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アルト・クライス ④
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2限目の授業を僕は落ち着かない気持ちで聞いていた。授業の合間にチラリと背後を振り返ると、階段教室の一番後ろの廊下側の席でエイミーがノートを取っている姿が目に映った。
エイミー…。
身長だってあんなに小さいのに、どうしてあんな一番後ろの席に…しかも廊下寄りの席に座るのだろう?
何故か意図的に避けられているような気がしてきた。…でもだとしたらそれはかえって僕にとって望ましい展開だ。どうせエイミーには婚約破棄を告げて、ビクトリアを今度は婚約者にするつもりだったのだから。
けれど…何故なのだろう?
こんなにもエイミーの事が気になるのは…。僕は彼女の事をお荷物だと思っていたのに―。
****
キーンコーンカーンコーン
2限目の授業が終わるチャイムが教室に鳴り響く。教授が教室を出て行ったところでエイミーを振り返ると、視線が合った。
そうか、やっぱりエイミーも僕に用事があったんだ。
そこで急いで教科書やノート類を鞄にしまっていると、ジャスティンが声を掛けて来た。
「何だよ。随分慌てて片づけをしているじゃないか?」
「いやそんなことは無いよ」
視線を合わせること無く私物をカバンにつめ終わり、エイミーの方を振り返ると既に彼女は鞄を抱えて教室を出ようとしている所だった。
「エイミーッ!」
慌てて大きな声で彼女の名を呼ぶも、エイミーは聞こえているのかいないのか、まるで僕から逃げる様に走り去って行ってしまった。
「エイミー…」
呆然とその様子を見つめていると、不意に背後からポンと肩を叩かれた。振り返るとそこに立っていたのはジャスティンだ。
「ジャスティン…」
「これは…あれだな。うん、お前…完全にエイミーに避けられてるよ」
「…やっぱりそうなんだ…。でもどうしてなんだろう…?」
まさかエイミーは僕がビクトリアと恋人同士で、婚約破棄しようとしていることに気付いているのだろうか?それで僕を避けている…?
いや、そんなはずは無い。僕は上手にやってきたし、エイミーはまだまだ子供なところがあって色恋沙汰には鈍い。きっと何か他に事情があるに違いない。
それに、どのみち僕は婚約破棄を告げるのだから、彼女の事なんかどうだっていい。
「アルト。どうしたんだ?」
僕が黙り込んでしまったからだろう。ジャスティンが話しかけて来た。
「いや、何でもない。学食に行こう」
「そうだな」
そして僕はジャスティンと連れ立って、学食へと向かった―。
****
学食は既に大勢の学生達で賑わっていた。エイミーは何所にいるのだろう?いつも必ず僕達と一緒に昼休みは食事をとっているだけに少しだけ気になった。何故なら彼女は友人が1人もいない。こんなに混雑している学食で1人でメニューを注文し、空いてる席を見つけて食事をする事が出来るのだろうか…?
ジャスティンと2人で料理の乗ったトレーをあらかじめ確保していたテーブルに運びながら、ついエイミーの姿を探してしまう。
「何だ、やっぱりエイミーの事探していたんだな?」
トレーをテーブルに置きながらジャスティンが尋ねて来た。
「ま、まぁ少しはね」
曖昧に返事をしながら席に着くとジャスティンが笑った。
「そうだよな。エイミーはまるで外見が子供にしか見えないから、つい保護者気分になってしまうんだよな」
「保護者…」
そうだ。僕がこんなにエイミーの事を気に掛けているのは彼女の保護者のつもりでいたからなんだ。ジャスティンに言われて、今まで感じていたモヤモヤした気持ちが消えていった。
「ありがとう、ジャスティン!」
「え?何がだ?」
不思議そうな顔をするジャスティンに言った。
「何でも無いよ。それじゃお昼を食べるとしようか」
「そうだな」
そして僕とジャスティンは食事をとり始めた。よし、今日はビクトリアと放課後一緒に過ごすのはやめよう。
代わりにエイミーの屋敷を訪ねて彼女に婚約破棄を告げるんだ。
僕とビクトリアの未来の為に―。
エイミー…。
身長だってあんなに小さいのに、どうしてあんな一番後ろの席に…しかも廊下寄りの席に座るのだろう?
何故か意図的に避けられているような気がしてきた。…でもだとしたらそれはかえって僕にとって望ましい展開だ。どうせエイミーには婚約破棄を告げて、ビクトリアを今度は婚約者にするつもりだったのだから。
けれど…何故なのだろう?
こんなにもエイミーの事が気になるのは…。僕は彼女の事をお荷物だと思っていたのに―。
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キーンコーンカーンコーン
2限目の授業が終わるチャイムが教室に鳴り響く。教授が教室を出て行ったところでエイミーを振り返ると、視線が合った。
そうか、やっぱりエイミーも僕に用事があったんだ。
そこで急いで教科書やノート類を鞄にしまっていると、ジャスティンが声を掛けて来た。
「何だよ。随分慌てて片づけをしているじゃないか?」
「いやそんなことは無いよ」
視線を合わせること無く私物をカバンにつめ終わり、エイミーの方を振り返ると既に彼女は鞄を抱えて教室を出ようとしている所だった。
「エイミーッ!」
慌てて大きな声で彼女の名を呼ぶも、エイミーは聞こえているのかいないのか、まるで僕から逃げる様に走り去って行ってしまった。
「エイミー…」
呆然とその様子を見つめていると、不意に背後からポンと肩を叩かれた。振り返るとそこに立っていたのはジャスティンだ。
「ジャスティン…」
「これは…あれだな。うん、お前…完全にエイミーに避けられてるよ」
「…やっぱりそうなんだ…。でもどうしてなんだろう…?」
まさかエイミーは僕がビクトリアと恋人同士で、婚約破棄しようとしていることに気付いているのだろうか?それで僕を避けている…?
いや、そんなはずは無い。僕は上手にやってきたし、エイミーはまだまだ子供なところがあって色恋沙汰には鈍い。きっと何か他に事情があるに違いない。
それに、どのみち僕は婚約破棄を告げるのだから、彼女の事なんかどうだっていい。
「アルト。どうしたんだ?」
僕が黙り込んでしまったからだろう。ジャスティンが話しかけて来た。
「いや、何でもない。学食に行こう」
「そうだな」
そして僕はジャスティンと連れ立って、学食へと向かった―。
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学食は既に大勢の学生達で賑わっていた。エイミーは何所にいるのだろう?いつも必ず僕達と一緒に昼休みは食事をとっているだけに少しだけ気になった。何故なら彼女は友人が1人もいない。こんなに混雑している学食で1人でメニューを注文し、空いてる席を見つけて食事をする事が出来るのだろうか…?
ジャスティンと2人で料理の乗ったトレーをあらかじめ確保していたテーブルに運びながら、ついエイミーの姿を探してしまう。
「何だ、やっぱりエイミーの事探していたんだな?」
トレーをテーブルに置きながらジャスティンが尋ねて来た。
「ま、まぁ少しはね」
曖昧に返事をしながら席に着くとジャスティンが笑った。
「そうだよな。エイミーはまるで外見が子供にしか見えないから、つい保護者気分になってしまうんだよな」
「保護者…」
そうだ。僕がこんなにエイミーの事を気に掛けているのは彼女の保護者のつもりでいたからなんだ。ジャスティンに言われて、今まで感じていたモヤモヤした気持ちが消えていった。
「ありがとう、ジャスティン!」
「え?何がだ?」
不思議そうな顔をするジャスティンに言った。
「何でも無いよ。それじゃお昼を食べるとしようか」
「そうだな」
そして僕とジャスティンは食事をとり始めた。よし、今日はビクトリアと放課後一緒に過ごすのはやめよう。
代わりにエイミーの屋敷を訪ねて彼女に婚約破棄を告げるんだ。
僕とビクトリアの未来の為に―。
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