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第110話 幸せのヴァージンロード
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カイの腕から降りると、早速シスター達とイングリット様、スターリング侯爵夫人に、車椅子に乗ったお母様が近づいてきた。車椅子を押してくれているのはケリーである。
「アゼリア、ウェディングドレスを着替える部屋を用意してあるのよ。いらっしゃい」
シスターエレナが声を掛けてくれた。
「私達もお手伝いさせて下さいね?」
イングリット様が笑みを浮かべながら私の手を握りしめてきた。
「ありがとうございます…」
「アゼリア…貴女の着るウェディングドレスはね、私がお父様の元へ嫁ぐときに着たドレスなのよ?女の子が生まれたら…絶対に着せてあげたいと思って取っておいたのよ」
お母様が私に言った。
「お母様…」
お母様の気持ちが嬉しくて、思わず目頭に涙が浮かぶ。そんな私の肩をカイがそっと抱き寄せると言った。
「皆さん、アゼリアの事を宜しくお願いします。僕も準備があるのでまた後でね、アゼリア」
カイは私の頬にキスをすると手を振って、男性陣が待つ方へと歩いていく。それを見ていた先生が言った。
「カイザード王太子様はとても優しそうな方ね…おめでとう。アゼリア」
「先生…私…」
先生には本当に申し訳ないことをしてしまったと思っている。マルセル様との結婚を望まれていたのに、私の方から婚約破棄をして貰いたいと願い出てしまったのだから。すると先生が言った。
「アゼリア、何も気にすることは無いのよ?マルセルが貴女の事をしっかり捕まえて置かなかったからこの様な事になってしまったのだから…あの子は自業自得よ」
するとそれを聞いていたスターリング侯爵夫人が言った。
「まぁ…ハイム夫人は中々手厳しいことをおっしゃいますのね?」
「ええ、そうですわ。あの子にはもっとしっかりして貰いたいですから」
「アゼリア様、私…早くアゼリア様の花嫁姿が見たいです!」
ケリーが目を輝かせながら私に言った。
「ええ、そうね。さぁ、アゼリア。行きましょう」
シスターアンジュに促され、私達は花嫁の支度部屋へと向かった―。
****
「アゼリア、本当に綺麗よ」
ウェディングドレスを着た私に、目のあまり見えないお母様が頬に手を当てて顔を近づけると言った。
「ありがとうございます。お母様」
お母様が用意してくれたウェディングドレスは胸元が胸元と袖部分が真っ白なレース編みで、美しいシルクのドレスに長くトレーンを引く、それは見事なドレスだった。私のウェディングドレス姿に女性陣たちからはため息が漏れる。
「それじゃ、行きましょうか?アゼリア。礼拝堂で皆さんが待っているわ」
シスターアンジュが手を貸してくれた。
「はい、シスターアンジュ」
そして私はシスターアンジュに手を引かれ、お母様たちに見守られながら礼拝堂へと向かった―。
****
小さな礼拝堂にオルガンの音が響き渡っている。オルガンを弾いているのは教会の子ども達だった。この日の為に子ども達は一生懸命オルガンの練習をしていたとシスターエレナに聞いていた。
祭壇の前には既に真っ白なスーツを着たカイが待っている。その向かい合わせにはシスターエレナが立っていた。礼拝堂の椅子には既に皆が着席していて、私の方をじっと見つめている。
「大丈夫?緊張しているのかしら?」
シスターアンジュが耳元で囁いてきた。
「緊張していますけど…大丈夫です。それに…今日は何だか驚くほどに身体が軽く感じられるのです」
私は笑みを浮かべてシスターアンジュを見た。
「それは良かったわ…。それじゃ、行きましょう。貴女の愛する夫の元へ…」
「はい」
祭壇の前にはカイが微笑みを浮かべながら私が来るのを待っている。
待っていて、カイ。今、貴方の元へ行くから…。
そして私は記念すべき、ヴァージンロードの最初の一歩を踏んだ―。
「アゼリア、ウェディングドレスを着替える部屋を用意してあるのよ。いらっしゃい」
シスターエレナが声を掛けてくれた。
「私達もお手伝いさせて下さいね?」
イングリット様が笑みを浮かべながら私の手を握りしめてきた。
「ありがとうございます…」
「アゼリア…貴女の着るウェディングドレスはね、私がお父様の元へ嫁ぐときに着たドレスなのよ?女の子が生まれたら…絶対に着せてあげたいと思って取っておいたのよ」
お母様が私に言った。
「お母様…」
お母様の気持ちが嬉しくて、思わず目頭に涙が浮かぶ。そんな私の肩をカイがそっと抱き寄せると言った。
「皆さん、アゼリアの事を宜しくお願いします。僕も準備があるのでまた後でね、アゼリア」
カイは私の頬にキスをすると手を振って、男性陣が待つ方へと歩いていく。それを見ていた先生が言った。
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先生には本当に申し訳ないことをしてしまったと思っている。マルセル様との結婚を望まれていたのに、私の方から婚約破棄をして貰いたいと願い出てしまったのだから。すると先生が言った。
「アゼリア、何も気にすることは無いのよ?マルセルが貴女の事をしっかり捕まえて置かなかったからこの様な事になってしまったのだから…あの子は自業自得よ」
するとそれを聞いていたスターリング侯爵夫人が言った。
「まぁ…ハイム夫人は中々手厳しいことをおっしゃいますのね?」
「ええ、そうですわ。あの子にはもっとしっかりして貰いたいですから」
「アゼリア様、私…早くアゼリア様の花嫁姿が見たいです!」
ケリーが目を輝かせながら私に言った。
「ええ、そうね。さぁ、アゼリア。行きましょう」
シスターアンジュに促され、私達は花嫁の支度部屋へと向かった―。
****
「アゼリア、本当に綺麗よ」
ウェディングドレスを着た私に、目のあまり見えないお母様が頬に手を当てて顔を近づけると言った。
「ありがとうございます。お母様」
お母様が用意してくれたウェディングドレスは胸元が胸元と袖部分が真っ白なレース編みで、美しいシルクのドレスに長くトレーンを引く、それは見事なドレスだった。私のウェディングドレス姿に女性陣たちからはため息が漏れる。
「それじゃ、行きましょうか?アゼリア。礼拝堂で皆さんが待っているわ」
シスターアンジュが手を貸してくれた。
「はい、シスターアンジュ」
そして私はシスターアンジュに手を引かれ、お母様たちに見守られながら礼拝堂へと向かった―。
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小さな礼拝堂にオルガンの音が響き渡っている。オルガンを弾いているのは教会の子ども達だった。この日の為に子ども達は一生懸命オルガンの練習をしていたとシスターエレナに聞いていた。
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「それは良かったわ…。それじゃ、行きましょう。貴女の愛する夫の元へ…」
「はい」
祭壇の前にはカイが微笑みを浮かべながら私が来るのを待っている。
待っていて、カイ。今、貴方の元へ行くから…。
そして私は記念すべき、ヴァージンロードの最初の一歩を踏んだ―。
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