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4章 14 詐欺師よりも聖女様
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「これは……?」
「明るい曲ですね」
「何だか元気が湧いてきそうです」
「初めて聞く曲だ……」
「さすがはリアンナ様」
私の演奏に、全員が反応する。
それはそうだろう。この曲は私が子供の頃から大好きだったし、いつかあてもない旅に出てみたいと思うようになった原点でもあるのだから。
ノリノリになって弾いていると、いつの間にか全員が手拍子を叩いて笑顔で聞いている。
カイン、ニーナにジャン。そしてサムに……。
「ええええっ!? リュ、リュックさん!?」
ウクレレを演奏しながら、私は仰天してしまった。
何と先程まで右手が動かないと言っていた彼が皆と一緒に手拍子を叩いてたからだ。
「え? あ!! 手が動いている!!」
リュックは私に言われて始めて気づいたのか、驚いている。
驚いて演奏を止めると、サムがリュックの右腕を掴んだ。
「リュック!! お前、右手動くようになったのか!?」
「あ、ああ。そうみたいだ……」
リュックは自分の右腕をじっと見つめ……開いたり、閉じたりしてみた。
「動いている……」
「信じられない……!」
カインとジャンは呆然としている。すると……。
「どうです!? これが聖女様の奇跡の力です! リアンナ様の奏でる曲は、まさに神の力……神力が宿っているのです!」
おおっ!! ついに、ニーナが言い切ってしまった!!
「ちょ、ちょっとニーナッ!! 一体何を……」
こんなのただの偶然に決まっている! ニーナに抗議しようとしたそのとき。
「聖女様っ!」
突然ガシッとリュックに両手を握りしめられ、ブンブン手を上下に揺すぶられる。
「本当にありがとうございます!! 聖女様!!」
「そうだ! まさに奇跡の力だ!! 聖女様は俺達の恩人です!!」
サムがリュックの背後から現れて、頭をペコペコ下げてきた。
「い、いえ。だからこれは……単なる偶然……」
すると、ニーナが耳もとで囁いてきた。
「リアンナ様、ここで変に偶然だとか、まぐれだと言ってはいけません。素直に聖女の力だと言い切ってしまったほうが良いですよ。 この先も旅を続けられるのであれば詐欺師と呼ばれるよりも、聖女様と呼ばれたほうが旅をし易いではありませんか」
確かに、ニーナの言うことは尤もだ。
「リュックさんの腕が動くようになって良かったです。きっと、私の演奏がリュックさんの傷を癒やしたのでしょうね?」
思ってもいないことを口にし、にっこり微笑む私。
「ええ、そうです。聖女様が傷を癒やしてくださいました! 聖女様は俺の命の恩人と言っても過言ではありません! まさに神の奇跡です! 国中の人々に知らせたい気分です!」
うう……本当に詐欺師になってしまったような心境だ。
「い、いえ。そんな大げさに騒がないで下さい」
冗談じゃない、これ以上騒ぎになったら……いつか絶対にボロが出るに決まっている!
「俺、『イナク』に戻ったら聖女様の等身大の木彫りを作りますよ! そして、村の守り神として祀らせていただきます!!」
「はぁ!? 絶対にそんな事しないでくださいね!?」
その後、私は必死になってサムとリュックを説得し……等身大の木彫りをつくることを、何とか断念させることに成功した――
「明るい曲ですね」
「何だか元気が湧いてきそうです」
「初めて聞く曲だ……」
「さすがはリアンナ様」
私の演奏に、全員が反応する。
それはそうだろう。この曲は私が子供の頃から大好きだったし、いつかあてもない旅に出てみたいと思うようになった原点でもあるのだから。
ノリノリになって弾いていると、いつの間にか全員が手拍子を叩いて笑顔で聞いている。
カイン、ニーナにジャン。そしてサムに……。
「ええええっ!? リュ、リュックさん!?」
ウクレレを演奏しながら、私は仰天してしまった。
何と先程まで右手が動かないと言っていた彼が皆と一緒に手拍子を叩いてたからだ。
「え? あ!! 手が動いている!!」
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驚いて演奏を止めると、サムがリュックの右腕を掴んだ。
「リュック!! お前、右手動くようになったのか!?」
「あ、ああ。そうみたいだ……」
リュックは自分の右腕をじっと見つめ……開いたり、閉じたりしてみた。
「動いている……」
「信じられない……!」
カインとジャンは呆然としている。すると……。
「どうです!? これが聖女様の奇跡の力です! リアンナ様の奏でる曲は、まさに神の力……神力が宿っているのです!」
おおっ!! ついに、ニーナが言い切ってしまった!!
「ちょ、ちょっとニーナッ!! 一体何を……」
こんなのただの偶然に決まっている! ニーナに抗議しようとしたそのとき。
「聖女様っ!」
突然ガシッとリュックに両手を握りしめられ、ブンブン手を上下に揺すぶられる。
「本当にありがとうございます!! 聖女様!!」
「そうだ! まさに奇跡の力だ!! 聖女様は俺達の恩人です!!」
サムがリュックの背後から現れて、頭をペコペコ下げてきた。
「い、いえ。だからこれは……単なる偶然……」
すると、ニーナが耳もとで囁いてきた。
「リアンナ様、ここで変に偶然だとか、まぐれだと言ってはいけません。素直に聖女の力だと言い切ってしまったほうが良いですよ。 この先も旅を続けられるのであれば詐欺師と呼ばれるよりも、聖女様と呼ばれたほうが旅をし易いではありませんか」
確かに、ニーナの言うことは尤もだ。
「リュックさんの腕が動くようになって良かったです。きっと、私の演奏がリュックさんの傷を癒やしたのでしょうね?」
思ってもいないことを口にし、にっこり微笑む私。
「ええ、そうです。聖女様が傷を癒やしてくださいました! 聖女様は俺の命の恩人と言っても過言ではありません! まさに神の奇跡です! 国中の人々に知らせたい気分です!」
うう……本当に詐欺師になってしまったような心境だ。
「い、いえ。そんな大げさに騒がないで下さい」
冗談じゃない、これ以上騒ぎになったら……いつか絶対にボロが出るに決まっている!
「俺、『イナク』に戻ったら聖女様の等身大の木彫りを作りますよ! そして、村の守り神として祀らせていただきます!!」
「はぁ!? 絶対にそんな事しないでくださいね!?」
その後、私は必死になってサムとリュックを説得し……等身大の木彫りをつくることを、何とか断念させることに成功した――
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