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第11話 余計な知恵
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「エイミー…どうしたんだ?会いたいけど、会いたくないとは」
父が首を傾げながら尋ねてきた。
「い、いえ。それはつまり…折角の婚約式を私が体調を悪くしてしまったせいで中止にしてしまったので…アルト様に…も、申し訳なくて…」
そして私は俯いた。
「そう言えば…アルト様、余程婚約式を楽しみにしていたのでしょうね。エイミーが体調不良で帰ってしまったことを知った時、かなり落胆した様子だったわ」
「え?!」
母の言葉にドキリとする。
「ああ、がっかりしていたな。肩を落としていたよ。相当楽しみだったのだろう」
「そ、そんな…」
私は声を震わせた。やはり、アルトは婚約破棄出来なかったことが相当残念だったのだ。それで落ち込んで…。
どうしよう…。アルトはかなり怒っているかもしれない。そして私の事を嫌って…。
「あ!す、すまない。エイミー。別にお前を責めているわけではないのだからな?」
「ええ、そうよ。ただアルト様はエイミーとの婚約式を挙げられなくて残念がっていたように見えたって事を話したかっただけなのだから」
父と母は何を勘違いしたのか、私を慰めるような発言をしてくる。2人は勘違いしている。アルトが残念がっていたのは、私と婚約式を挙げられなかった事ではなく、私がバックレてしまった為にビクトリアさんとの約束…婚約破棄宣言を発表する事が出来なかったからだと言う事を。
「アルト様がお見舞いに来てくださったら、謝罪しておけばいいわよ。どのみち、今日の婚約式はアルト様のお母様の誕生祝いも兼ねていたのだから、あまり気にすることは無いわよ」
「はい…分かりました」
私は返事をした。
そうだった、今日は私とアルトの婚約式の日であったけれど、クライス伯爵夫人の誕生祝いも兼ねていたのだった。
アルトとビクトリアさんの浮気現場と婚約破棄宣言をするというアルトの言葉がショックで肝心な事を忘れていた。
「う~ん…やはりまだ顔色が悪いな。今日は部屋でゆっくり休んでいるといい。アルト様が来たらこの部屋にお通しすればいいだろうから」
「は、はい…お父様…」
返事をしながら思った。どうか、神様。お願いです。
アルトが面会に来ませんように…。
そして、私の祈りが通じたのだろうか、結局この日、アルトは私の面会に訪れる事も無く、夜を迎えた―。
****
22時―。
寝支度を整えた私にアネッサがベッドの準備をしながら言った。
「それにしてもアルト様は冷たいです。エイミー様が具合が悪いと言って婚約式に参加しなかったのに、お見舞いにすら来ないなんて…」
「でも私としては来てもらわなくて正解だったけどね。きっと体調不良なところに、婚約破棄を告げるのは悪いと思ったのじゃないかしら?」
だって、きっと私のところへ来れば、『婚約破棄』を申し出てきそうだったから。
「それにしたって、婚約破棄の申し出抜きで、単にお見舞いという形で来ると言う考えは念頭に無かったのでしょうか?」
プンプン怒ったように言うアネッサ。
「そう…よね。考えてみれば、私の事を少しでも考えてくれるならただのお見舞いに来てくれても良かったわけよね?やっぱり私が逃げたから…アルトは怒っているのだわ」
あの場で潔く婚約破棄を受け入れていれば、アルトは私を必要以上に嫌うことはなかったかもしれない。
そう考えると、再び悲しくなってきた。そして、あのおっかないトビーの言葉が脳裏に蘇ってくる。
『優しければなぁ…何も婚約式の日に婚約破棄を発表するはずないだろう?!』
うう…。
こうなったのも何もかもあの人のせいだ…。
余計な知恵?をつけさせたトビーをひどく恨んだのは言うまでも無かった―。
父が首を傾げながら尋ねてきた。
「い、いえ。それはつまり…折角の婚約式を私が体調を悪くしてしまったせいで中止にしてしまったので…アルト様に…も、申し訳なくて…」
そして私は俯いた。
「そう言えば…アルト様、余程婚約式を楽しみにしていたのでしょうね。エイミーが体調不良で帰ってしまったことを知った時、かなり落胆した様子だったわ」
「え?!」
母の言葉にドキリとする。
「ああ、がっかりしていたな。肩を落としていたよ。相当楽しみだったのだろう」
「そ、そんな…」
私は声を震わせた。やはり、アルトは婚約破棄出来なかったことが相当残念だったのだ。それで落ち込んで…。
どうしよう…。アルトはかなり怒っているかもしれない。そして私の事を嫌って…。
「あ!す、すまない。エイミー。別にお前を責めているわけではないのだからな?」
「ええ、そうよ。ただアルト様はエイミーとの婚約式を挙げられなくて残念がっていたように見えたって事を話したかっただけなのだから」
父と母は何を勘違いしたのか、私を慰めるような発言をしてくる。2人は勘違いしている。アルトが残念がっていたのは、私と婚約式を挙げられなかった事ではなく、私がバックレてしまった為にビクトリアさんとの約束…婚約破棄宣言を発表する事が出来なかったからだと言う事を。
「アルト様がお見舞いに来てくださったら、謝罪しておけばいいわよ。どのみち、今日の婚約式はアルト様のお母様の誕生祝いも兼ねていたのだから、あまり気にすることは無いわよ」
「はい…分かりました」
私は返事をした。
そうだった、今日は私とアルトの婚約式の日であったけれど、クライス伯爵夫人の誕生祝いも兼ねていたのだった。
アルトとビクトリアさんの浮気現場と婚約破棄宣言をするというアルトの言葉がショックで肝心な事を忘れていた。
「う~ん…やはりまだ顔色が悪いな。今日は部屋でゆっくり休んでいるといい。アルト様が来たらこの部屋にお通しすればいいだろうから」
「は、はい…お父様…」
返事をしながら思った。どうか、神様。お願いです。
アルトが面会に来ませんように…。
そして、私の祈りが通じたのだろうか、結局この日、アルトは私の面会に訪れる事も無く、夜を迎えた―。
****
22時―。
寝支度を整えた私にアネッサがベッドの準備をしながら言った。
「それにしてもアルト様は冷たいです。エイミー様が具合が悪いと言って婚約式に参加しなかったのに、お見舞いにすら来ないなんて…」
「でも私としては来てもらわなくて正解だったけどね。きっと体調不良なところに、婚約破棄を告げるのは悪いと思ったのじゃないかしら?」
だって、きっと私のところへ来れば、『婚約破棄』を申し出てきそうだったから。
「それにしたって、婚約破棄の申し出抜きで、単にお見舞いという形で来ると言う考えは念頭に無かったのでしょうか?」
プンプン怒ったように言うアネッサ。
「そう…よね。考えてみれば、私の事を少しでも考えてくれるならただのお見舞いに来てくれても良かったわけよね?やっぱり私が逃げたから…アルトは怒っているのだわ」
あの場で潔く婚約破棄を受け入れていれば、アルトは私を必要以上に嫌うことはなかったかもしれない。
そう考えると、再び悲しくなってきた。そして、あのおっかないトビーの言葉が脳裏に蘇ってくる。
『優しければなぁ…何も婚約式の日に婚約破棄を発表するはずないだろう?!』
うう…。
こうなったのも何もかもあの人のせいだ…。
余計な知恵?をつけさせたトビーをひどく恨んだのは言うまでも無かった―。
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