82 / 108
4章14 過保護な人たち
しおりを挟む
「それじゃ、クラリス。放課後また迎えに来るわね」
私達の教室の前に到着すると、別クラスのエイダが私に手を振ってきた。
「そのことなのだけど……今日は寄りたいところがあるから大丈夫よ。寮でまた会いましょう」
「え? 寄りたいところ?」
私の言葉にエイダが首を傾げた。
「実は……兄に用があるのよ」
「先生に用があるの?」
「ええ、ちょっと大事な話がしたくて」
エイダにはこれ以上詳しい話をすることは出来ない。すると事情を察したのか、フレッドが会話に入ってきた。
「そうか、なら俺達も行こう。何しろ先生から直にクラリスのお目付け役を言い渡されているからな」
「どうも疑わしいわね……」
エイダが疑わしい目をフレッドに向けるとセシルが会話に入ってきた。
「うん。そうだよ、俺達は先生の助手なんだよ。先生はクラリスをとても可愛がっていてね。片時も目を離さないようにって言われているんだ」
「クラリス、その話本当なの?」
じっと私を見つめてくるエイダ。
「ええ、本当なの。兄は過保護だから……セシルとフレッドに私のことを頼んだのよ」
私の『過保護』という言葉に、フレッドが肩を震わせている。多分笑い出したいのを堪えているのかもしれない。
「だったら私も……」
「悪いが、あんたは遠慮してくれ。先生からは学園内では兄妹という関係を伏せておくように言われているんだ」
フレッドが機転を利かせた言葉に、エイダが驚いて私を見た。
「え!? そうだったの? 私、クラリスから先生と兄妹だって聞かされたわよ?」
「エイダになら、話しても良いかと思って……」
「話してくれてありがとう、クラリス」
エイダが私の手を握りしめると頷いた。
「分かったわ、でもそういうことなら私は遠慮したほうが良さそうね。それじゃ、寮で会いましょう。またね」
「ええ、またね」
エイダと手を振って別れると私達は教室へ入った。
「クラリス、ここに座りなよ」
先に席を確保してくれていたアンディに促されて右隣に着席すると、早速話しかけてきた。
「ガイダンスはどうだった? 属性は何になったんだい?」
「私、光の属性になったわ」
「光だって? そんな属性、初めて聞くぞ?」
アンディの左隣に座っていたザカリーが驚いた様子で私を見つめる。
「光の属性の魔法科クラスは無いから、好きなクラスに所属して良いと先生に言われたわ。だから風のクラスに入ることにしたの」
「何故風のクラスにしたんだい?」
アンディが質問してきた。
「エイダが風の属性だったからよ」
「そうか……確かエイダは風の属性だったはずだな」
その後も、私達3人の会話は先生が教室に現れるまで続き……その様子をセシルとフレッドは少し離れた場所で黙って聞いていた――
****
――午後4時
本日最後のガイダンスが終了すると、セシルがアンディ達に声をかけた。
「それじゃ、俺達はクラリスを連れて先生のところへ行ってくるから」
「俺達は行ったら駄目なのか?」
「部外者には関係ないだろう?」
ザカリーの問いかけにフレッドがそっけなく返事をする。
「何だと? 誰が部外者だ」
その言葉に、ザカリーが睨みつける。……相変わらずこの2人は犬猿の仲のようだ。
どうして仲良くすることが出来ないのだろう?
「やめろよ、ザカリー。今日のところは彼らにクラリスを任せよう」
険悪な2人の間にアンディが入ってきた。
「何だよ、その今日のところっていうのは」
フレッドの質問に答えること無く、アンディは私に声をかけてきた。
「それじゃ、クラリス。またな」
「……じゃあな」
「え? ええ。またね、2人とも」
アンディとザカリーが教室を出ていくと、フレッドが私をじっと見つめてくる。
「な、何?」
「……いや、何でもない。それじゃ行くか」
「そうだな、行こう」
「ええ、行きましょう」
そして私達は3人揃って、兄のいる教員室へ向った――
私達の教室の前に到着すると、別クラスのエイダが私に手を振ってきた。
「そのことなのだけど……今日は寄りたいところがあるから大丈夫よ。寮でまた会いましょう」
「え? 寄りたいところ?」
私の言葉にエイダが首を傾げた。
「実は……兄に用があるのよ」
「先生に用があるの?」
「ええ、ちょっと大事な話がしたくて」
エイダにはこれ以上詳しい話をすることは出来ない。すると事情を察したのか、フレッドが会話に入ってきた。
「そうか、なら俺達も行こう。何しろ先生から直にクラリスのお目付け役を言い渡されているからな」
「どうも疑わしいわね……」
エイダが疑わしい目をフレッドに向けるとセシルが会話に入ってきた。
「うん。そうだよ、俺達は先生の助手なんだよ。先生はクラリスをとても可愛がっていてね。片時も目を離さないようにって言われているんだ」
「クラリス、その話本当なの?」
じっと私を見つめてくるエイダ。
「ええ、本当なの。兄は過保護だから……セシルとフレッドに私のことを頼んだのよ」
私の『過保護』という言葉に、フレッドが肩を震わせている。多分笑い出したいのを堪えているのかもしれない。
「だったら私も……」
「悪いが、あんたは遠慮してくれ。先生からは学園内では兄妹という関係を伏せておくように言われているんだ」
フレッドが機転を利かせた言葉に、エイダが驚いて私を見た。
「え!? そうだったの? 私、クラリスから先生と兄妹だって聞かされたわよ?」
「エイダになら、話しても良いかと思って……」
「話してくれてありがとう、クラリス」
エイダが私の手を握りしめると頷いた。
「分かったわ、でもそういうことなら私は遠慮したほうが良さそうね。それじゃ、寮で会いましょう。またね」
「ええ、またね」
エイダと手を振って別れると私達は教室へ入った。
「クラリス、ここに座りなよ」
先に席を確保してくれていたアンディに促されて右隣に着席すると、早速話しかけてきた。
「ガイダンスはどうだった? 属性は何になったんだい?」
「私、光の属性になったわ」
「光だって? そんな属性、初めて聞くぞ?」
アンディの左隣に座っていたザカリーが驚いた様子で私を見つめる。
「光の属性の魔法科クラスは無いから、好きなクラスに所属して良いと先生に言われたわ。だから風のクラスに入ることにしたの」
「何故風のクラスにしたんだい?」
アンディが質問してきた。
「エイダが風の属性だったからよ」
「そうか……確かエイダは風の属性だったはずだな」
その後も、私達3人の会話は先生が教室に現れるまで続き……その様子をセシルとフレッドは少し離れた場所で黙って聞いていた――
****
――午後4時
本日最後のガイダンスが終了すると、セシルがアンディ達に声をかけた。
「それじゃ、俺達はクラリスを連れて先生のところへ行ってくるから」
「俺達は行ったら駄目なのか?」
「部外者には関係ないだろう?」
ザカリーの問いかけにフレッドがそっけなく返事をする。
「何だと? 誰が部外者だ」
その言葉に、ザカリーが睨みつける。……相変わらずこの2人は犬猿の仲のようだ。
どうして仲良くすることが出来ないのだろう?
「やめろよ、ザカリー。今日のところは彼らにクラリスを任せよう」
険悪な2人の間にアンディが入ってきた。
「何だよ、その今日のところっていうのは」
フレッドの質問に答えること無く、アンディは私に声をかけてきた。
「それじゃ、クラリス。またな」
「……じゃあな」
「え? ええ。またね、2人とも」
アンディとザカリーが教室を出ていくと、フレッドが私をじっと見つめてくる。
「な、何?」
「……いや、何でもない。それじゃ行くか」
「そうだな、行こう」
「ええ、行きましょう」
そして私達は3人揃って、兄のいる教員室へ向った――
1,080
お気に入りに追加
3,066
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる
mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。
どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。
金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。
ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる