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第30話 期待に胸を膨らませ
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バアアアアンッ!!
食堂の扉を両手で勢いよく開けた私は大きな声で言った。
「皆、ただいま!」
『奥様!!』
その場にいた全員が一斉に私を見る。まだ食事が終わっていないようで、各々の席の前には料理が並べられている。
ズカズカと食堂に入ると、先程自分が座っていた席にドスンと座った。
「奥様!どうされたのですか?」
パーシーが心配そうに声を掛けてくる。
「奥様、そんなに苛つかなくても大丈夫ですよ。ご安心下さい。ちゃんと奥様のお食事は取ってあります。いまお持ちしますから」
シェフが傍にやってきた。
「ううん、違うわ。料理のことで苛ついているんじゃないのよ?」
「それでは何があったのですか?」
クララが尋ねてくる。いつの間にか私の周囲には 皆が集まっていた。
「それが聞いてよ!デニムと義母の話なんだけどね、最初は確かに親子喧嘩をしていたのよ?お互いの事を罵っていたから、正直言って気分は良かったわ。なのに…それがいつの間にか私の悪口に代わっていったのよ!デニムも義母もひ、人の事を年増って言ったのよ!私は…私はまだ24歳なのに!!」
『な、何ですってーっ!!』
その場にいる全員は言うまでもなく驚きの声を上げた。
「しかもねえっ!あの阿呆デニム、何て言ったと思う?」
「何と仰られていたのですか?」
尋ねてきたのはデニムのフットマン、フレディだ。
「結婚相手は10代の少女が良かったなんてふざけた事を言ってたのよっ!!あんの少女趣味のど変態男めっ!!」
私は目の前のテーブルをバンバン叩いた。
「何と、愚かな主なのでしょう。やはり彼の頭の中は空っぽだったのですね。領地経営の事は一切分からず、覚えたことと言えば、ポーカーやブラックジャック、バカラのルールのみ。しかも25歳にもなって10代の少女を好むとは…まさに羞恥の極みです」
フレディは額を右手で押さえながらため息を付く
「ええ、本当にそう思いますよ。食べ物は好き嫌いが多くて偏り気味。野菜と魚が大嫌いで食べられるのは肉料理かスイーツのみ。大の大人がいつまでたっても幼児並の味覚だなんて全く料理人泣かせの人間です。これが自分の身内だったら引っ叩いてでも無理やり食べさせてやるところです!」
シェフは日頃の料理づくりに対する鬱憤がたまっているようだ。
「本当に最低よ…大体私と結婚したのも実家の財産を当てにしていたのよ?そうじゃなければ結婚なんかしなかったと言ってたんだから!!しかも嫁いで2年ぶりに妹の出産祝いで実家に帰ればこれ幸いと言わんばかりに勝手にサイン済みの離婚届を送りつけてくるなんて…」
そこで私はデニムの言っていた言葉を思い出し、笑みが浮かんだ。
「え?奥様?何故そこで笑うのですか?」
クララが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「う、うん。実はね、さっきデニムが言ってたことを思い出したのよ」
「なんて言ってたのですか?」
尋ねてきたのはフレディだ。
「あいつね、自分が送った離婚届がまだ届かないから、苛々しているし、不安に思っているみたいなのよ?私が何かしかけて来るんじゃないかと思うと安心して夜も眠れないんですって。言葉通り目の下にはクマがあったわ」
「ああ…言われてみればデニム様がやたら気にしていましたね。『おい、俺あてになにか手紙は届いていないかっ?!』と尋ねられましたから」
フレディが上手にデニムの物真似をする。
「やっぱりそうなのね…実はね、ここに戻ってきた時、馬鹿デニムから届いた離婚届を持ってきたのだけど…これを利用させて貰うことにしたわ」
私は不敵な笑みを浮かべ、時計をみた。
今の時間は夜の8時。後1時間後に義父との約束がある。
義父から一体どんな話を聞かされるのか…?
私は今から期待に胸を膨らませるのだった―。
食堂の扉を両手で勢いよく開けた私は大きな声で言った。
「皆、ただいま!」
『奥様!!』
その場にいた全員が一斉に私を見る。まだ食事が終わっていないようで、各々の席の前には料理が並べられている。
ズカズカと食堂に入ると、先程自分が座っていた席にドスンと座った。
「奥様!どうされたのですか?」
パーシーが心配そうに声を掛けてくる。
「奥様、そんなに苛つかなくても大丈夫ですよ。ご安心下さい。ちゃんと奥様のお食事は取ってあります。いまお持ちしますから」
シェフが傍にやってきた。
「ううん、違うわ。料理のことで苛ついているんじゃないのよ?」
「それでは何があったのですか?」
クララが尋ねてくる。いつの間にか私の周囲には 皆が集まっていた。
「それが聞いてよ!デニムと義母の話なんだけどね、最初は確かに親子喧嘩をしていたのよ?お互いの事を罵っていたから、正直言って気分は良かったわ。なのに…それがいつの間にか私の悪口に代わっていったのよ!デニムも義母もひ、人の事を年増って言ったのよ!私は…私はまだ24歳なのに!!」
『な、何ですってーっ!!』
その場にいる全員は言うまでもなく驚きの声を上げた。
「しかもねえっ!あの阿呆デニム、何て言ったと思う?」
「何と仰られていたのですか?」
尋ねてきたのはデニムのフットマン、フレディだ。
「結婚相手は10代の少女が良かったなんてふざけた事を言ってたのよっ!!あんの少女趣味のど変態男めっ!!」
私は目の前のテーブルをバンバン叩いた。
「何と、愚かな主なのでしょう。やはり彼の頭の中は空っぽだったのですね。領地経営の事は一切分からず、覚えたことと言えば、ポーカーやブラックジャック、バカラのルールのみ。しかも25歳にもなって10代の少女を好むとは…まさに羞恥の極みです」
フレディは額を右手で押さえながらため息を付く
「ええ、本当にそう思いますよ。食べ物は好き嫌いが多くて偏り気味。野菜と魚が大嫌いで食べられるのは肉料理かスイーツのみ。大の大人がいつまでたっても幼児並の味覚だなんて全く料理人泣かせの人間です。これが自分の身内だったら引っ叩いてでも無理やり食べさせてやるところです!」
シェフは日頃の料理づくりに対する鬱憤がたまっているようだ。
「本当に最低よ…大体私と結婚したのも実家の財産を当てにしていたのよ?そうじゃなければ結婚なんかしなかったと言ってたんだから!!しかも嫁いで2年ぶりに妹の出産祝いで実家に帰ればこれ幸いと言わんばかりに勝手にサイン済みの離婚届を送りつけてくるなんて…」
そこで私はデニムの言っていた言葉を思い出し、笑みが浮かんだ。
「え?奥様?何故そこで笑うのですか?」
クララが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「う、うん。実はね、さっきデニムが言ってたことを思い出したのよ」
「なんて言ってたのですか?」
尋ねてきたのはフレディだ。
「あいつね、自分が送った離婚届がまだ届かないから、苛々しているし、不安に思っているみたいなのよ?私が何かしかけて来るんじゃないかと思うと安心して夜も眠れないんですって。言葉通り目の下にはクマがあったわ」
「ああ…言われてみればデニム様がやたら気にしていましたね。『おい、俺あてになにか手紙は届いていないかっ?!』と尋ねられましたから」
フレディが上手にデニムの物真似をする。
「やっぱりそうなのね…実はね、ここに戻ってきた時、馬鹿デニムから届いた離婚届を持ってきたのだけど…これを利用させて貰うことにしたわ」
私は不敵な笑みを浮かべ、時計をみた。
今の時間は夜の8時。後1時間後に義父との約束がある。
義父から一体どんな話を聞かされるのか…?
私は今から期待に胸を膨らませるのだった―。
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