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22 恐ろしい悪夢

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……私は夢を見ていた。

それは戦場の光景だった。
草木一本生えない荒れ果てた大地。その水平線の先から、馬に乗った敵国の兵士たちが旗を掲げて地響きを立ててこちらへ向かって大群で押し寄せてくる。

私はその様子を甲冑に身を包んだ兵士たちと共に見届けている。

『ミレーユ様! まだ我々は待機していなけれなならないのですか!』

部隊を率いる騎士が焦った様子で声を掛けてきた。

『……ええ。まだよ。もっと引き寄せてからじゃないと魔法の効果が半減してしまうわ』

私達の部隊は敵国の1/3にも満たない人数しかいない。そして父からは確実に勝つように命じられている。
戦場に立つのはもうイヤだった。いくら敵とはいえ私の魔法で焼かれ、悶え死ぬさまを見るのは限界を超えている。

けれど、それも今日で終わり。

父は約束してくれた。今回の戦いで勝利を収めれば、もう私を戦場に送り出すことはしない。
ジェイクの元へ嫁ぐが良いと言われているのだ。

別に私は彼に好意を寄せている訳では無い。ふたりの婚約は政略的な意味合いで婚約を交わしただけであって、そこに双方の意志はない。恐らくジェイクだって私に特別な感情を寄せてはいないだろう。

けれど、ジェイクに嫁げば私はもう二度と戦場に立たなくて良いのだ。

だから、なんとしても勝たなければ……!

徐々に敵は近づいてくる。

『ミレーユ様! そろそろ我々も迎え撃つ準備を……!』

先程の騎士が焦った様子で声掛けてくる。

『いいえ! 大丈夫よ! 敵の武器は剣か、弓矢だけ。この距離から攻撃を受けるはず……』

そこまで言いかけた時……


ズガーンッ!!

突然乾いた空に響き渡るのは銃声だった。

『ギャアッ!!』

突然部隊の兵士が悲鳴を上げた。慌てて見ると胸から血を吹き出しながら背後に倒れる兵士の姿が飛び込んできた。

『銃だ! 敵は銃を装備しているぞ!』
『まずい!』
『撃ってくるぞ!!』

兵士たちの慌てふためく声と同時に、先頭の列に並んでいた騎士たちが一斉に銃を構えてこちらに向かって撃ち始めた。
そして背後からは馬にまたがった兵士たちがこちらへ向かって突進してくる。

ズガーンッ!
ズガーンッ!

響き渡る銃声に、次々と倒れていく仲間の兵士たち。

『そ、そんな……!!』

慌てて魔法を放とうとした時……

『危ない! ミレーユ様!』

1人の兵士が私の前に飛び出してきた。

『グアアアッ!!』

悲鳴を上げて倒れる兵士。

すると敵兵から声が上がる。

『魔女だ! あの魔女を殺せ!!』
『魔女を狙えっ!!』

魔女……?

その言葉に衝撃を受ける。

そんな……私は魔女などでは……

『あの魔女の首を取れば我らの勝利だ!!』

その言葉に、私の中で何かが弾けた――



次に意識を取り戻した時、そこは辺り一面焼け野原になっていた。

そして足元には人の形をした黒焦げになった遺体の山が延々と続き……


『イヤアアアアアアアアーッ!!』

私は絶叫した――

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