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第70話 醜い言い争い
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「デニム、君と…叔母さんには横領の罪が問われているんだよ。」
ロバートさんは静かに言った。
「な、何だって?!そんな事した覚えはないぞ!」
「…」
デニムは喚くが、義母は口を閉ざしている。
「叔母さん、黙っているということは…心当たりはあるんですね?」
「…」
それでも義母はまだ口を閉ざしている。しかし顔が青ざめているところを見ると、確信犯であるのは間違いないだろう。するとロバートさんが小脇に抱えていた茶封筒から書類を取り出すと読み上げた。
「叔母さんとデニムは5年程前から領民たちから集めた税金を少ない金額に書き換えて、国に収めていたんだよ。そしてくすねたお金で叔母さんはアクサリーやドレスを買い、デニム。君はそのお金で賭け事に狂っていた。それだけじゃない、あなた方はフェリシアさんの実家からの毎月の支援金…この屋敷の維持費や、使用人たちに支払う給料、その他諸々を援助してもらっていたのに、その資金にすら手を付けていた。」
「な、何だってっ?!俺は身に覚えがないぞっ!」
デニムはロバートさんに食ってかかる。
「それはそうだろう。だって君は何も聞かされず、知らされないまま叔母さんからお小遣いと称して横領していたお金を貰っていたのだから」
「な、何だってっ?!」
デニムはギョッとした顔で自分の愚かな母親を見る。
「それに叔母さんは自分の欲の為に購入した贅沢品を荘園を開墾する為の備品として領収書を書き直していましたね?」
「…っ!」
ビクリと義母の肩が跳ねた。全く…そんな悪知恵が働くならデニムに領地経営の勉強を教えられたのではないだろうか?」
「そ、そうなのか…?」
デニムは義母に問い詰めると黙って頷く。
「な、何だってそんな真似を…っ!」
デニムが声を荒げると義母は癇癪を起こした。
「仕方ないでしょうっ?!身についた贅沢は消すことが出来ないのよっ!」
おおっ!犯罪を犯しておきながら開き直っている!
「デニム、君だって人のことは言えないよ?何しろこの屋敷の中で違法賭け賭博をしただろう?」
ロバートさんの言葉にデニムは打ち上げられた魚の様に口をパクパクさせた。
「何ですってっ?!デニムッ!お、お前…なんって真似をっ!」
義母の顔が鬼のような形相になる。もはや私達の口の出しどころがない。
「知らん!俺は知らんぞっ?!そ、そうだ!だったら証拠を出せよ!証拠っ!」
よし!今度は私の出番だっ!
「デニム、証拠ならあるわよ」
ツカツカとデニムの座るテーブル席に近づくと、私は封筒から写真を取り出し、バララバラとデニムの頭の上に落としてやった。
「お、おいっ!何するん…っ!」
デニムは写真を見て言葉を切った。当然だ。だってそこにはデニムがマリア嬢と一緒にカード賭博をしている現場を写した写真なのだから。しかもテーブルの上にはお金も並べられている。
「な、何なのっ?!この写真はっ!」
義母が駆け寄ってくるとテーブルの上にばらまかれた写真を見てブルブル身体を震わせた。
「デニムッ!お、お前は一体この屋敷で何をやっていたのっ!!」
顔を真っ赤にさせてデニムを怒鳴りつける義母。
「あ、こ・これは…っ!ってな、何でこんな写真がっ!どうしてお前が持っているんだっ?!」
デニムは真っ青になりながら私を見る。
「…」
事前に全てを把握している義父はまるで彫像の様に動かず、ただ静観している。ブレンダ嬢はこの騒ぎに動ずる事も無く、朝食を黙々と食べ続けている。う~ん…大物だ。
「何でこんな写真があるかなんて問題じゃないわ!問題なのはデニムッ!お前がこの屋敷で掛け賭博をした事なのよっ!これは立派な犯罪だって分かってるの?!」
「うるさいっ!そっちこそ横領をしていたくせにっ!」
「お黙りなさいっ!お前こそ、そのお金で賭け事をして遊んでいたでしょうっ?!」
「横領した金だって分かってたら遊ぶものかっ!」
ついに義母とデニムは見にくい言い争いを初めてしまった。しかし、このままでは拉致があかない。その時…。
「お前たち、いい加減にしないかっ!!」
大きな声が響き渡った―。
ロバートさんは静かに言った。
「な、何だって?!そんな事した覚えはないぞ!」
「…」
デニムは喚くが、義母は口を閉ざしている。
「叔母さん、黙っているということは…心当たりはあるんですね?」
「…」
それでも義母はまだ口を閉ざしている。しかし顔が青ざめているところを見ると、確信犯であるのは間違いないだろう。するとロバートさんが小脇に抱えていた茶封筒から書類を取り出すと読み上げた。
「叔母さんとデニムは5年程前から領民たちから集めた税金を少ない金額に書き換えて、国に収めていたんだよ。そしてくすねたお金で叔母さんはアクサリーやドレスを買い、デニム。君はそのお金で賭け事に狂っていた。それだけじゃない、あなた方はフェリシアさんの実家からの毎月の支援金…この屋敷の維持費や、使用人たちに支払う給料、その他諸々を援助してもらっていたのに、その資金にすら手を付けていた。」
「な、何だってっ?!俺は身に覚えがないぞっ!」
デニムはロバートさんに食ってかかる。
「それはそうだろう。だって君は何も聞かされず、知らされないまま叔母さんからお小遣いと称して横領していたお金を貰っていたのだから」
「な、何だってっ?!」
デニムはギョッとした顔で自分の愚かな母親を見る。
「それに叔母さんは自分の欲の為に購入した贅沢品を荘園を開墾する為の備品として領収書を書き直していましたね?」
「…っ!」
ビクリと義母の肩が跳ねた。全く…そんな悪知恵が働くならデニムに領地経営の勉強を教えられたのではないだろうか?」
「そ、そうなのか…?」
デニムは義母に問い詰めると黙って頷く。
「な、何だってそんな真似を…っ!」
デニムが声を荒げると義母は癇癪を起こした。
「仕方ないでしょうっ?!身についた贅沢は消すことが出来ないのよっ!」
おおっ!犯罪を犯しておきながら開き直っている!
「デニム、君だって人のことは言えないよ?何しろこの屋敷の中で違法賭け賭博をしただろう?」
ロバートさんの言葉にデニムは打ち上げられた魚の様に口をパクパクさせた。
「何ですってっ?!デニムッ!お、お前…なんって真似をっ!」
義母の顔が鬼のような形相になる。もはや私達の口の出しどころがない。
「知らん!俺は知らんぞっ?!そ、そうだ!だったら証拠を出せよ!証拠っ!」
よし!今度は私の出番だっ!
「デニム、証拠ならあるわよ」
ツカツカとデニムの座るテーブル席に近づくと、私は封筒から写真を取り出し、バララバラとデニムの頭の上に落としてやった。
「お、おいっ!何するん…っ!」
デニムは写真を見て言葉を切った。当然だ。だってそこにはデニムがマリア嬢と一緒にカード賭博をしている現場を写した写真なのだから。しかもテーブルの上にはお金も並べられている。
「な、何なのっ?!この写真はっ!」
義母が駆け寄ってくるとテーブルの上にばらまかれた写真を見てブルブル身体を震わせた。
「デニムッ!お、お前は一体この屋敷で何をやっていたのっ!!」
顔を真っ赤にさせてデニムを怒鳴りつける義母。
「あ、こ・これは…っ!ってな、何でこんな写真がっ!どうしてお前が持っているんだっ?!」
デニムは真っ青になりながら私を見る。
「…」
事前に全てを把握している義父はまるで彫像の様に動かず、ただ静観している。ブレンダ嬢はこの騒ぎに動ずる事も無く、朝食を黙々と食べ続けている。う~ん…大物だ。
「何でこんな写真があるかなんて問題じゃないわ!問題なのはデニムッ!お前がこの屋敷で掛け賭博をした事なのよっ!これは立派な犯罪だって分かってるの?!」
「うるさいっ!そっちこそ横領をしていたくせにっ!」
「お黙りなさいっ!お前こそ、そのお金で賭け事をして遊んでいたでしょうっ?!」
「横領した金だって分かってたら遊ぶものかっ!」
ついに義母とデニムは見にくい言い争いを初めてしまった。しかし、このままでは拉致があかない。その時…。
「お前たち、いい加減にしないかっ!!」
大きな声が響き渡った―。
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