81 / 100
第81話 ようこそ、シェアハウスへ
しおりを挟む
「ようこそいらっしゃいました。ジョシュアさん!」
満面の笑みで私は扉を開けた。
「はい、本日からよろしくお願いしま…す…?」
ジョシュアさんは若干引き気味で挨拶してきた。恐らく全員で彼を出迎えたからなのかもしれない。
「この方がジョシュアさんですか…」
アネットが興味深げに見つめている。
「確かに、素敵な方ですね…納得です」
ちょっと!ブランカッ!ジョシュアさんに聞かれてしまうでしょうっ?!
私は慌ててジョシュアさんに声を掛けた。
「ど、どうぞ中へお入り下さい。あの、お荷物を運びますから。どちらにありますか?」
するとジョシュアさんが背後を振り返った。
「荷物ならあの馬車に積んできたんです」
見ると、そこに1頭の馬に繋がれた荷馬車があった。
「あの馬車と馬は私の物なんですよ。商売がら品物を仕入れたり、売りに行く事もあるので所有しているんです。今迄住んでいた所では馬車を置いておく場所が無かったので、辻馬車のオーナーに頼んで馬と馬車を預かって貰っていたのです。それで…この屋敷に置かせて頂けないでしょうか?料金も別にお支払い致しますので」
ジョシュアさんが申し訳無さげに言う。
「ええ、こちらは少しも構いませんよ。確か屋敷の裏手には厩舎もありますので」
「本当ですか?ありがとうございます!」
ジョシュアさんが嬉しそうに言った。
「それじゃ、皆でジョシュアさんの荷物を運ぶ手伝いをしましょう。ブランカ、ウィンターも呼んできてくれる?男なんだから手伝わせなくちゃ」
「はい、分かりました」
ブランカは返事をすると、ウィンターを呼びに行った。
「さて、皆。荷物運びをしましょう」
「「「はい!」」」
ジャン、ジェフ、アネットは返事をし…何度も申し訳ないですと頭を下げるジョシュアさんと一緒に私達は荷運びを始めた―。
****
午後5時―
「本当にありがとうございました。でも、本当に素敵な部屋ですね。すっかり気に入りましたよ」
ジョシュアさんがすっかり片付いた部屋の窓から庭を眺めながら言う。他の皆はそれぞれの持ち場で仕事をしている。
「お気に召していただいて、光栄です」
私は頭を下げた。
「それで、ここの人達は全員シェアハウスの住人なのですか?」
「ええ、そうですけど正確に言えば従業員ですね。今の所シェアハウスにお客として入居して頂いている方はルイスという名の男性で、彼は郵便局に勤めています」
まぁ、実際ルイスは前世では私の子供だったので、お客と言うよりは家族と言う感覚のほうが強いけど。
「全員、若い方ですね。それで…ゲルダさんの夫はどなたですか?」
ジョシュアさんはとんでもない事を聞いてきた。
「え?!な、何を仰っているのですか?私は独身ですから」
尤もつい最近まではラファエルというクズ夫がいたけれども、そこは内緒にしておこう。
「え?そうだったのですか?てっきり夫婦でこのシェアハウスを運営されているのかと思っていましたよ」
ジョシュアさんは目を丸くして私を見た。
「いえいえ、とんでもありません。ところで…ジョシュアさんはどうなのですか?」
私はずっと彼が独身かどうか気になっていた。この際だからドサクサに紛れて尋ねてみよう。
「私ですか?私も独身です。仕事に夢中になっていたら、いつの間にかこんなおじさんになっていましたよ」
ハハハと爽やかな笑顔で答えるジョシュアさん。
「いえ、そんな!ジョシュアさんはとても素敵な方だと思います!」
思わず本音をぶちまけてしまった。
「そうですか?若い女性にそんな風に言って頂けると、年甲斐もなく照れますね」
ジョシュアさんは照れくさそうに笑いながら頭を掻いた。
私はその笑顔に密かに胸が高鳴るのを感じた―。
満面の笑みで私は扉を開けた。
「はい、本日からよろしくお願いしま…す…?」
ジョシュアさんは若干引き気味で挨拶してきた。恐らく全員で彼を出迎えたからなのかもしれない。
「この方がジョシュアさんですか…」
アネットが興味深げに見つめている。
「確かに、素敵な方ですね…納得です」
ちょっと!ブランカッ!ジョシュアさんに聞かれてしまうでしょうっ?!
私は慌ててジョシュアさんに声を掛けた。
「ど、どうぞ中へお入り下さい。あの、お荷物を運びますから。どちらにありますか?」
するとジョシュアさんが背後を振り返った。
「荷物ならあの馬車に積んできたんです」
見ると、そこに1頭の馬に繋がれた荷馬車があった。
「あの馬車と馬は私の物なんですよ。商売がら品物を仕入れたり、売りに行く事もあるので所有しているんです。今迄住んでいた所では馬車を置いておく場所が無かったので、辻馬車のオーナーに頼んで馬と馬車を預かって貰っていたのです。それで…この屋敷に置かせて頂けないでしょうか?料金も別にお支払い致しますので」
ジョシュアさんが申し訳無さげに言う。
「ええ、こちらは少しも構いませんよ。確か屋敷の裏手には厩舎もありますので」
「本当ですか?ありがとうございます!」
ジョシュアさんが嬉しそうに言った。
「それじゃ、皆でジョシュアさんの荷物を運ぶ手伝いをしましょう。ブランカ、ウィンターも呼んできてくれる?男なんだから手伝わせなくちゃ」
「はい、分かりました」
ブランカは返事をすると、ウィンターを呼びに行った。
「さて、皆。荷物運びをしましょう」
「「「はい!」」」
ジャン、ジェフ、アネットは返事をし…何度も申し訳ないですと頭を下げるジョシュアさんと一緒に私達は荷運びを始めた―。
****
午後5時―
「本当にありがとうございました。でも、本当に素敵な部屋ですね。すっかり気に入りましたよ」
ジョシュアさんがすっかり片付いた部屋の窓から庭を眺めながら言う。他の皆はそれぞれの持ち場で仕事をしている。
「お気に召していただいて、光栄です」
私は頭を下げた。
「それで、ここの人達は全員シェアハウスの住人なのですか?」
「ええ、そうですけど正確に言えば従業員ですね。今の所シェアハウスにお客として入居して頂いている方はルイスという名の男性で、彼は郵便局に勤めています」
まぁ、実際ルイスは前世では私の子供だったので、お客と言うよりは家族と言う感覚のほうが強いけど。
「全員、若い方ですね。それで…ゲルダさんの夫はどなたですか?」
ジョシュアさんはとんでもない事を聞いてきた。
「え?!な、何を仰っているのですか?私は独身ですから」
尤もつい最近まではラファエルというクズ夫がいたけれども、そこは内緒にしておこう。
「え?そうだったのですか?てっきり夫婦でこのシェアハウスを運営されているのかと思っていましたよ」
ジョシュアさんは目を丸くして私を見た。
「いえいえ、とんでもありません。ところで…ジョシュアさんはどうなのですか?」
私はずっと彼が独身かどうか気になっていた。この際だからドサクサに紛れて尋ねてみよう。
「私ですか?私も独身です。仕事に夢中になっていたら、いつの間にかこんなおじさんになっていましたよ」
ハハハと爽やかな笑顔で答えるジョシュアさん。
「いえ、そんな!ジョシュアさんはとても素敵な方だと思います!」
思わず本音をぶちまけてしまった。
「そうですか?若い女性にそんな風に言って頂けると、年甲斐もなく照れますね」
ジョシュアさんは照れくさそうに笑いながら頭を掻いた。
私はその笑顔に密かに胸が高鳴るのを感じた―。
13
お気に入りに追加
3,486
あなたにおすすめの小説
【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。
気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。
私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。
母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。
父を断罪できるチャンスは今しかない。
「お父様は悪くないの!
お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!
だからお父様はお母様に毒をもったの!
お願いお父様を捕まえないで!」
私は声の限りに叫んでいた。
心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※タイトル変更しました。
旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
【完結】「財産目当てに子爵令嬢と白い結婚をした侯爵、散々虐めていた相手が子爵令嬢に化けた魔女だと分かり破滅する〜」
まほりろ
恋愛
【完結済み】
若き侯爵ビリーは子爵家の財産に目をつけた。侯爵は子爵家に圧力をかけ、子爵令嬢のエミリーを強引に娶(めと)った。
侯爵家に嫁いだエミリーは、侯爵家の使用人から冷たい目で見られ、酷い仕打ちを受ける。
侯爵家には居候の少女ローザがいて、当主のビリーと居候のローザは愛し合っていた。
使用人達にお金の力で二人の愛を引き裂いた悪女だと思われたエミリーは、使用人から酷い虐めを受ける。
侯爵も侯爵の母親も居候のローザも、エミリーに嫌がれせをして楽しんでいた。
侯爵家の人間は知らなかった、腐ったスープを食べさせ、バケツの水をかけ、ドレスを切り裂き、散々嫌がらせをした少女がエミリーに化けて侯爵家に嫁いできた世界最強の魔女だと言うことを……。
魔女が正体を明かすとき侯爵家は地獄と化す。
全26話、約25,000文字、完結済み。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
他サイトにもアップしてます。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
第15回恋愛小説大賞にエントリーしてます。よろしくお願いします。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
【完結】「冤罪で処刑された公爵令嬢はタイムリープする〜二度目の人生は殺(や)られる前に殺(や)ってやりますわ!」
まほりろ
恋愛
【完結しました】
アリシア・フォスターは第一王子の婚約者だった。
だが卒業パーティで第一王子とその仲間たちに冤罪をかけられ、弁解することも許されず、その場で斬り殺されてしまう。
気がつけば、アリシアは十歳の誕生日までタイムリープしていた。
「二度目の人生は|殺《や》られる前に|殺《や》ってやりますわ!」
アリシアはやり直す前の人生で、自分を殺した者たちへの復讐を誓う。
敵は第一王子のスタン、男爵令嬢のゲレ、義弟(いとこ)のルーウィー、騎士団長の息子のジェイ、宰相の息子のカスパーの五人。
アリシアは父親と信頼のおけるメイドを仲間につけ、一人づつ確実に報復していく。
前回の人生では出会うことのなかった隣国の第三皇子に好意を持たれ……。
☆
※ざまぁ有り(死ネタ有り)
※虫を潰すように、さくさく敵を抹殺していきます。
※ヒロインのパパは味方です。
※他サイトにも投稿しています。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※本編1〜14話。タイムリープしたヒロインが、タイムリープする前の人生で自分を殺した相手を、ぷちぷちと潰していく話です。
※番外編15〜26話。タイムリープする前の時間軸で、娘を殺された公爵が、娘を殺した相手を捻り潰していく話です。
2022年3月8日HOTランキング7位! ありがとうございます!
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
結婚相手の幼馴染に散々馬鹿にされたので離婚してもいいですか?
ヘロディア
恋愛
とある王国の王子様と結婚した主人公。
そこには、王子様の幼馴染を名乗る女性がいた。
彼女に追い詰められていく主人公。
果たしてその生活に耐えられるのだろうか。
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる