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ヤンの章 ㉛ アゼリアの花に想いを寄せて <完>
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あの日から僕とメロディは恋人同士になった。と言っても今までと特に変わった事は無かった。毎日一緒に学校へ行き、そして一緒に帰ってくる。土日は一緒に図書館へ行き、午前中は僕が勉強している傍らでメロディは本を読み、午後はメロディの家にお邪魔して彼女がピアノのレッスンをしている傍らで僕は受験勉強をする…そんな生活が2ヶ月続いた。
世間から見たら、僕とメロディは恋人同士の様な関係には見えなかったかもしれないけれど、僕達はそれで満足だった―。
そして今日、僕は『ハイネ』へ向かう。
大学受験に行く為に―。
『リンデン』の駅には僕の見送りに大勢の人たちが集まっていた。
「ヤン。頑張るのよ」
シスターアンジュが僕の手を握りしめてきた。
「はい、頑張ります」
「大丈夫よ。ヤンは何と言っても頭がいいんだから!」
「ありがとう、マリー」
「ヤン、教会の事は任せろよ」
「ヤンなら絶対合格するって」
ディータとヨナスも声を掛けてくる。
「ヤンお兄ちゃん、また帰ってくるよね?」
カレンが涙目で僕を見る。
「勿論帰って来るよ」
今はね…。
僕はカレンの頭を撫でながら言う。
「ヤン、君なら確実に合格出来る。だから試験が終わったらアパートメントを探しておくんだよ」
ベンジャミン先生が声を掛けてきた。
「はい、わかりました」
「それにしても…メロディはどうしてまた来ないのかしら…お見送りしないつもりかしら?」
ローラさんがホームを見つめている。カミーユとアメリアも心配そうにしている
すると…。
「ヤーン!」
こちらへ向かって僕の名を呼びながら駆け寄ってくる人物を発見した。その人物は…
「あ、メロディ!」
僕は左手を大きく振った。
「ヤンッ!良かった…間に合って…」
メロディは、ハアハア息を切らせながら駆け寄ってきた。手にはボストンバッグを持っている。
「あら?メロディ…そのバッグは何?」
ローラさんが尋ねてきた。
「ああ、これ?私も『ハイネ』に行くつもりだから。大丈夫、汽車の切符は買ってあるもの」
「ええっ?!」
突然の言葉に僕は驚いた。
「メロディッ!ちょっと、そんな話は聞いていないわよっ?!」
ローラさんが目をつり上げる。
「それはそうでしょう?だって黙っていたのだから。ほら、行きましょう!ヤン」
メロディが僕の手を引いて汽車に乗り込む。
「あ、ちょ、ちょっと…っ!」
僕はメロディに手を引かれるまま汽車に乗った。窓の外ではローラさんが何やらこちらに向かって文句を言っていた。
「ねぇ…いいの?メロディ…。ローラさん…凄く怒っていたけど…」
2人で空いている席に座りながら尋ねた。
「いいのよ、だってヤンと一緒にいたいんだもの」
「メ、メロディ…」
思わず顔が赤くなる。
するとメロディが僕の耳元で囁き…僕はますます顔を赤らめることになった。
メロディが僕の耳元で囁いた言葉。それは…。
『ヤンの受験が終わったら…本当の恋人同士になりたい』
ハイネに到着した僕は、翌日試験を受け…そしてその夜、僕とメロディは初めて結ばれた―。
****
3ヶ月後―
僕とメロディは大学の休みを利用して、アゼリア様のお墓参りに来ていた。何故なら今日はアゼリア様の月命日の日だったから。
「メロディー!早くおいでよー」
僕は丘の上で大きく手を振ってメロディを呼ぶ。
「分かってるってばー」
メロディは丘を登りながら返事を返してくる。
「ほらおいで」
僕は丘を途中まで降りてくるとメロディの手をしっかり握りしめた。
「全くヤンは相変わらずアゼリア様の事になると人が変わるんだから」
メロディは頬を膨らませながら文句を言ってくる。
「アハハハ…ごめん。アゼリア様は…僕に取って特別な人だから」
「そう、どうせ私は…っん」
僕はメロディにキスして口を塞いだ。そして言う。
「でも、僕が一番好きな人はメロディだよ」
途端にメロディは真っ赤になると言った。
「は、早くアゼリア様に会いに行きましょう」
「うん、そうだね」
僕はメロディの手を引くとアゼリア様のお墓の前にやってきた。
「アゼリア様…会いに来ましたよ」
僕は手にしていた色とりどりのアゼリアの花をお墓に手向けると語りかけた。
「アゼリア様、僕は法学部の学生になりました。大学で沢山勉強して…困った人たちを助けて上げられる弁護士を目指します。見ていてくださいね。アゼリア様」
「ヤン…」
メロディがそっと僕の手を握りしめてくる。僕もその手を強く握りしめる。
「本当に素敵な景色ね…アゼリア様がこの場所を好きだったのが分かるわ…」
「うん。きっとこの場所は…例え何十年経とうとも…変わらないと思うよ」
だって、ここはアゼリア様が眠る場所。
そして『リンデン』にはアゼリア様を大切に思う人たちが住んでいるのだから―。
<完>
※次回は最終章、生まれ変わったアゼリアとカイの話です
世間から見たら、僕とメロディは恋人同士の様な関係には見えなかったかもしれないけれど、僕達はそれで満足だった―。
そして今日、僕は『ハイネ』へ向かう。
大学受験に行く為に―。
『リンデン』の駅には僕の見送りに大勢の人たちが集まっていた。
「ヤン。頑張るのよ」
シスターアンジュが僕の手を握りしめてきた。
「はい、頑張ります」
「大丈夫よ。ヤンは何と言っても頭がいいんだから!」
「ありがとう、マリー」
「ヤン、教会の事は任せろよ」
「ヤンなら絶対合格するって」
ディータとヨナスも声を掛けてくる。
「ヤンお兄ちゃん、また帰ってくるよね?」
カレンが涙目で僕を見る。
「勿論帰って来るよ」
今はね…。
僕はカレンの頭を撫でながら言う。
「ヤン、君なら確実に合格出来る。だから試験が終わったらアパートメントを探しておくんだよ」
ベンジャミン先生が声を掛けてきた。
「はい、わかりました」
「それにしても…メロディはどうしてまた来ないのかしら…お見送りしないつもりかしら?」
ローラさんがホームを見つめている。カミーユとアメリアも心配そうにしている
すると…。
「ヤーン!」
こちらへ向かって僕の名を呼びながら駆け寄ってくる人物を発見した。その人物は…
「あ、メロディ!」
僕は左手を大きく振った。
「ヤンッ!良かった…間に合って…」
メロディは、ハアハア息を切らせながら駆け寄ってきた。手にはボストンバッグを持っている。
「あら?メロディ…そのバッグは何?」
ローラさんが尋ねてきた。
「ああ、これ?私も『ハイネ』に行くつもりだから。大丈夫、汽車の切符は買ってあるもの」
「ええっ?!」
突然の言葉に僕は驚いた。
「メロディッ!ちょっと、そんな話は聞いていないわよっ?!」
ローラさんが目をつり上げる。
「それはそうでしょう?だって黙っていたのだから。ほら、行きましょう!ヤン」
メロディが僕の手を引いて汽車に乗り込む。
「あ、ちょ、ちょっと…っ!」
僕はメロディに手を引かれるまま汽車に乗った。窓の外ではローラさんが何やらこちらに向かって文句を言っていた。
「ねぇ…いいの?メロディ…。ローラさん…凄く怒っていたけど…」
2人で空いている席に座りながら尋ねた。
「いいのよ、だってヤンと一緒にいたいんだもの」
「メ、メロディ…」
思わず顔が赤くなる。
するとメロディが僕の耳元で囁き…僕はますます顔を赤らめることになった。
メロディが僕の耳元で囁いた言葉。それは…。
『ヤンの受験が終わったら…本当の恋人同士になりたい』
ハイネに到着した僕は、翌日試験を受け…そしてその夜、僕とメロディは初めて結ばれた―。
****
3ヶ月後―
僕とメロディは大学の休みを利用して、アゼリア様のお墓参りに来ていた。何故なら今日はアゼリア様の月命日の日だったから。
「メロディー!早くおいでよー」
僕は丘の上で大きく手を振ってメロディを呼ぶ。
「分かってるってばー」
メロディは丘を登りながら返事を返してくる。
「ほらおいで」
僕は丘を途中まで降りてくるとメロディの手をしっかり握りしめた。
「全くヤンは相変わらずアゼリア様の事になると人が変わるんだから」
メロディは頬を膨らませながら文句を言ってくる。
「アハハハ…ごめん。アゼリア様は…僕に取って特別な人だから」
「そう、どうせ私は…っん」
僕はメロディにキスして口を塞いだ。そして言う。
「でも、僕が一番好きな人はメロディだよ」
途端にメロディは真っ赤になると言った。
「は、早くアゼリア様に会いに行きましょう」
「うん、そうだね」
僕はメロディの手を引くとアゼリア様のお墓の前にやってきた。
「アゼリア様…会いに来ましたよ」
僕は手にしていた色とりどりのアゼリアの花をお墓に手向けると語りかけた。
「アゼリア様、僕は法学部の学生になりました。大学で沢山勉強して…困った人たちを助けて上げられる弁護士を目指します。見ていてくださいね。アゼリア様」
「ヤン…」
メロディがそっと僕の手を握りしめてくる。僕もその手を強く握りしめる。
「本当に素敵な景色ね…アゼリア様がこの場所を好きだったのが分かるわ…」
「うん。きっとこの場所は…例え何十年経とうとも…変わらないと思うよ」
だって、ここはアゼリア様が眠る場所。
そして『リンデン』にはアゼリア様を大切に思う人たちが住んでいるのだから―。
<完>
※次回は最終章、生まれ変わったアゼリアとカイの話です
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