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3−20 大衆酒場
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ユベールが連れてきてくれた店は大衆酒場のような店だった。店内は壁も床も天井も全て板張りで出来ている。広いホールにはやはり木製の丸テーブルに丸椅子が並べられ、15時という半端な時間にも関わらず店内は客で溢れかえっていたが、その殆どは男性客ばかりで、ざっと見渡した限り女性客は私1人のようにも思えた。そして混雑した店内の間を縫うように女性のウェイトレスたちがトレーを持って忙しそうに働いているが…彼女たちの来ている服が少々胸元が空いているのが気になった。
店の客たちは殆どがアルコールを飲んでいる。
「あ、あの…ユベール様…」
何だか自分が酷く場違いな場所に来ているような気持ちになってしまい、ユベールに声を掛けた。
「ああ…分かってる。すまなかった。こんな店に連れてきてしまって…」
ユベールはメニューで私から顔を隠すように返事をする。私に謝った…という事は彼も恐らく自覚があったのだろう。
「ここは…よく騎士の仲間たちと夜食事に来ていたのだが、酒も食事もうまいんだ。昼間も営業している事を最近知って…昼なら女性客も来ているだろうと思っていたのだが…まさか、昼間も夜と殆ど変わりなかったとはな…」
ユベールはバツが悪そうに言うと、立ち上がった。
「別の店へ行こう。」
「え?良いですよ、別にそんな!」
折角店内に入って着席までしてしまったのに今更店を変わるなんて!
「しかし、こんな店では…お前も落ち着かないだろう?」
「私なら大丈夫ですから座って下さい」
立ち上がったユベールを無理やり座らせると言った。
「ここはユベール様のお気に入りの店ってことですよね?」
「あ、ああ…そうだ。特に料理の味が最高で…」
「ありがとうございます。嬉しいです」
私は笑みを浮かべてユベールを見た。
「え…?」
「ユベール様の行きつけのお店に連れてきてくれて嬉しかったです。だから私は是非、この店で食事がしたいです」
「シルビア…」
ユベールは以外そうな目で私を見ると、フッと笑みを浮かべた。
「よし。なら…このままこの店で食事をするか?」
「はい、そうですね」
「なら早速料理を注文するか。いいか、ここのおすすめメニューは…」
ユベールが自信を持って私に料理をすすめる様子は…どことなく嬉しそうに見えた…。
****
それから約1時間半後―。
私達のテーブルの上には空になった大皿が何枚も乗っていた。
「どうだった。この店の料理は?」
全ての料理を食べ終えた私にユベールが尋ねてきた。
「はい、どれもとても美味しかったです。特にお肉の香味揚げが最高でした」
「そうだろう?俺たちの間でもその肉料理が一番人気があるんだ」
「でしょうね。とても美味しかったですから」
「どうだ?最後に何か1杯飲むか?」
ユベールの言葉に驚いてしまった。まさか、あの生真面目なユベールからお酒の誘いがあるとは思わなかった。
「…」
穴の開くほど、ユベールを見つめていると彼は怪訝そうな顔で私を見た。
「何だ?その顔は…嫌ならやめるが?」
「いえ、嫌だなんてめっそうもありません。ではワイン1杯位なら…」
「よし、分かった。では頼むか」
私達は店内を見渡したが、店の中は相変わらず混雑していてウェイトレスが見当たらない。
「仕方ない。直接カウンターへ行って注文してくるからお前はここで待っていろ」
「はい」
ユベールは席を立って店のカウンターへと向かっていく。その姿を見届けていると、いきなり何者かが私の右側の椅子にドスンと座ってきた。
「え?」
驚いてそちらを見ると、そこには柄の悪そうな顔に傷がある男が座っていた。更に左側にも同じような若者が座って来たのだ。
「あ、あの…?」
いきなり見知らぬ男2人に挟まれて、私は恐怖を感じた―。
店の客たちは殆どがアルコールを飲んでいる。
「あ、あの…ユベール様…」
何だか自分が酷く場違いな場所に来ているような気持ちになってしまい、ユベールに声を掛けた。
「ああ…分かってる。すまなかった。こんな店に連れてきてしまって…」
ユベールはメニューで私から顔を隠すように返事をする。私に謝った…という事は彼も恐らく自覚があったのだろう。
「ここは…よく騎士の仲間たちと夜食事に来ていたのだが、酒も食事もうまいんだ。昼間も営業している事を最近知って…昼なら女性客も来ているだろうと思っていたのだが…まさか、昼間も夜と殆ど変わりなかったとはな…」
ユベールはバツが悪そうに言うと、立ち上がった。
「別の店へ行こう。」
「え?良いですよ、別にそんな!」
折角店内に入って着席までしてしまったのに今更店を変わるなんて!
「しかし、こんな店では…お前も落ち着かないだろう?」
「私なら大丈夫ですから座って下さい」
立ち上がったユベールを無理やり座らせると言った。
「ここはユベール様のお気に入りの店ってことですよね?」
「あ、ああ…そうだ。特に料理の味が最高で…」
「ありがとうございます。嬉しいです」
私は笑みを浮かべてユベールを見た。
「え…?」
「ユベール様の行きつけのお店に連れてきてくれて嬉しかったです。だから私は是非、この店で食事がしたいです」
「シルビア…」
ユベールは以外そうな目で私を見ると、フッと笑みを浮かべた。
「よし。なら…このままこの店で食事をするか?」
「はい、そうですね」
「なら早速料理を注文するか。いいか、ここのおすすめメニューは…」
ユベールが自信を持って私に料理をすすめる様子は…どことなく嬉しそうに見えた…。
****
それから約1時間半後―。
私達のテーブルの上には空になった大皿が何枚も乗っていた。
「どうだった。この店の料理は?」
全ての料理を食べ終えた私にユベールが尋ねてきた。
「はい、どれもとても美味しかったです。特にお肉の香味揚げが最高でした」
「そうだろう?俺たちの間でもその肉料理が一番人気があるんだ」
「でしょうね。とても美味しかったですから」
「どうだ?最後に何か1杯飲むか?」
ユベールの言葉に驚いてしまった。まさか、あの生真面目なユベールからお酒の誘いがあるとは思わなかった。
「…」
穴の開くほど、ユベールを見つめていると彼は怪訝そうな顔で私を見た。
「何だ?その顔は…嫌ならやめるが?」
「いえ、嫌だなんてめっそうもありません。ではワイン1杯位なら…」
「よし、分かった。では頼むか」
私達は店内を見渡したが、店の中は相変わらず混雑していてウェイトレスが見当たらない。
「仕方ない。直接カウンターへ行って注文してくるからお前はここで待っていろ」
「はい」
ユベールは席を立って店のカウンターへと向かっていく。その姿を見届けていると、いきなり何者かが私の右側の椅子にドスンと座ってきた。
「え?」
驚いてそちらを見ると、そこには柄の悪そうな顔に傷がある男が座っていた。更に左側にも同じような若者が座って来たのだ。
「あ、あの…?」
いきなり見知らぬ男2人に挟まれて、私は恐怖を感じた―。
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