている。

「え、ええ。そうですけど……」

「私達に何か用かしら?」

エイダが女子学生に尋ねる。

「用という程のものではないけれど、この間魔術の属性検査で唯一光の属性だったでしょう? だから印象に残っていたのよ。でも……まさかこのクラスで一緒になるとは思わなかったわ」

何故か、この女子学生から敵意のようなものが感じられる。

「先生からは光の属性クラスは無いので、好きなクラスに入って良いと許可を貰えたの。だからこのクラスに入ったのだけど?」

「ふ~ん、そう。まぁ、どこのクラスに所属するのも構わないけれど……余り目立つようなことはしないでちょうだいね」

「え……?」

あまりにも突拍子もない言葉に戸惑ってしまう。

「何よ、それは一体どういう意味なのかしら?」

エイダが女子学生を睨みつけた。

「別に、言葉通りの意味よ。……行きましょう」

女子学生はフイッと向きを変えると3人の女子学生を連れて行ってしまった。

「……全く、入学早々男を引き連れて歩くなんて」

去り際、私に聞えよがしの言葉を残し……。

女子学生が私達から離れていくとエイダが口を開いた。

「何よ、今の人。感じ悪いわ。きっとクラリスに嫉妬しているのよ。あんなの気にする必要は無いわよ」

「え、ええ……」

頷くも、女子学生の言葉は納得できた。1人の女子学生に4人の男子学生が張り付いていれば、目立つのは当然だ。
あの人達はみんな、私を監視しているだけだと説明出来ればいいのに……。

その時、女子学生たちがざわめき始めた。

「突然どうしたのかしら……あ!」

出入り口の方を見つめていたエイダが突然驚きの声をあげた。

「どうしたの? エイダ」

「クラリス……落ち着いて扉の方を見て……」

「え?」

エイダに言われるまま、出入り口を振り向き……驚きで目を見開いた。

「そ、そんな……どうして……」

私の目に、リオンとロザリンが教室に入ってくる姿が映し出された――









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

【短編集】婚約破棄【ざまぁ】

彼岸花
恋愛
一万文字未満の婚約破棄・ざまぁを含む短編集

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

貧乏Ωの憧れの人

ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。 エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

処理中です...