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ケリーの章 ㉘ 待ちわびていたプロポーズ
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「ヨ、ヨハン先生…い、今何て言ったのですか…?」
ヨハン先生に抱きしめられながら私は声を震わせて尋ねた。
「僕は…ケリーの事が好きだ…。誰にも渡したくない位に…1人の女性としてケリーを愛している…」
ヨハン先生…っ!
胸に熱いものが込み上げてきて、目から涙が溢れ出てきた。そしてヨハン先生にすがりつき、激しく泣きじゃくりながら言った。
「ヨハン先生…!わ、私…私もずっと前からヨハン先生のことが…す、好きでした…先生は立派なお医者様で…私みたいな…学が無い人間は…ぶ、分不相応なのは…分かっていましたけど…それでも…諦められなくて…トマスさんとも…本当は…お付き合いしたくないです…。だ、だって私の好きな人は…ヨハン先生だから…っ!」
「ごめんっ!ケリーッ!本当に…」
ヨハン先生の熱い涙が心に染み渡ってくる。ヨハン先生は私を強く抱きしめたまま言う。
「僕は…ケリーと暮らすこの3年の間に…いつの間にか君のことを…1人の女性として好きになっていたんだ…だけど君はアゼリアから託された…大切な存在だった。君のように若くて美しい女性と11歳も年が離れた僕なんて…不釣り合いだと思っていたんだ。だから諦めなくちゃいけないと思っていた時に…トマスさんからケリーと会える場を設けて貰いたいと頼まれて…。だから僕は君に黙ってあの場を設けたんだ」
若くて美しい…?
まさか…ヨハン先生が私のことをそんな目で見ていてくれたなんて…。
「私…あの時…折角2人きりの初めての…お出かけだったのに…悲しかったです…」
感極まって、ついあの時の気持を語ってしまった。
「ごめん…。ケリー。本当に…。僕は君を諦める為に…ケリーの気持ちを確認しないで…あんな見合いの場を…だけど…ずっと胸が苦しかった…。トマスさんとケリーが話をしているのも…2人きりで出かけるのも…辛くて辛くて堪らなかったんだ…!」
「ヨハン先生…っ!」
まさか苦しんでいたのは私だけじゃなかったなんて…ずっとヨハン先生も苦しんでいたなんて私は少しも気付かなかった…!
「トマスさんにあの日の夜、言われたんだ…。本当はケリーの事を好きなのではないですかって…。僕は…否定出来なかった…するとトマスさんは言ったんだ。ケリーは自分と会っている時でも笑顔で僕の話ばかりしているって…。その時は本当に嬉しかったけれど、思い直したんだ…。ケリーは僕のことを…兄として慕っているだけなんだろうって…だって僕は11歳も年上なんだから…。そんな時、患者さんからお見合いの話を進められて…受けることにしたんだけど…」
「!」
その話に思わず固まる。ヨハン先生…私の事を好きだと言っておきながら…お見合い女性と結婚するのですか…?だったら何故告白を…?
けれど、ヨハン先生から出てきた次の言葉は予想を覆すものだった。
「ケリー…」
ヨハン先生は私の身体をそっと離すと、じっと見つめてきた。先生の目は涙で真っ赤になっている。
「今日、お見合い相手に断りを入れてきたんだ。僕には愛する女性がいるので、お見合いすることは出来ませんて…」
「!」
まさか…ヨハン先生がお見合いしたのは…相手の女性に断りを入れる為だったなんて…!
「ケリー…」
ヨハン先生の両手が私の頬に添えられる。
「今回、ケリーが病に倒れた時…アゼリアの事を思い出してしまったんだ。もしケリーまで死んでしまったらどうしようって…どれほど、君が僕にとって大切な存在なのか…改めて思ったんだ」
「ヨハン先生…」
「ケリー、愛している。世界中で一番…」
勿論、私の気持ちは決まっている。
「私もヨハン先生を愛しています…」
「ありがとう、ケリー…」
ヨハン先生の顔が近付いてくる。
目を閉じると、そっと唇が重なってきた。
ヨハン先生…。
その夜…私はヨハン先生と心も身体も結ばれた―。
ヨハン先生に抱きしめられながら私は声を震わせて尋ねた。
「僕は…ケリーの事が好きだ…。誰にも渡したくない位に…1人の女性としてケリーを愛している…」
ヨハン先生…っ!
胸に熱いものが込み上げてきて、目から涙が溢れ出てきた。そしてヨハン先生にすがりつき、激しく泣きじゃくりながら言った。
「ヨハン先生…!わ、私…私もずっと前からヨハン先生のことが…す、好きでした…先生は立派なお医者様で…私みたいな…学が無い人間は…ぶ、分不相応なのは…分かっていましたけど…それでも…諦められなくて…トマスさんとも…本当は…お付き合いしたくないです…。だ、だって私の好きな人は…ヨハン先生だから…っ!」
「ごめんっ!ケリーッ!本当に…」
ヨハン先生の熱い涙が心に染み渡ってくる。ヨハン先生は私を強く抱きしめたまま言う。
「僕は…ケリーと暮らすこの3年の間に…いつの間にか君のことを…1人の女性として好きになっていたんだ…だけど君はアゼリアから託された…大切な存在だった。君のように若くて美しい女性と11歳も年が離れた僕なんて…不釣り合いだと思っていたんだ。だから諦めなくちゃいけないと思っていた時に…トマスさんからケリーと会える場を設けて貰いたいと頼まれて…。だから僕は君に黙ってあの場を設けたんだ」
若くて美しい…?
まさか…ヨハン先生が私のことをそんな目で見ていてくれたなんて…。
「私…あの時…折角2人きりの初めての…お出かけだったのに…悲しかったです…」
感極まって、ついあの時の気持を語ってしまった。
「ごめん…。ケリー。本当に…。僕は君を諦める為に…ケリーの気持ちを確認しないで…あんな見合いの場を…だけど…ずっと胸が苦しかった…。トマスさんとケリーが話をしているのも…2人きりで出かけるのも…辛くて辛くて堪らなかったんだ…!」
「ヨハン先生…っ!」
まさか苦しんでいたのは私だけじゃなかったなんて…ずっとヨハン先生も苦しんでいたなんて私は少しも気付かなかった…!
「トマスさんにあの日の夜、言われたんだ…。本当はケリーの事を好きなのではないですかって…。僕は…否定出来なかった…するとトマスさんは言ったんだ。ケリーは自分と会っている時でも笑顔で僕の話ばかりしているって…。その時は本当に嬉しかったけれど、思い直したんだ…。ケリーは僕のことを…兄として慕っているだけなんだろうって…だって僕は11歳も年上なんだから…。そんな時、患者さんからお見合いの話を進められて…受けることにしたんだけど…」
「!」
その話に思わず固まる。ヨハン先生…私の事を好きだと言っておきながら…お見合い女性と結婚するのですか…?だったら何故告白を…?
けれど、ヨハン先生から出てきた次の言葉は予想を覆すものだった。
「ケリー…」
ヨハン先生は私の身体をそっと離すと、じっと見つめてきた。先生の目は涙で真っ赤になっている。
「今日、お見合い相手に断りを入れてきたんだ。僕には愛する女性がいるので、お見合いすることは出来ませんて…」
「!」
まさか…ヨハン先生がお見合いしたのは…相手の女性に断りを入れる為だったなんて…!
「ケリー…」
ヨハン先生の両手が私の頬に添えられる。
「今回、ケリーが病に倒れた時…アゼリアの事を思い出してしまったんだ。もしケリーまで死んでしまったらどうしようって…どれほど、君が僕にとって大切な存在なのか…改めて思ったんだ」
「ヨハン先生…」
「ケリー、愛している。世界中で一番…」
勿論、私の気持ちは決まっている。
「私もヨハン先生を愛しています…」
「ありがとう、ケリー…」
ヨハン先生の顔が近付いてくる。
目を閉じると、そっと唇が重なってきた。
ヨハン先生…。
その夜…私はヨハン先生と心も身体も結ばれた―。
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