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第29話 誰が年増だ?!
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19時半―
厨房の隣にある使用人たちの使う食堂で、頼もしい仲間たちと一緒に私は素朴な賄い料理に舌鼓をうっていた。
「あ~このグリーン豆のカレーソース和え、最高…」
「奥様、この野菜の田舎風ごった煮も最高ですよ?」
隣に座っていたまだあどけなさが残るフットマンが私の前に煮物料理が乗っている大皿を置いてくれた。
「あら、有難う。そう言えば貴方見た事無いわね?名前は何て言うの?」
すると少年は顔 を赤くすると答えた。
「は、はい。僕はパーシーって言います。まだ見習いですが、奥様の為に頑張ります!」
「あら、そうなの?頑張ってね。応援してるから」
何をどう頑張るのか分からないがパーシーに激励の声を掛けて、早速煮物料理を取り皿に取り分けて食べてみた。
「まあ!本当に美味しいわ!」
その時―
バアアアアンッ!!
扉が勢いよく開かれ、デニムたちのディナーの給仕をしていたフットマンが現れた。
「お、奥様!大変ですっ!非常に面白い事が起きているので、大至急見に来て下さい!親子喧嘩が始まってますよ!」
フットマンは興奮のあまり、自分が妙な言葉遣いをしていることに気付いていない。けれど…。
「何ですってっ?!親子喧嘩ですってっ?!」
私はガタンと勢いよく立ち上がった。食事はまだ食べ掛けだが、この際そんな事はどうでもいい。食べそこなった食事はまた後で温め直して食べればよいだけの事。
「皆、私は今すぐ親子喧嘩を見学して来るわ!だから私の分の食事、ちゃんと残して置いて頂戴ね?」
「勿論ですよ、奥様!」
シェフは親指を立ててウィンクする。実に頼もしいシェフだ。彼は大活躍してくれているから来月の給金は5割増しにしてあげよう。
「それでは行って来るわね!」
メイド服を翻し、私は急いでデニム達のいるダイニングルーム目指して駆けだすのだった―。
****
見張り兼、給仕役を務めるメイドから新しい料理を隣の部屋で受け取った私はノックをした。
コンコン
「失礼致します。次のお料理をお持ち致しました」
そして扉を開けて、ワゴンを押して室内に入る。
「デニム!貴方なんだって1日にお見合いを2件も入れたのよ!もしお見合いの時間が延長されたらと考えたことは無かったの?!」
義母が乱暴にカチャカチャと肉を切り分けながら眉間に青筋を立てている。
おお~確かに親子喧嘩が勃発している。
「仕方ないだろうっ?!俺にはあまりじっくり見合いに時間を掛けている余裕が無いんだから!」
テーブルパンに食らいつきながらデニムが言う。
「…」
義父は知らぬ存ぜぬで無言で舌平目のムニエルを食べていたが、私の姿に気付くとウィンクしてきた。
「御黙りなさい!大体貴方は昔から考えが浅いのよ!だからあんな年増の女と結婚してしまったんでしょう?」
義母の言葉にピクリと反応し、危うくテーブルに置こうとしていたカクテルサラダを取り落としそうになってしまった。誰が年増だっ!!私はまだ24歳だ!大体結婚したのだって22歳。決して晩婚とは思えない。
「何言ってるんだ!あの縁談を持ち込んだのは母さんだっただろう?!大体俺は結婚相手は10代の少女が良かったんだよ!」
ゾワッ!
デニムの言葉に全身に鳥肌が立つ。おのれ、デニムめ。やはり少女趣味の変態男だったのだな?!
「し、仕方ないでしょう?!我が家はあの時お金が無かったのだから!」
義母は顔を赤らめて抗議する。
「…」
相変わらずクールな義父は私が運んできたカクテルサラダを食べていた。
「くっそ~…!それにしてもフェリシアめ…!」
突如デニムの口から私の名前が出て来て一瞬ギョッとしてしまった。
「一体いつになったら離婚届を送って来るんだよ!何か文句の一つでも言ってくるわけでもなし、何の反応も無いのが一番イラつくし、不安になってくる!あいつが何かしかけて来るんじゃないかと思うと安心して眠れないんだよ!」
うん、確かに良く見てみるとデニムの目の下にクマが出来ている。それにもう色々仕掛けているのにこの間抜け男は何も気づいていないのだ。
「そうね…いい加減返事が返ってこないっておかしいわ?届いていないはずないのに…」
義母は首を捻る。
「ちくしょーっ!!フェリシアめっ!!いっつもいっつも人を見下した目で見やがって‥‥!だから年増女は嫌なんだよ!頭が固くて融通が利かなくて…!」
その後もデニムの私に対する悪口が止まらない。駄目だ。これ以上ここにいては…。始めは面白おかしく彼らの親子喧嘩の様子を眺めていたが、今や義母とデニムは互いに私の悪口を言い合っている。これ以上ここにとどまり続ければ、私はこの2人を殴り飛ばしてしまうかもしれない。そこで私は一礼すると、部屋を去ることにした。
「失礼致します」
そして部屋を出た私は怒り心頭に燃えながら小走りで厨房を目指した―。
厨房の隣にある使用人たちの使う食堂で、頼もしい仲間たちと一緒に私は素朴な賄い料理に舌鼓をうっていた。
「あ~このグリーン豆のカレーソース和え、最高…」
「奥様、この野菜の田舎風ごった煮も最高ですよ?」
隣に座っていたまだあどけなさが残るフットマンが私の前に煮物料理が乗っている大皿を置いてくれた。
「あら、有難う。そう言えば貴方見た事無いわね?名前は何て言うの?」
すると少年は顔 を赤くすると答えた。
「は、はい。僕はパーシーって言います。まだ見習いですが、奥様の為に頑張ります!」
「あら、そうなの?頑張ってね。応援してるから」
何をどう頑張るのか分からないがパーシーに激励の声を掛けて、早速煮物料理を取り皿に取り分けて食べてみた。
「まあ!本当に美味しいわ!」
その時―
バアアアアンッ!!
扉が勢いよく開かれ、デニムたちのディナーの給仕をしていたフットマンが現れた。
「お、奥様!大変ですっ!非常に面白い事が起きているので、大至急見に来て下さい!親子喧嘩が始まってますよ!」
フットマンは興奮のあまり、自分が妙な言葉遣いをしていることに気付いていない。けれど…。
「何ですってっ?!親子喧嘩ですってっ?!」
私はガタンと勢いよく立ち上がった。食事はまだ食べ掛けだが、この際そんな事はどうでもいい。食べそこなった食事はまた後で温め直して食べればよいだけの事。
「皆、私は今すぐ親子喧嘩を見学して来るわ!だから私の分の食事、ちゃんと残して置いて頂戴ね?」
「勿論ですよ、奥様!」
シェフは親指を立ててウィンクする。実に頼もしいシェフだ。彼は大活躍してくれているから来月の給金は5割増しにしてあげよう。
「それでは行って来るわね!」
メイド服を翻し、私は急いでデニム達のいるダイニングルーム目指して駆けだすのだった―。
****
見張り兼、給仕役を務めるメイドから新しい料理を隣の部屋で受け取った私はノックをした。
コンコン
「失礼致します。次のお料理をお持ち致しました」
そして扉を開けて、ワゴンを押して室内に入る。
「デニム!貴方なんだって1日にお見合いを2件も入れたのよ!もしお見合いの時間が延長されたらと考えたことは無かったの?!」
義母が乱暴にカチャカチャと肉を切り分けながら眉間に青筋を立てている。
おお~確かに親子喧嘩が勃発している。
「仕方ないだろうっ?!俺にはあまりじっくり見合いに時間を掛けている余裕が無いんだから!」
テーブルパンに食らいつきながらデニムが言う。
「…」
義父は知らぬ存ぜぬで無言で舌平目のムニエルを食べていたが、私の姿に気付くとウィンクしてきた。
「御黙りなさい!大体貴方は昔から考えが浅いのよ!だからあんな年増の女と結婚してしまったんでしょう?」
義母の言葉にピクリと反応し、危うくテーブルに置こうとしていたカクテルサラダを取り落としそうになってしまった。誰が年増だっ!!私はまだ24歳だ!大体結婚したのだって22歳。決して晩婚とは思えない。
「何言ってるんだ!あの縁談を持ち込んだのは母さんだっただろう?!大体俺は結婚相手は10代の少女が良かったんだよ!」
ゾワッ!
デニムの言葉に全身に鳥肌が立つ。おのれ、デニムめ。やはり少女趣味の変態男だったのだな?!
「し、仕方ないでしょう?!我が家はあの時お金が無かったのだから!」
義母は顔を赤らめて抗議する。
「…」
相変わらずクールな義父は私が運んできたカクテルサラダを食べていた。
「くっそ~…!それにしてもフェリシアめ…!」
突如デニムの口から私の名前が出て来て一瞬ギョッとしてしまった。
「一体いつになったら離婚届を送って来るんだよ!何か文句の一つでも言ってくるわけでもなし、何の反応も無いのが一番イラつくし、不安になってくる!あいつが何かしかけて来るんじゃないかと思うと安心して眠れないんだよ!」
うん、確かに良く見てみるとデニムの目の下にクマが出来ている。それにもう色々仕掛けているのにこの間抜け男は何も気づいていないのだ。
「そうね…いい加減返事が返ってこないっておかしいわ?届いていないはずないのに…」
義母は首を捻る。
「ちくしょーっ!!フェリシアめっ!!いっつもいっつも人を見下した目で見やがって‥‥!だから年増女は嫌なんだよ!頭が固くて融通が利かなくて…!」
その後もデニムの私に対する悪口が止まらない。駄目だ。これ以上ここにいては…。始めは面白おかしく彼らの親子喧嘩の様子を眺めていたが、今や義母とデニムは互いに私の悪口を言い合っている。これ以上ここにとどまり続ければ、私はこの2人を殴り飛ばしてしまうかもしれない。そこで私は一礼すると、部屋を去ることにした。
「失礼致します」
そして部屋を出た私は怒り心頭に燃えながら小走りで厨房を目指した―。
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