上 下
104 / 107

5−25 ユベールとアンリ王子

しおりを挟む
 すると私の話を聞いたジュリエッタが鼻でフンと笑った。

「そう…とうとう全て思い出したのね?今までは過去の記憶を一切引きずること無くループし続けていたのに」

ジュリエッタはフワリとバルコニーへ降り立った。

「全く厄介な事をしてくれたわね…。まさかシルビア。ユベールに掛けた魅了の呪縛を解いて…仲間に…いえ、自分を愛する様に仕向けたのだから!」

「え…?」

その言葉にユベールは私の方をゆっくり振り向いた。

「シルビア…今の話…一体どういう事なんだ…?」

その顔は…青ざめていた。

「ユベール様、私は…」

言いかけた時、ジュリエッタが口を開いた。

「いいわ、説明なら私がするから。ユベール。私はね…シルビアの魔力を奪う為に…お前を利用して何度も何度もシルビアを殺させてきたのよ。魔力を奪うためには殺すしか無かったからね。」

「な、何だって…?」

ユベールの身体が震えている。

「300年前に私はシルビアの一族に滅ぼされたわ。シルビアの家系はずば抜けて魔力が高く、全員王宮に仕える優秀な魔術師だったのよ。そして私は命が尽きる前に魂だけを自分の意思で抜き取って…時を待ったのよ。大気中に漂い…この世界に魔力を有する者達から魔力を奪い…ようやく、この元の身体を取り戻す事が出来たのよ。後は私を滅ぼした憎き一族の末裔を殺し…残りの全ての魔力を奪うだけだった。だから利用させて貰ったのよ。ユベール…お前をね」

ジュリエッタはユベールを指さした。

「…お前が何を言っているのか、よく意味が伝わらないが…何故だっ!何故俺にシルビアを殺させてきたのだっ?!しかも何度もだってっ?!」

「それは私だってこんな回りくどいやり方を支度は無かったわよ!だけどね、私は呪いを掛けられたのよっ!シルビアの一族に…。彼等はいずれ私が復活する事を想定して…呪いをかけたのよ。自分の子孫達に手を下そうとするものなら、死の呪いが発動するという…呪いをね…だから、ユベール。お前を利用させて貰ったのよ!王の息子であるお前をね…っ!」

「「え…っ?!」」

その言葉に私もユベールも耳を疑った。

「ど、どういう事だっ!俺は…俺が王の息子だってっ?!」

するとジュリエッタは言った。

「この国はね…300年前は私の国だったのよ。だからまずは奪う為にこの国の王子であるユベールに近付いたのよ。お前を油断させる為に幼馴染という設定をわざわざ作ってね…それなのに、お前は思うように私に洗脳されなかったわ」

「…」

ユベールは黙ってジュリエッタの話を聞いている。

「だから、もっと洗脳しやすい相手を探したのよ。すると丁度直ぐ近くにいたのよ。侯爵家でユベールと仲が良かったアンリを誘拐して2人を入れ替えたの。そしてこの城に住む者たちも洗脳したのよ。2人が入れ替わった事に気付かれないようにね。

「ま、まさか…?」

私はユベールを見た。それじゃ…本当はユベールが…王族だったというのだろうか?
今、一体どんな気持ちでジュリエッタの話を聞いているのだろう…?

「そんな話はどうだっていい。だがな…俺はお前を許さない。ループがどうのと言う話は何の事かさっぱり分からないが…」

そしてユベールは私を見た。

「一番許せないのは俺にシルビアを殺させたということだっ!」

ユベールは剣をジュリエッタに向けた―。






しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

光の王太子殿下は愛したい

葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。 わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。 だが、彼女はあるときを境に変わる。 アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。 どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。 目移りなどしないのに。 果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!? ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。 ☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
ワガママ三昧な生活を送っていた悪役令嬢のミシェルは、自分の婚約者と、長年に渡っていじめていた聖女によって冤罪をでっちあげられ、処刑されてしまう。 その後、ミシェルは不思議な夢を見た。不思議な既視感を感じる夢の中で、とある女性の死を見せられたミシェルは、目を覚ますと自分が処刑される半年前の時間に戻っていた。 それと同時に、先程見た夢が自分の前世の記憶で、自分が異世界に転生したことを知る。 記憶が戻ったことで、前世のような優しい性格を取り戻したミシェルは、前世の世界に残してきてしまった、幼い家族の元に帰る術を探すため、ミシェルは婚約者からの婚約破棄と、父から宣告された追放も素直に受け入れ、貴族という肩書きを隠し、一人外の世界に飛び出した。 初めての外の世界で、仕事と住む場所を見つけて懸命に生きるミシェルはある日、仕事先の常連の美しい男性――とある伯爵家の令息であるアランに屋敷に招待され、自分の正体を見破られてしまったミシェルは、思わぬ提案を受ける。 それは、魔法の研究をしている自分の専属の使用人兼、研究の助手をしてほしいというものだった。 だが、その提案の真の目的は、社交界でも有名だった悪役令嬢の性格が豹変し、一人で外の世界で生きていることを不審に思い、自分の監視下におくためだった。 変に断って怪しまれ、未来で起こる処刑に繋がらないようにするために、そして優しいアランなら信用できると思ったミシェルは、その提案を受け入れた。 最初はミシェルのことを疑っていたアランだったが、徐々にミシェルの優しさや純粋さに惹かれていく。同時に、ミシェルもアランの魅力に惹かれていくことに……。 これは死に戻った元悪役令嬢が、元の世界に帰るために、伯爵子息と共に奮闘し、互いに惹かれて幸せになる物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿しています。全話予約投稿済です⭐︎

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】あなたの知らない私

仲村 嘉高
恋愛
あなたは特別らしいから あなただけが知らない それが 幸か不幸かは 知らないけれど

処理中です...