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第27話 3ヶ月、待って下さい
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「ねぇ…何故3カ月待たなくちゃならないのかな?」
アルトは眉をしかめながら尋ねてきた。
「そ、それは…つ、つまり…せ、世間体の話です!」
「世間体…?」
「はい、世間体です。私とアルト様は本来であれば昨日、婚約式を挙げる予定だったのですよね?ですが私の体調が悪くなって…式は挙げられなかった。けれどその翌日に婚約破棄だなんて…世間の目から見たら何だと思われてしまうと思いませんか?わ、私は…アルト様の評判を…落としたくは無いのですっ!」
自分で何とも苦しい言い訳をしているのは分っていた。けれど、もうこれ以上私には他に言葉が見つからなかった。何しろアルトは世間の評判をとても気にする人物だったからだ。
「そうか…僕の為に言ってるって事だね?」
アルトが少しだけ口元に笑みを浮かべた。
「は、はい。そうです…」
いいえ、違います。本当はトビーの脅迫が怖くてすぐに婚約破棄に応じてあげられないからです。
…等と言う台詞は口が裂けても言えない。
「それじゃ、3カ月後には婚約破棄に応じてくれるってことだよね?」
妙に迫力のある様子でアルトが尋ねてくる。
「はい、か、必ず…婚約破棄、お受け致します…」
何故だろう…?
昨日からのアルトの様子で私は今まで感じたことの無い奇妙な感覚をアルトに対して抱き始めていた。昨日まではアルトとは婚約破棄したくない、捨てられたくないと思っていたのに…今の私にとって、アルトはどうでも良い存在になりつつあった。
むしろ、本当はさっさと婚約破棄に応じてしまいたい程に…。
「どうしたんだい?エイミー。今日は本当に何だか1日変だよ」
「い、いえ。そんな事はありません…」
笑みを浮かべるも、自分の顔が引きつっているのが良く分る。
「まぁ、君がおとなしく婚約破棄に応じてくれるとは思わなかったけどね…。だけど3ヶ月か…」
その口ぶりはどこか残念そうに感じる
ひょっとすると3ヶ月の間、私がアルトの周りをうろちょろされるのは嫌だと思っているのかもしれない。
「あの…アルト様。婚約破棄は…3ヶ月後ですが…ご安心下さい。本日の様に、もうアルト様の周辺には近づかないようにしますので…」
「え?本当?それは良かった」
途端に手の平を返したかのように笑顔を見せるアルト。
「はい、本当です。なのでどうぞご安心下さい」
こんなに露骨な態度を取られるような人の傍にはいられない。
「分ったよ。それじゃ今日から僕と君は一切かかわらないと言う事で…3ヶ月後には晴れて婚約破棄だね?」
「そうですね…」
「よし、話はまとまったね。それじゃ僕はこれで帰ることにするよ…。あ、見送りならいらないからね」
「分りました」
アルトはそれだけ言うと、席を立ち…扉を開けて部屋を出る直前に私を振り返った。
「エイミー」
「はい」
立ち上がって返事する。
「今、君が着ているドレスだけど…」
あ、もしかしてアルトはこのドレスがビクトリアさんが着ているドレスと同じマダム・リュゼのドレスだと言う事に気付いたのだろうか?
「このドレスがどうかしましたか?」
「うん。はっきり言って全然似合っていないよ。まるで人から借りて来たドレスみたいだ。エイミーのように子供のような外見の者には合わないと思うよ。そのドレスは人を選ぶドレスだから。でもこれは僕からのアドバイスだから、別に聞かなくてもいいけどね」
笑顔ではっきりと言うアルト。
「アドバイス…有難うございます」
それだけ言うのがやっとだった。
「それじゃ帰るよ。さよなら、エイミー」
「はい、さよなら…」
バタン…
そしてアルトは出て行き、扉は閉じられた―。
アルトは眉をしかめながら尋ねてきた。
「そ、それは…つ、つまり…せ、世間体の話です!」
「世間体…?」
「はい、世間体です。私とアルト様は本来であれば昨日、婚約式を挙げる予定だったのですよね?ですが私の体調が悪くなって…式は挙げられなかった。けれどその翌日に婚約破棄だなんて…世間の目から見たら何だと思われてしまうと思いませんか?わ、私は…アルト様の評判を…落としたくは無いのですっ!」
自分で何とも苦しい言い訳をしているのは分っていた。けれど、もうこれ以上私には他に言葉が見つからなかった。何しろアルトは世間の評判をとても気にする人物だったからだ。
「そうか…僕の為に言ってるって事だね?」
アルトが少しだけ口元に笑みを浮かべた。
「は、はい。そうです…」
いいえ、違います。本当はトビーの脅迫が怖くてすぐに婚約破棄に応じてあげられないからです。
…等と言う台詞は口が裂けても言えない。
「それじゃ、3カ月後には婚約破棄に応じてくれるってことだよね?」
妙に迫力のある様子でアルトが尋ねてくる。
「はい、か、必ず…婚約破棄、お受け致します…」
何故だろう…?
昨日からのアルトの様子で私は今まで感じたことの無い奇妙な感覚をアルトに対して抱き始めていた。昨日まではアルトとは婚約破棄したくない、捨てられたくないと思っていたのに…今の私にとって、アルトはどうでも良い存在になりつつあった。
むしろ、本当はさっさと婚約破棄に応じてしまいたい程に…。
「どうしたんだい?エイミー。今日は本当に何だか1日変だよ」
「い、いえ。そんな事はありません…」
笑みを浮かべるも、自分の顔が引きつっているのが良く分る。
「まぁ、君がおとなしく婚約破棄に応じてくれるとは思わなかったけどね…。だけど3ヶ月か…」
その口ぶりはどこか残念そうに感じる
ひょっとすると3ヶ月の間、私がアルトの周りをうろちょろされるのは嫌だと思っているのかもしれない。
「あの…アルト様。婚約破棄は…3ヶ月後ですが…ご安心下さい。本日の様に、もうアルト様の周辺には近づかないようにしますので…」
「え?本当?それは良かった」
途端に手の平を返したかのように笑顔を見せるアルト。
「はい、本当です。なのでどうぞご安心下さい」
こんなに露骨な態度を取られるような人の傍にはいられない。
「分ったよ。それじゃ今日から僕と君は一切かかわらないと言う事で…3ヶ月後には晴れて婚約破棄だね?」
「そうですね…」
「よし、話はまとまったね。それじゃ僕はこれで帰ることにするよ…。あ、見送りならいらないからね」
「分りました」
アルトはそれだけ言うと、席を立ち…扉を開けて部屋を出る直前に私を振り返った。
「エイミー」
「はい」
立ち上がって返事する。
「今、君が着ているドレスだけど…」
あ、もしかしてアルトはこのドレスがビクトリアさんが着ているドレスと同じマダム・リュゼのドレスだと言う事に気付いたのだろうか?
「このドレスがどうかしましたか?」
「うん。はっきり言って全然似合っていないよ。まるで人から借りて来たドレスみたいだ。エイミーのように子供のような外見の者には合わないと思うよ。そのドレスは人を選ぶドレスだから。でもこれは僕からのアドバイスだから、別に聞かなくてもいいけどね」
笑顔ではっきりと言うアルト。
「アドバイス…有難うございます」
それだけ言うのがやっとだった。
「それじゃ帰るよ。さよなら、エイミー」
「はい、さよなら…」
バタン…
そしてアルトは出て行き、扉は閉じられた―。
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