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2-1 呼び止める人物は
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朝食後―
私は何としても今回の魔石探しのテストを棄権したくてアンリ王子の元へ行こうと思ったのだが、他の令嬢たちが彼の元へ一斉に集まり、質問攻めをしているので近づくことすら出来ないでいた。アンリ王子の周囲には20人以上の令嬢たちが集まっている。
「こんなんじゃアンリ王子に話も出来ないわ…」
その時、ふと王子の背後に立つユベールが目に入った。彼は冷めた目でアンリ王子に群がる令嬢たちを黙って見つめている。
「そうだ!ユベールにお願いすればアンリ王子と話をさせてもらえるかも…!」
そこで私はユベールの元へ向かった。
「おはようございます、ユベール様」
私は笑みを浮かべて彼の前に立つと挨拶をした。
「ああ…お前は確かシルビア・ルグラン。俺に何の用だ?」
「はい。今回のテストが開始される前にどうしても一度アンリ王子とお話がしたいのでお時間を取っていただけるようにお伝えして頂けないでしょうか?」
ニコニコと愛想を振りまきながら言う。
「言っておくが…ゲームを有利に進めたくて個人的に話をしようと思っているのか?だとしたら無駄だ。全員平等にテストは行われる。本日の午後2時から開始されるのだから対策を練るなり、部屋で休んでいる方が得策だと思うぞ?」
「そうではありません。この際なのではっきり申し上げますが…私はこのゲームを棄権したいのです。もう魔石探しは諦めて家に帰るつもりなので、アンリ王子にお話ししたかったのですが、伝言でも大丈夫なのであれば伝えておいて頂けないでしょうか?」
「何だって?本気で言ってるのか?」
この話にはさすがのユベールも驚いたのか、眉をひそめている。
「はい、そうです。私には魔石探しは無理なので。お手数ですが、棄権の許可が下りましたら教えて頂けないでしょうか?それでは失礼致します」
ユベールに頭を下げると、踵を返して彼の前から去って行った。
****
ボーン
ボーン
ボーン
部屋の中にある振り子時計が12時を知らせる音を奏でた。
アンリ王子からの連絡が一切来ないまま、とうとう昼食の時間になってしまったのだ。
「もう…一体どうなっているのよ…」
私はやきもきしながらソファの上に座って読んでいた本を目の前のガラステーブルの上に置いた。
このままでは私は棄権する事が出来ずに魔石探しゲームに参加しなくてはならなくなる。だけど昼食の席にアンリ王子は現れるはず。その時に何とか話が出来るかもしれない。
「なら早速ダイニングルームへ行きましょう」
立ち上がると、私はダイニングルームへと向かった―。
ダイニングルームへ向かって歩いていると、私はあることに気づいた。魔石探しグループの貴族令嬢たちにある異変が起こっていたのだ。朝の段階では令嬢たちはほぼ全員が1人で行動しており、親しくしている様子は見られなかったのだが、今は様子が一転していた。ダイニングルームへ向かう令嬢たちは全員が最低でも3人以上のグループが出来上がっていたのだ。
「皆いつの間に…」
その様子を見て思わずポツリと呟いた。彼女たちは皆やる気なのだ。私のようにテストを棄権しようと考えている令嬢はいないのかもしれない。
ため息をついたその時、背後から声が掛けられた。
「シルビア」
その声は…。
嫌な予感がして振り向くと、やはりそこに立っていたのはコーネリアだった。
「コーネリア…」
見るとコーネリアは私を意味深な目でじっと見つめていた―。
私は何としても今回の魔石探しのテストを棄権したくてアンリ王子の元へ行こうと思ったのだが、他の令嬢たちが彼の元へ一斉に集まり、質問攻めをしているので近づくことすら出来ないでいた。アンリ王子の周囲には20人以上の令嬢たちが集まっている。
「こんなんじゃアンリ王子に話も出来ないわ…」
その時、ふと王子の背後に立つユベールが目に入った。彼は冷めた目でアンリ王子に群がる令嬢たちを黙って見つめている。
「そうだ!ユベールにお願いすればアンリ王子と話をさせてもらえるかも…!」
そこで私はユベールの元へ向かった。
「おはようございます、ユベール様」
私は笑みを浮かべて彼の前に立つと挨拶をした。
「ああ…お前は確かシルビア・ルグラン。俺に何の用だ?」
「はい。今回のテストが開始される前にどうしても一度アンリ王子とお話がしたいのでお時間を取っていただけるようにお伝えして頂けないでしょうか?」
ニコニコと愛想を振りまきながら言う。
「言っておくが…ゲームを有利に進めたくて個人的に話をしようと思っているのか?だとしたら無駄だ。全員平等にテストは行われる。本日の午後2時から開始されるのだから対策を練るなり、部屋で休んでいる方が得策だと思うぞ?」
「そうではありません。この際なのではっきり申し上げますが…私はこのゲームを棄権したいのです。もう魔石探しは諦めて家に帰るつもりなので、アンリ王子にお話ししたかったのですが、伝言でも大丈夫なのであれば伝えておいて頂けないでしょうか?」
「何だって?本気で言ってるのか?」
この話にはさすがのユベールも驚いたのか、眉をひそめている。
「はい、そうです。私には魔石探しは無理なので。お手数ですが、棄権の許可が下りましたら教えて頂けないでしょうか?それでは失礼致します」
ユベールに頭を下げると、踵を返して彼の前から去って行った。
****
ボーン
ボーン
ボーン
部屋の中にある振り子時計が12時を知らせる音を奏でた。
アンリ王子からの連絡が一切来ないまま、とうとう昼食の時間になってしまったのだ。
「もう…一体どうなっているのよ…」
私はやきもきしながらソファの上に座って読んでいた本を目の前のガラステーブルの上に置いた。
このままでは私は棄権する事が出来ずに魔石探しゲームに参加しなくてはならなくなる。だけど昼食の席にアンリ王子は現れるはず。その時に何とか話が出来るかもしれない。
「なら早速ダイニングルームへ行きましょう」
立ち上がると、私はダイニングルームへと向かった―。
ダイニングルームへ向かって歩いていると、私はあることに気づいた。魔石探しグループの貴族令嬢たちにある異変が起こっていたのだ。朝の段階では令嬢たちはほぼ全員が1人で行動しており、親しくしている様子は見られなかったのだが、今は様子が一転していた。ダイニングルームへ向かう令嬢たちは全員が最低でも3人以上のグループが出来上がっていたのだ。
「皆いつの間に…」
その様子を見て思わずポツリと呟いた。彼女たちは皆やる気なのだ。私のようにテストを棄権しようと考えている令嬢はいないのかもしれない。
ため息をついたその時、背後から声が掛けられた。
「シルビア」
その声は…。
嫌な予感がして振り向くと、やはりそこに立っていたのはコーネリアだった。
「コーネリア…」
見るとコーネリアは私を意味深な目でじっと見つめていた―。
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