上 下
107 / 124

アゼリア&カイの章 ⑤ また…会えたね(アゼリアside)

しおりを挟む
「アゼリア、こんなところにいたの?随分探したわよ?」

大学の図書館で探し物をしているとケイトがやってきた。

「あ、ごめんね。どうしても調べたいことがあったから」

「授業の後、突然用事が出来たと言っていなくなってしまうんだもの」

ケイトは頬を膨らませて私を見た。

「本当にごめんね。でも良く分かったわね。私が図書館にいるって」

「だってアゼリアは本を読むのが大好きじゃない。昔から…」

「え?昔から?そんな話、したことあったかしら?」

「あ…そう言えばどうしてかしら?何だか突然アゼリアが部屋で本を読んでいる姿が頭に浮かんだのよね…」

ケイトが腕組みしながら首をひねる。

「時々、ケイトって勘が鋭いわよね。でもその通りよ。小さい時から本を読むのは大好きだったわ」

「それで、読書好きのアゼリアは一体何の本を探しているのかしら?」

ケイトは私が手にしている本を覗き込んできた。

「え…?白血病の歴史…?さっきの授業、そんなに感銘を受けたの?突然泣き出したりしたし…」

「う~ん…感銘を受けたって言うか…何だかとても懐かしい気持ちがこみ上げてきて…それでいて、大切な何かを忘れてしまったような気がしたの。それでこの気持が何なのか…2人の医者の事を調べれば少しは分かる気がして…」

「そう言えばアゼリアが医者を目指したのって白血病の治療に人生を捧げた医者の話を知って、医学部の道を選んだって言ってたわよね?」

「ええ、そうなの。だからその先生達の事調べてみようかと思って。ネットで検索しても出てこなかったのよ」

「そうなのね?でもそろそろお昼休みが終わる頃よ?お昼ご飯食べに行かない?」

「ええ。そうね。行きましょうか?」

そして私は本をしまうと、ケイトと一緒に図書館を出た―。



****


「え?アゼリア…放課後も図書館へ寄って帰るの?」

講義終了後、2人で一緒に教室を出ながらケイトが怪訝そうな顔で私を見た。

「ええ。どうしても今日中に調べたくて…ケイトは今からアルバイトでしょ?」

「そうなの。今日はハドソンさんの家でシッター兼家庭教師のアルバイトがはいっているのよ」

「ケイトは子供好きだものね」

「ええ。私、子供大好きなの。もしこの先誰かと結婚したら子供が沢山欲しいわ。あ、勿論医者の仕事も両立させるつもりだけどね」

「ケイトなら大丈夫よ。だって家事も得意だもの」

「まぁね…両親は2人とも忙しい人だったから、家事は私が担当していたからね」

そんな会話を続けていると、やがて図書館が見えてきた。

「それじゃ、アゼリア。また明日ね」

「ええ、又明日」

ケイトと笑顔で手を振り合い、私は再び図書館へと向かった―。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方の子どもじゃありません

初瀬 叶
恋愛
あぁ……どうしてこんなことになってしまったんだろう。 私は眠っている男性を起こさない様に、そっと寝台を降りた。 私が着ていたお仕着せは、乱暴に脱がされたせいでボタンは千切れ、エプロンも破れていた。 私は仕方なくそのお仕着せに袖を通すと、止められなくなったシャツの前を握りしめる様にした。 そして、部屋の扉にそっと手を掛ける。 ドアノブは回る。いつの間にか 鍵は開いていたみたいだ。 私は最後に後ろを振り返った。そこには裸で眠っている男性の胸が上下している事が確認出来る。深い眠りについている様だ。 外はまだ夜中。月明かりだけが差し込むこの部屋は薄暗い。男性の顔ははっきりとは確認出来なかった。 ※ 私の頭の中の異世界のお話です ※相変わらずのゆるゆるふわふわ設定です。ご了承下さい ※直接的な性描写等はありませんが、その行為を匂わせる言葉を使う場合があります。苦手な方はそっと閉じて下さると、自衛になるかと思います ※誤字脱字がちりばめられている可能性を否定出来ません。広い心で読んでいただけるとありがたいです

【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ
恋愛
番(つがい)の物語。 ※短編集となります。時代背景や国が違うこともあります。 ※定期的に番(つがい)の話を書きたくなるのですが、 どうしても溺愛ハッピーエンドにはならないことが多いです。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

旦那様に離縁をつきつけたら

cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。 仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。 突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。 我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。 ※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。 ※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。

【完結】生贄として育てられた少女は、魔術師団長に溺愛される

未知香
恋愛
【完結まで毎日1話~数話投稿します・最初はおおめ】 ミシェラは生贄として育てられている。 彼女が生まれた時から白い髪をしているという理由だけで。 生贄であるミシェラは、同じ人間として扱われず虐げ続けられてきた。 繰り返される苦痛の生活の中でミシェラは、次第に生贄になる時を心待ちにするようになった。 そんな時ミシェラが出会ったのは、村では竜神様と呼ばれるドラゴンの調査に来た魔術師団長だった。 生贄として育てられたミシェラが、魔術師団長に愛され、自分の生い立ちと決別するお話。 ハッピーエンドです! ※※※ 他サイト様にものせてます

愛のない政略結婚でしたので

杉本凪咲
恋愛
政略結婚から始まった夫婦生活。 しかしそれは思っていたよりも残酷で……

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

処理中です...