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4章13 方針と対策
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あの後は凄い騒ぎになってしまった。何しろ私の属性は『光』に決定してしまったからだ。
ニルヴァーナ学園において、魔術の属性クラスは『炎』『水』『風』『地』そして『無属性』に別れ、『光』という属性は存在しない。
そこで、先生(兄)から好きな属性クラスに所属して良いと言われたので私はエイダと同じ『風』の属性に入ることに決めたのだったが……。
「それにしても、今日のガイダンスは大変だったわね」
教室を出る準備をしているとエイダが話しかけてきた。
「ええ、昨日も今日も大変だったわ」
本当は目立たずに学生生活を過ごしたいのに……。
このままの調子で毎回騒ぎになれば、今に全学年に私の存在が知れ渡ることになりかねない。
「でもあの先生、『光』の属性なんてあんな大勢の学生たちの前で告げちゃって良かったのかしら? だってクラリスは目立ちたくないのでしょう?」
「え? そうね。目立ちたくはないわ」
何故エイダが私の気持ちに気付いたのだろう?
――その時
「あ、クラリス。ナイト達が迎えに来たわよ?」
何処か、からかうような口調でエイダが声をかけてきた。
「え? ナイト達?」
顔を上げると、セシルとフレッドがこちらへ近づいてくる姿が見えた。
その様子をまだ教室に残っていた女子学生たちが遠巻きに見ている。何しろ人目を惹くような容姿をした2人が女子学生だけの集まっていた教室に現れたのだから。
「本当に、皆クラリスのことが心配なのね」
エイダが耳元でクスクス笑う。
「そ、そうね……」
返事をするも、内心私は複雑だった。セシル達が私に構うのは魔術師協会からの命令なのに。
「お待たせ、2人とも。それじゃ次の教室へ行こうか」
私達の元へやってくるとセシルが私達に笑顔を向けてきた。
「ええ、行きましょう」
エイダが返事をし、私達は4人で次の教室へ向った。
「アンディ達はどうしているの?」
廊下を歩きながらエイダがセシルに質問する。
「2人は先に教室へ行って席を取っているよ。皆で迎えに行ってもあまり意味が無いしね」
「確かにそうかも。でもいいわね、皆同じクラスで。私もクラリスと同じクラスになりたかったわ」
チラリとエイダが私を見る。
「だがクラス分けと言っても、前期だけだろう? 後期からは撰択科目で授業を受けるのだから、クラスは関係なくなるんだし」
フレッドの言葉で、私は肝心なことを忘れていたことに気付いた。
「あ……そうだわ」
「クラリス、どうしたんだ?」
セシルが尋ねてきた。
「どうしよう……選択科目で授業を受けるとなれば、ひょっとするとロザリン達に会ってしまうかもしれないってことよね……?」
あのロザリンのことだ。男女別々の授業で無い限りは絶対にリオンと同じ科目を選択しているに違いない。
「確かにその可能性は高いわね……あの2人は初等部の頃から常に一緒に行動していたから。何しろロザリンがリオンから離れようとしなかったのよ」
「ふ~ん。つまりリオンは束縛されているってことか。恐ろしい女だな」
エイダの話にフレッドが肩を竦める。
「……」
その話に私は穏やかではいられなかった。すると不意にフレッドが私の頭にポンと手を置いてきた。
「フレッド?」
「心配することはない。俺もセシルもクラリスと同じ授業を選択するつもりだ。俺達がそばにいれば、あの女だって下手な真似はしてこないだろう?」
「フレッドの言うとおりだよ。俺達はクラリスから離れるつもりは無いから安心しなよ」
「セシル……」
するとエイダがクスクス笑う。
「ほら、やっぱりクラリスのナイトじゃない」
「はぁ? 何言ってるんだよ?」
フレッドが呆れた目をエイダに向ける。その後は3人で何やら会話が始まり、私は傍で黙って話を聞いていた。
セシルもフレッドも頼れる言葉をかけてくれる。
けれども、私の不安は拭えなかった。
少しずつズレは生じているものの、それでもここはゲーム『ニルヴァーナ』の世界。
着実にストーリーは進行していっているのだから。
その時、ふと兄の存在を思い出した。
そうだ。
兄にロザリンとリオンに自分の存在を知られてしまったことを報告しよう。
兄なら、何か対策を考えてくれるかもしれない――
ニルヴァーナ学園において、魔術の属性クラスは『炎』『水』『風』『地』そして『無属性』に別れ、『光』という属性は存在しない。
そこで、先生(兄)から好きな属性クラスに所属して良いと言われたので私はエイダと同じ『風』の属性に入ることに決めたのだったが……。
「それにしても、今日のガイダンスは大変だったわね」
教室を出る準備をしているとエイダが話しかけてきた。
「ええ、昨日も今日も大変だったわ」
本当は目立たずに学生生活を過ごしたいのに……。
このままの調子で毎回騒ぎになれば、今に全学年に私の存在が知れ渡ることになりかねない。
「でもあの先生、『光』の属性なんてあんな大勢の学生たちの前で告げちゃって良かったのかしら? だってクラリスは目立ちたくないのでしょう?」
「え? そうね。目立ちたくはないわ」
何故エイダが私の気持ちに気付いたのだろう?
――その時
「あ、クラリス。ナイト達が迎えに来たわよ?」
何処か、からかうような口調でエイダが声をかけてきた。
「え? ナイト達?」
顔を上げると、セシルとフレッドがこちらへ近づいてくる姿が見えた。
その様子をまだ教室に残っていた女子学生たちが遠巻きに見ている。何しろ人目を惹くような容姿をした2人が女子学生だけの集まっていた教室に現れたのだから。
「本当に、皆クラリスのことが心配なのね」
エイダが耳元でクスクス笑う。
「そ、そうね……」
返事をするも、内心私は複雑だった。セシル達が私に構うのは魔術師協会からの命令なのに。
「お待たせ、2人とも。それじゃ次の教室へ行こうか」
私達の元へやってくるとセシルが私達に笑顔を向けてきた。
「ええ、行きましょう」
エイダが返事をし、私達は4人で次の教室へ向った。
「アンディ達はどうしているの?」
廊下を歩きながらエイダがセシルに質問する。
「2人は先に教室へ行って席を取っているよ。皆で迎えに行ってもあまり意味が無いしね」
「確かにそうかも。でもいいわね、皆同じクラスで。私もクラリスと同じクラスになりたかったわ」
チラリとエイダが私を見る。
「だがクラス分けと言っても、前期だけだろう? 後期からは撰択科目で授業を受けるのだから、クラスは関係なくなるんだし」
フレッドの言葉で、私は肝心なことを忘れていたことに気付いた。
「あ……そうだわ」
「クラリス、どうしたんだ?」
セシルが尋ねてきた。
「どうしよう……選択科目で授業を受けるとなれば、ひょっとするとロザリン達に会ってしまうかもしれないってことよね……?」
あのロザリンのことだ。男女別々の授業で無い限りは絶対にリオンと同じ科目を選択しているに違いない。
「確かにその可能性は高いわね……あの2人は初等部の頃から常に一緒に行動していたから。何しろロザリンがリオンから離れようとしなかったのよ」
「ふ~ん。つまりリオンは束縛されているってことか。恐ろしい女だな」
エイダの話にフレッドが肩を竦める。
「……」
その話に私は穏やかではいられなかった。すると不意にフレッドが私の頭にポンと手を置いてきた。
「フレッド?」
「心配することはない。俺もセシルもクラリスと同じ授業を選択するつもりだ。俺達がそばにいれば、あの女だって下手な真似はしてこないだろう?」
「フレッドの言うとおりだよ。俺達はクラリスから離れるつもりは無いから安心しなよ」
「セシル……」
するとエイダがクスクス笑う。
「ほら、やっぱりクラリスのナイトじゃない」
「はぁ? 何言ってるんだよ?」
フレッドが呆れた目をエイダに向ける。その後は3人で何やら会話が始まり、私は傍で黙って話を聞いていた。
セシルもフレッドも頼れる言葉をかけてくれる。
けれども、私の不安は拭えなかった。
少しずつズレは生じているものの、それでもここはゲーム『ニルヴァーナ』の世界。
着実にストーリーは進行していっているのだから。
その時、ふと兄の存在を思い出した。
そうだ。
兄にロザリンとリオンに自分の存在を知られてしまったことを報告しよう。
兄なら、何か対策を考えてくれるかもしれない――
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