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9 戦争が起こった理由とは
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「その驚きよう……本当に何も知らなかったんだね。と言うか、覚えていないのか。この国に住む者なら誰もが知っているはずなのに」
「はい……ですが、ベルンハルト家が滅ぼされてしまったのは全てシュタイナー王家のせいだったのですね?」
許せない……。
テーブルの上で組んでいた両手に力を込める。
「いや、全て王家のせいにしても良いかどうか……。何しろベルンハルト一族が処刑されてすぐに、この国は半ば『タリス』の支配下に置かれてしまったようだし……。ユリアナは知らないだろうけど、一番危険な第一線で戦わされているのは全てアレスの兵士たちだからな」
「そうなのですか?」
「タリスの兵士達は比較的安全地帯で戦っている。戦争被害を被っているのはアレスばかりだ。それにしてもあまりにも話が出来すぎていると思わないか?この国が支配下に置かれてからすぐに、冷戦状態だった『モリス』国と戦争が勃発するなんて」
「確かに……そうですね……」
一体私の知らないところで何が起こっていたのだろう?でも今はそれよりも先に確認したいことがある。
「あの……それで、今ベルンハルト家の所有していた屋敷はどうなってしまったのでしょうか……?」
「公爵家達を処刑した後、全て焼き払われたらしいよ。でも、どのみちこの戦争下では屋敷は無事でいられなかったんじゃないかな?『アレス』の有力貴族たちは戦争に協力する為だと言われて、タリスの国王に財産から兵力まで全て奪われてしまったからね」
「!そ、そんな……!」
もしかすると、私が全ての原因で……この戦争が始まった……?
あまりにも恐ろしい話に身体が震えてしまう。
「大丈夫かい?ユリアナ。顔がさっきからずっと真っ青だ。今夜はもう遅いから……休んだほうがいい。君はあのままベッドを使えばいいから」
「ですが……」
命まで助けてもらって、これ以上ジェイクに迷惑を掛けたくはなかった。
「言っておくけど……病人で、しかも女性をベンチの上で寝かせられるほど僕は神経が図太くないんでね。頼むから言う通りにしてもらえないかな?」
「分かりました……」
頷くと、ようやくジェイクは笑みを浮かべた――
****
「……」
青白い月に照らされたベッドの上で私は窓から見える夜空を見つめていた。
部屋の片隅のベンチではジェイクが眠っており、規則正し寝息が聞こえている。
それにしてもジェイクは何故ここまで良くしてくれるのだろう?私などただのお荷物でしか無いのに、厄介者を引き入れるなんて。
ふと、脳裏に家族のすがたが蘇る。強かった父、優しかった母。
頼りになる二人の兄……そしてまだあどけなさが残る双子の弟と妹……。
私は家族がどのような方法で処刑されたかは聞いていない。いや、聞きたくは無かった。
ただ、どうか苦しまない方法で処刑されたことを願わずにはいられなかった。
私が何故、十年後のこの世界で……しかも別人の身体で蘇ったのか理由は分からない。
けれど、これは家族の敵を私に討つようにと神様が力を貸して下さったのかもしれない。
絶対に仇を討ってやるのだ。
私は心に強く誓った――
「はい……ですが、ベルンハルト家が滅ぼされてしまったのは全てシュタイナー王家のせいだったのですね?」
許せない……。
テーブルの上で組んでいた両手に力を込める。
「いや、全て王家のせいにしても良いかどうか……。何しろベルンハルト一族が処刑されてすぐに、この国は半ば『タリス』の支配下に置かれてしまったようだし……。ユリアナは知らないだろうけど、一番危険な第一線で戦わされているのは全てアレスの兵士たちだからな」
「そうなのですか?」
「タリスの兵士達は比較的安全地帯で戦っている。戦争被害を被っているのはアレスばかりだ。それにしてもあまりにも話が出来すぎていると思わないか?この国が支配下に置かれてからすぐに、冷戦状態だった『モリス』国と戦争が勃発するなんて」
「確かに……そうですね……」
一体私の知らないところで何が起こっていたのだろう?でも今はそれよりも先に確認したいことがある。
「あの……それで、今ベルンハルト家の所有していた屋敷はどうなってしまったのでしょうか……?」
「公爵家達を処刑した後、全て焼き払われたらしいよ。でも、どのみちこの戦争下では屋敷は無事でいられなかったんじゃないかな?『アレス』の有力貴族たちは戦争に協力する為だと言われて、タリスの国王に財産から兵力まで全て奪われてしまったからね」
「!そ、そんな……!」
もしかすると、私が全ての原因で……この戦争が始まった……?
あまりにも恐ろしい話に身体が震えてしまう。
「大丈夫かい?ユリアナ。顔がさっきからずっと真っ青だ。今夜はもう遅いから……休んだほうがいい。君はあのままベッドを使えばいいから」
「ですが……」
命まで助けてもらって、これ以上ジェイクに迷惑を掛けたくはなかった。
「言っておくけど……病人で、しかも女性をベンチの上で寝かせられるほど僕は神経が図太くないんでね。頼むから言う通りにしてもらえないかな?」
「分かりました……」
頷くと、ようやくジェイクは笑みを浮かべた――
****
「……」
青白い月に照らされたベッドの上で私は窓から見える夜空を見つめていた。
部屋の片隅のベンチではジェイクが眠っており、規則正し寝息が聞こえている。
それにしてもジェイクは何故ここまで良くしてくれるのだろう?私などただのお荷物でしか無いのに、厄介者を引き入れるなんて。
ふと、脳裏に家族のすがたが蘇る。強かった父、優しかった母。
頼りになる二人の兄……そしてまだあどけなさが残る双子の弟と妹……。
私は家族がどのような方法で処刑されたかは聞いていない。いや、聞きたくは無かった。
ただ、どうか苦しまない方法で処刑されたことを願わずにはいられなかった。
私が何故、十年後のこの世界で……しかも別人の身体で蘇ったのか理由は分からない。
けれど、これは家族の敵を私に討つようにと神様が力を貸して下さったのかもしれない。
絶対に仇を討ってやるのだ。
私は心に強く誓った――
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