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ケリーの章 ⑲ 待ちわびていたプロポーズ
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あれからほぼ2日おきに、トマスさんは私を食事に誘うようになっていた。
「ケリー。今夜もトマスさんとデートだろう?」
「デート…ですか…」
診療所の片付けをしているとヨハン先生が声を掛けてきた。デート…その言葉に軽く心が傷つく。私はデートをしているつもりはなかった。ただ、誘われているから…私が断ることによって、ヨハン先生を困らせるような事になってもらいたくないから、誘われるままに出かけているだけなのに、ヨハン先生からはデートしているように見えるなんて…。
「どうしたんだい?ケリー。何だか元気が無いように見えるけど…体調でも悪いのかい?」
言いながらヨハン先生は私に近付くと、額に手を当ててきた。
「ヨ、ヨハン先生…!」
思わず、顔が真っ赤になってしまい…その顔をヨハン先生に見られてしまった。
「ケリー…」
ヨハン先生が戸惑った様子で私を見ている。ど、どうしよう…今の様子で私がヨハン先生に気があることがバレてしまったかも…!
しかし、ヨハン先生はそれ以上何も言わずに私から視線をそらせると言った。
「僕の事は気にせずに、トマスさんと楽しい時間を過ごしておいで」
「で、ですが…先生のお食事の用意は…」
「ケリー。忘れているかも知れないけど…昔は僕はずっと一人暮らしをしていたんだよ?それこを診療所で患者さん達の診察をしながら家事もこなしていたんだからね。だから僕の事は何も気にしなくていいんだよ?」
ヨハン先生、つまりそれは…私がいなくなっても大丈夫と言いたいのですか?やっぱり私がトマスさんと結婚すればいいと思っているのですか…?
「ヨハン先生…分かりました…。それではトマスさんとお食事に行ってきます…」
悲しい気持ちを押し殺し、私は笑みを浮かべてヨハン先生に返事をした―。
****
ピアノの演奏曲が流れる高級レストランで私とトマスさんは食事をしていた。
「…どうですか?今夜の食事は。ここハーブをふんだんに使った食事が有名なレストランなんですよ?東方の国ではこのような料理を『薬膳料理』と言うそうです」
「『薬膳料理』ですか?ハーブを育てているヨハン先生が興味を持ちそうですね。ヨハン先生はとてもハーブの事に詳しいのですよ?ご自分でハーブをブレンドしてお茶も作っていますし、漢方薬も作っているんです。本当に尊敬します」
「…そうですか」
トマスさんは静かに返事をする。その時、ピアノの演奏曲が変わった。
「あ…この曲は…」
私が呟くとトマスさんが言った。
「この曲ですか?素敵な曲ですよね?」
「ええ、そうです。よくヨハン先生がお部屋でハーブティーを飲みながらこの曲を蓄音機で聞いているのです。その御蔭で私この曲が大好きになったのですが…この曲の題名は何というのか分からなくて…」
するとトマスさんが静かに言った。
「この曲の題名は『伝えられない思い』と言う曲ですよ」
「『伝えられない思い』…」
もしかして…ヨハン先生はこの曲を聞きながらアゼリア様の事を…?
その時―。
「ケリーさん」
突然、トマスさんがテーブルの上に乗っていた私の手を上から重ねてくると大きな手で包み込んできた。
「え…?トマスさん…?」
「ケリーさん…僕の勘違いで無ければ…ひょっとして貴女はヨハン先生の事が好きなのですか…?」
その瞳は切なげに揺れている。
「え、ええ。勿論好きですよ。先生としてとても尊敬できるお方ですから」
「いいえ、そういう意味では無く…1人の男性としてです…」
ドキッ!!
その言葉に心臓が飛び出しそうになった。
「な、何故…そんな事を聞くのですか?」
「それは…ケリーさんはいつもヨハン先生の話をするときだけ、いきいきと輝いて見えるからです…」
トマスさんは私から片時も目を離さず、上から重ねた自身の手で私の手を強く包み込んできた―。
「ケリー。今夜もトマスさんとデートだろう?」
「デート…ですか…」
診療所の片付けをしているとヨハン先生が声を掛けてきた。デート…その言葉に軽く心が傷つく。私はデートをしているつもりはなかった。ただ、誘われているから…私が断ることによって、ヨハン先生を困らせるような事になってもらいたくないから、誘われるままに出かけているだけなのに、ヨハン先生からはデートしているように見えるなんて…。
「どうしたんだい?ケリー。何だか元気が無いように見えるけど…体調でも悪いのかい?」
言いながらヨハン先生は私に近付くと、額に手を当ててきた。
「ヨ、ヨハン先生…!」
思わず、顔が真っ赤になってしまい…その顔をヨハン先生に見られてしまった。
「ケリー…」
ヨハン先生が戸惑った様子で私を見ている。ど、どうしよう…今の様子で私がヨハン先生に気があることがバレてしまったかも…!
しかし、ヨハン先生はそれ以上何も言わずに私から視線をそらせると言った。
「僕の事は気にせずに、トマスさんと楽しい時間を過ごしておいで」
「で、ですが…先生のお食事の用意は…」
「ケリー。忘れているかも知れないけど…昔は僕はずっと一人暮らしをしていたんだよ?それこを診療所で患者さん達の診察をしながら家事もこなしていたんだからね。だから僕の事は何も気にしなくていいんだよ?」
ヨハン先生、つまりそれは…私がいなくなっても大丈夫と言いたいのですか?やっぱり私がトマスさんと結婚すればいいと思っているのですか…?
「ヨハン先生…分かりました…。それではトマスさんとお食事に行ってきます…」
悲しい気持ちを押し殺し、私は笑みを浮かべてヨハン先生に返事をした―。
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ピアノの演奏曲が流れる高級レストランで私とトマスさんは食事をしていた。
「…どうですか?今夜の食事は。ここハーブをふんだんに使った食事が有名なレストランなんですよ?東方の国ではこのような料理を『薬膳料理』と言うそうです」
「『薬膳料理』ですか?ハーブを育てているヨハン先生が興味を持ちそうですね。ヨハン先生はとてもハーブの事に詳しいのですよ?ご自分でハーブをブレンドしてお茶も作っていますし、漢方薬も作っているんです。本当に尊敬します」
「…そうですか」
トマスさんは静かに返事をする。その時、ピアノの演奏曲が変わった。
「あ…この曲は…」
私が呟くとトマスさんが言った。
「この曲ですか?素敵な曲ですよね?」
「ええ、そうです。よくヨハン先生がお部屋でハーブティーを飲みながらこの曲を蓄音機で聞いているのです。その御蔭で私この曲が大好きになったのですが…この曲の題名は何というのか分からなくて…」
するとトマスさんが静かに言った。
「この曲の題名は『伝えられない思い』と言う曲ですよ」
「『伝えられない思い』…」
もしかして…ヨハン先生はこの曲を聞きながらアゼリア様の事を…?
その時―。
「ケリーさん」
突然、トマスさんがテーブルの上に乗っていた私の手を上から重ねてくると大きな手で包み込んできた。
「え…?トマスさん…?」
「ケリーさん…僕の勘違いで無ければ…ひょっとして貴女はヨハン先生の事が好きなのですか…?」
その瞳は切なげに揺れている。
「え、ええ。勿論好きですよ。先生としてとても尊敬できるお方ですから」
「いいえ、そういう意味では無く…1人の男性としてです…」
ドキッ!!
その言葉に心臓が飛び出しそうになった。
「な、何故…そんな事を聞くのですか?」
「それは…ケリーさんはいつもヨハン先生の話をするときだけ、いきいきと輝いて見えるからです…」
トマスさんは私から片時も目を離さず、上から重ねた自身の手で私の手を強く包み込んできた―。
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