上 下
44 / 108

2章29 待ち伏せ

しおりを挟む
――翌朝

 すっかり体調が良くなったので、今日は学校へ行くことにした。両親からは「病み上がりだから」と言われ、家の馬車を使って登校した。


 早目に学校へ到着し、校舎の入口前で私はリオンが登校してくるのを待った。
本当は時間を見計らってリオンのクラスに行きたいけれども、ロザリンたちと揉めたこともあり気まずい。それにSS2クラスの人たちは一般クラスの生徒を見下す。
それを避けるためには、この場所で待つしか無かった。


「リオン……まだかしら」

校舎前で待ち始めて、15分程が経過していた。
その間に大勢の生徒たちが登校してきたが、未だにリオンの姿が見えない。

「もしかして、見過ごしてしまったのかしら……?」

不安に思ったその時、人混みに紛れるようにリオンが、こちらに向かって来る姿が見えた。

「リオ……」

名前を口にしかけ、ハッとした。
リオンはロザリンと一緒に歩いていたのだ。

まさか、今朝ロザリンと一緒に登校を……?
降ろした両手をギュッと握りしめ、私はリオンが来るのを待った。


「あれ? ユニスじゃないか。おはよう」

リオンは私に気づき、すぐに声をかけてきた。

「おはよう、リオン」

「……おはよ」

ロザリンはリオンの手前か、いやいや私に挨拶してくる。

「こんな所で何してるの? 友達でも待っていたの?」

自分を待っていたという発想はリオンには無いのだろうか?

「リオンを待っていたのよ。あの、少し2人だけで話がしたいのだけど」

リオンは一瞬私を見つめ、次にロザリンに視線を移した。

「ロザリン、先に教室へ行っててもらえないかな?」

「え? 何故私も一緒じゃ駄目なの? それとも私がいたら、しにくい話でもするつもりかしら?」

ロザリンが意地悪な目を向けてくる。だけど、ロザリンにはこれからする話は聞かせたくない。

「私はリオンにだけ話をしたいの。いいわよね? だって、私達は婚約者同士なのだから」

「……そうだね」

リオンは頷き、ロザリンに声をかけた。

「ごめん、先に教室に行っててもらえないかな」

「え!? リオン様!?」

「ユニスが2人だけで話しがしたいと言ってるからね」

「わ、分かったわ……先に教室に行ってるわ」

ロザリンは肩を落として、校舎へ入っていった。もちろん、私を睨みつけていくのを忘れずに。

「それで、話って何?」

ロザリンがいなくなると、早速リオンは尋ねてきた。でも、その前に確かめたいことがある。

「リオン、今日はロザリンと登校してきたの?」

「え? 違うよ。正門前で偶然会ったからだよ」

「そう、ならいいけど」

やっぱり、おじ様とおば様はロザリンのことをまだ知らないのだろう。
自分の誕生パーティーの日に合わせて、報告するに違いない。

「話というのは、今度の誕生パーティーのことよ。場所なのだけど、リオンの家の中庭で開いてもらえなない? ガーデンパーティーなんておしゃれでしょう?」

リオンの家の中庭には大きな噴水が設置してある。
確か水魔法は、近くに水場があると一層強力になるはずだった。

「ガーデンパーティーか……うん、確かに素敵だね。クラスメイトたちも喜びそうだ」

「あと、 一つお願いがあるのだけど……聞いてくれる?」

「いいよ、ユニスにはお願いする権利があるからね」

権利……? 一体リオンは私にどんな権利があると思っているのだろう?
でも、そう言って貰えると都合が良い。

「私もリオンの誕生パーティーに友だちを連れてきてもいいでしょう? SS2クラスの人たちばかりでは、気まずいから」

元々私が試験に勝てば、クラスメイトを呼ばない約束だった。きっと、リオンは断れないだろう。

「何だ、それくらいのことならいいよ。それで誰を呼ぶの?」

「SS1クラスのアンディとザカリーよ」

「え……?」

リオンの顔に驚きの表情が浮かんだ――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

【短編集】婚約破棄【ざまぁ】

彼岸花
恋愛
一万文字未満の婚約破棄・ざまぁを含む短編集

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

貧乏Ωの憧れの人

ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。 エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

処理中です...