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第47話 そんな話は聞いてない

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コツコツコツコツ…
カツカツカツカツ…

私とフレディの廊下を歩く足音が響き渡る。そして…。
ピタリと足を止めた。私達は馬鹿義母と阿保デニムの待つダイニングルームへとやってきたのだ。
目の前には大きな扉。この扉の向こうに愚かな母息子が待っている。

「ねえ、食卓には義父はいるのかしら?」

私は隣に立つフレディに小声で尋ねた。

「いいえ、旦那様はまだ領地からお戻りになっておりません」

フレディも小声で答える。なるほど…となると遠慮はいらないというわけね?
私は口元にニヤリと笑みを浮かべた。

「す~…」

扉をノックする前に心を落ち着かせる為に私はまず深呼吸した。

コンコン

扉をノックした。すると…。

「おはいり」

高飛車な義母の声が扉の奥から聞こえた。

「「失礼致します」」

私はドアノブを回して扉を開けると、フレディと2人で声を揃えて頭を下げる。
すると間髪入れずに義母の怒鳴り声が響き渡る。

「遅い!お前達、遅すぎよ!特にそこのメイド!お前はデニムの専属メイドになったのではないのかい?!」

「は?」

そんな話は聞いていないんですけど?
あまりの言葉に思わず顔を上げた。義母は豪華な椅子に座り、鷲鼻のてっぺんまで顔を赤らめながら私を睨みつけている。

誰が?
いつ?
あの阿呆デニムの専属メイドになったのだ?

思わずデニムを見ると、バチリと目が合ってしまった。どうやらあいつは人の許可なしに勝手に私を頑見していたようだ。

するとデニムが慌てて義母に言う。

「違う、違う、別に俺はメイを専属メイドにしようとなんて思っていない」

「おや?そうなのかい?給仕にあのメイドを指名したからてっきりお前の専属メイドになったかと思ったじゃないの」

「あ、ああ。その事で夕食後メイに話をしようと思ってな」

そしてデニムはチラリと私を見た。
はぁ~っ?!こっちはあいにく話などコレッポチも無いのですけど?!ただでさえ義母とクズ男と同じ空気すら吸いたくないのに、何故、この私がデニムに呼び出されなければならないのだ?!思わず怒りで肩を震わす。すると隣に立っていたフレディがそっと耳元で言った。

「奥様、押さえて押さえて」

ええ、そうね。フレディの言葉に無言で頷くとデニムが声を荒げた。

「おい!そこの2人!そんなところでコソコソ話をするな!無駄口叩く暇があったら、さっさと給仕をしろ!料理が冷めるだろう?!」

「はい、申し訳ございません」

フレディが冷静に頭を下げる。こちらもデニムごときに怒鳴られてイライラがピークに達していたが、給仕の時に嫌がらせをしてやる事にしたのでぐっとこらえた。

「それではお取り分け致します」

フレディが予めワゴンに用意された料理のフードカバーを外すと、義母とデニムの為に料理を取り分け始めた。私もそれに習って料理に近づく。
今夜のメニューはメインディッシュに鶏の照り焼きバーベキューソースあえ、ハッシュドポテトにベーコン焼き、ボイルウィンナーにマカロニサラダ、コーンポタージュスープである。極めつけはデザートに生クリームたっぷりクレープが付いている。

うげ…何これ、まるきりお子様メニューである。野菜など殆どない。いや、果たしてポテトやコーンを野菜の分類にしても良いのか、正直私の中では迷いがある。そしてふと何気なくワゴンに付いている引き出しに気付いた。中には何が入っているのだろう…?

そして引き出しを開けて…私は笑みを浮かべた。よし、今夜の食事はこれを使って嫌がらせをしてやろう。何しろ折角の私の休息時間を阿呆デニムは邪魔してくれたのだから―。



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