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3章16 友達
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「それでは、私はこれで失礼するわね」
女子学生たちが去っていくと、寮母さんが声をかけてきた。
「はい、ありがとうございます」
お礼を述べると寮母さんは軽く会釈して去って行き、私と心配そうにこちらを見ていた女子学生だけが残された。
「寮母さんを呼んできてくれて、ありがとうございます。おかげで助かりました」
お礼を述べると、女子学生は人懐こい笑みを浮かべた。
「お礼なんていいのよ。それに私もあなたと同じ1年なの。普通に話してくれると嬉しいわ」
「ええ、ならそうさせてもらうわ」
返事をしながら、私は女子学生を見つめた。……何故か、彼女を見ていると懐かしい気持ちがこみ上げてくる。
「そう言えば、まだ自己紹介をしていなかったわよね。私はエイダ・モールスというの。あなたの名前を教えてくれる?」
「!」
その名前を聞き、私は危うく声を上げそうになってしまった。まさか、眼の前の彼女が、かつての親友エイダだったとは思いもしなかった。
新入生が1000人近くもいるこの大学で、エイダに再会するなんて……。
確かによく見てみると、ダークブロンドに緑の瞳の彼女は12歳の頃の面立ちを残している。
「あの、どうかしたの? 何だか驚いた顔をしているようだけど?」
エイダが不思議そうに首を傾げる。
「いいえ、何でもないわ。初めまして、私はクラリス・レナーよ」
動揺する気持ちを抑えて、笑顔で挨拶した。
今の私はクラリス・レナー。もうこの世界にユニスは存在しない……存在してはいけないのだ。
「クラリス・レナー……それがあなたの名前なの?」
「ええ。そうよ」
頷くも、何故かエイダは私をじっと見つめてくる。
まさか私がユニスだと気付いたのだろうか? けれど、そんなはずはない。
今の私は以前の姿とは全く違う外見になっているのだ。髪の色も瞳も、そして顔立ちも……何もかも違うのだから。
「エイダさん?」
声をかけると、エイダは笑みを浮かべた。
「クラリスって、光り輝くという意味があるのよね。まさにあなたのような人にぴったりな名前ね」
「あ、ありがとう……」
良かった、別に気づかれたわけでは無かったのだ。
「ねぇ、私とお友達になってくれないかしら? あなたのように素敵な人が友達になってくれたら嬉しいのだけど」
エイダが真剣な眼差しを向けてくる。
その気持は、とても嬉しい。だって、彼女は私にとって大切な親友だったから。
だけどその親友に、自分がユニス・ウェルナーであることをこの先もずっと隠し続けなければいけない。
そんなことが私に出来るとは思えなかった。だったら、エイダとは距離を開けるべきだろう。
「あの、私……あなたとは……」
「クラリスさんっ!」
突然エイダが私の手を握りしめてきた。
「え? あ、あの?」
「お願い、私と友達になって? あなたにどんな事情があったとしても、絶対に詮索したりしないから!」
エイダの目は真剣であり……切羽詰まっているようにも見えた。
詮索しないなんて……どうして、そんな言い方をするのだろう?
やはり、エイダが何かに気づいているのだとしたら、近づいてはいけない。
いけないのに……エイダの握りしめてくる手がとても暖かくて、その手を離したくは無かった。
だから私は……。
「私もエイダと友達になりたいわ」
笑顔でエイダの手を握りしめた――
女子学生たちが去っていくと、寮母さんが声をかけてきた。
「はい、ありがとうございます」
お礼を述べると寮母さんは軽く会釈して去って行き、私と心配そうにこちらを見ていた女子学生だけが残された。
「寮母さんを呼んできてくれて、ありがとうございます。おかげで助かりました」
お礼を述べると、女子学生は人懐こい笑みを浮かべた。
「お礼なんていいのよ。それに私もあなたと同じ1年なの。普通に話してくれると嬉しいわ」
「ええ、ならそうさせてもらうわ」
返事をしながら、私は女子学生を見つめた。……何故か、彼女を見ていると懐かしい気持ちがこみ上げてくる。
「そう言えば、まだ自己紹介をしていなかったわよね。私はエイダ・モールスというの。あなたの名前を教えてくれる?」
「!」
その名前を聞き、私は危うく声を上げそうになってしまった。まさか、眼の前の彼女が、かつての親友エイダだったとは思いもしなかった。
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確かによく見てみると、ダークブロンドに緑の瞳の彼女は12歳の頃の面立ちを残している。
「あの、どうかしたの? 何だか驚いた顔をしているようだけど?」
エイダが不思議そうに首を傾げる。
「いいえ、何でもないわ。初めまして、私はクラリス・レナーよ」
動揺する気持ちを抑えて、笑顔で挨拶した。
今の私はクラリス・レナー。もうこの世界にユニスは存在しない……存在してはいけないのだ。
「クラリス・レナー……それがあなたの名前なの?」
「ええ。そうよ」
頷くも、何故かエイダは私をじっと見つめてくる。
まさか私がユニスだと気付いたのだろうか? けれど、そんなはずはない。
今の私は以前の姿とは全く違う外見になっているのだ。髪の色も瞳も、そして顔立ちも……何もかも違うのだから。
「エイダさん?」
声をかけると、エイダは笑みを浮かべた。
「クラリスって、光り輝くという意味があるのよね。まさにあなたのような人にぴったりな名前ね」
「あ、ありがとう……」
良かった、別に気づかれたわけでは無かったのだ。
「ねぇ、私とお友達になってくれないかしら? あなたのように素敵な人が友達になってくれたら嬉しいのだけど」
エイダが真剣な眼差しを向けてくる。
その気持は、とても嬉しい。だって、彼女は私にとって大切な親友だったから。
だけどその親友に、自分がユニス・ウェルナーであることをこの先もずっと隠し続けなければいけない。
そんなことが私に出来るとは思えなかった。だったら、エイダとは距離を開けるべきだろう。
「あの、私……あなたとは……」
「クラリスさんっ!」
突然エイダが私の手を握りしめてきた。
「え? あ、あの?」
「お願い、私と友達になって? あなたにどんな事情があったとしても、絶対に詮索したりしないから!」
エイダの目は真剣であり……切羽詰まっているようにも見えた。
詮索しないなんて……どうして、そんな言い方をするのだろう?
やはり、エイダが何かに気づいているのだとしたら、近づいてはいけない。
いけないのに……エイダの握りしめてくる手がとても暖かくて、その手を離したくは無かった。
だから私は……。
「私もエイダと友達になりたいわ」
笑顔でエイダの手を握りしめた――
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