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2章29 待ち伏せ

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――翌朝

 すっかり体調が良くなったので、今日は学校へ行くことにした。両親からは「病み上がりだから」と言われ、家の馬車を使って登校した。


 早目に学校へ到着し、校舎の入口前で私はリオンが登校してくるのを待った。
本当は時間を見計らってリオンのクラスに行きたいけれども、ロザリンたちと揉めたこともあり気まずい。それにSS2クラスの人たちは一般クラスの生徒を見下す。
それを避けるためには、この場所で待つしか無かった。


「リオン……まだかしら」

校舎前で待ち始めて、15分程が経過していた。
その間に大勢の生徒たちが登校してきたが、未だにリオンの姿が見えない。

「もしかして、見過ごしてしまったのかしら……?」

不安に思ったその時、人混みに紛れるようにリオンが、こちらに向かって来る姿が見えた。

「リオ……」

名前を口にしかけ、ハッとした。
リオンはロザリンと一緒に歩いていたのだ。

まさか、今朝ロザリンと一緒に登校を……?
降ろした両手をギュッと握りしめ、私はリオンが来るのを待った。


「あれ? ユニスじゃないか。おはよう」

リオンは私に気づき、すぐに声をかけてきた。

「おはよう、リオン」

「……おはよ」

ロザリンはリオンの手前か、いやいや私に挨拶してくる。

「こんな所で何してるの? 友達でも待っていたの?」

自分を待っていたという発想はリオンには無いのだろうか?

「リオンを待っていたのよ。あの、少し2人だけで話がしたいのだけど」

リオンは一瞬私を見つめ、次にロザリンに視線を移した。

「ロザリン、先に教室へ行っててもらえないかな?」

「え? 何故私も一緒じゃ駄目なの? それとも私がいたら、しにくい話でもするつもりかしら?」

ロザリンが意地悪な目を向けてくる。だけど、ロザリンにはこれからする話は聞かせたくない。

「私はリオンにだけ話をしたいの。いいわよね? だって、私達は婚約者同士なのだから」

「……そうだね」

リオンは頷き、ロザリンに声をかけた。

「ごめん、先に教室に行っててもらえないかな」

「え!? リオン様!?」

「ユニスが2人だけで話しがしたいと言ってるからね」

「わ、分かったわ……先に教室に行ってるわ」

ロザリンは肩を落として、校舎へ入っていった。もちろん、私を睨みつけていくのを忘れずに。

「それで、話って何?」

ロザリンがいなくなると、早速リオンは尋ねてきた。でも、その前に確かめたいことがある。

「リオン、今日はロザリンと登校してきたの?」

「え? 違うよ。正門前で偶然会ったからだよ」

「そう、ならいいけど」

やっぱり、おじ様とおば様はロザリンのことをまだ知らないのだろう。
自分の誕生パーティーの日に合わせて、報告するに違いない。

「話というのは、今度の誕生パーティーのことよ。場所なのだけど、リオンの家の中庭で開いてもらえなない? ガーデンパーティーなんておしゃれでしょう?」

リオンの家の中庭には大きな噴水が設置してある。
確か水魔法は、近くに水場があると一層強力になるはずだった。

「ガーデンパーティーか……うん、確かに素敵だね。クラスメイトたちも喜びそうだ」

「あと、 一つお願いがあるのだけど……聞いてくれる?」

「いいよ、ユニスにはお願いする権利があるからね」

権利……? 一体リオンは私にどんな権利があると思っているのだろう?
でも、そう言って貰えると都合が良い。

「私もリオンの誕生パーティーに友だちを連れてきてもいいでしょう? SS2クラスの人たちばかりでは、気まずいから」

元々私が試験に勝てば、クラスメイトを呼ばない約束だった。きっと、リオンは断れないだろう。

「何だ、それくらいのことならいいよ。それで誰を呼ぶの?」

「SS1クラスのアンディとザカリーよ」

「え……?」

リオンの顔に驚きの表情が浮かんだ――
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