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第81話 ようこそ、シェアハウスへ

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「ようこそいらっしゃいました。ジョシュアさん!」

満面の笑みで私は扉を開けた。

「はい、本日からよろしくお願いしま…す…?」

ジョシュアさんは若干引き気味で挨拶してきた。恐らく全員で彼を出迎えたからなのかもしれない。

「この方がジョシュアさんですか…」

アネットが興味深げに見つめている。

「確かに、素敵な方ですね…納得です」

ちょっと!ブランカッ!ジョシュアさんに聞かれてしまうでしょうっ?!
私は慌ててジョシュアさんに声を掛けた。

「ど、どうぞ中へお入り下さい。あの、お荷物を運びますから。どちらにありますか?」

するとジョシュアさんが背後を振り返った。

「荷物ならあの馬車に積んできたんです」

見ると、そこに1頭の馬に繋がれた荷馬車があった。

「あの馬車と馬は私の物なんですよ。商売がら品物を仕入れたり、売りに行く事もあるので所有しているんです。今迄住んでいた所では馬車を置いておく場所が無かったので、辻馬車のオーナーに頼んで馬と馬車を預かって貰っていたのです。それで…この屋敷に置かせて頂けないでしょうか?料金も別にお支払い致しますので」

ジョシュアさんが申し訳無さげに言う。

「ええ、こちらは少しも構いませんよ。確か屋敷の裏手には厩舎もありますので」

「本当ですか?ありがとうございます!」

ジョシュアさんが嬉しそうに言った。

「それじゃ、皆でジョシュアさんの荷物を運ぶ手伝いをしましょう。ブランカ、ウィンターも呼んできてくれる?男なんだから手伝わせなくちゃ」

「はい、分かりました」

ブランカは返事をすると、ウィンターを呼びに行った。

「さて、皆。荷物運びをしましょう」

「「「はい!」」」

ジャン、ジェフ、アネットは返事をし…何度も申し訳ないですと頭を下げるジョシュアさんと一緒に私達は荷運びを始めた―。



****

 午後5時―


「本当にありがとうございました。でも、本当に素敵な部屋ですね。すっかり気に入りましたよ」

ジョシュアさんがすっかり片付いた部屋の窓から庭を眺めながら言う。他の皆はそれぞれの持ち場で仕事をしている。

「お気に召していただいて、光栄です」

私は頭を下げた。

「それで、ここの人達は全員シェアハウスの住人なのですか?」

「ええ、そうですけど正確に言えば従業員ですね。今の所シェアハウスにお客として入居して頂いている方はルイスという名の男性で、彼は郵便局に勤めています」

まぁ、実際ルイスは前世では私の子供だったので、お客と言うよりは家族と言う感覚のほうが強いけど。

「全員、若い方ですね。それで…ゲルダさんの夫はどなたですか?」

ジョシュアさんはとんでもない事を聞いてきた。

「え?!な、何を仰っているのですか?私は独身ですから」

尤もつい最近まではラファエルというクズ夫がいたけれども、そこは内緒にしておこう。

「え?そうだったのですか?てっきり夫婦でこのシェアハウスを運営されているのかと思っていましたよ」

ジョシュアさんは目を丸くして私を見た。

「いえいえ、とんでもありません。ところで…ジョシュアさんはどうなのですか?」

私はずっと彼が独身かどうか気になっていた。この際だからドサクサに紛れて尋ねてみよう。

「私ですか?私も独身です。仕事に夢中になっていたら、いつの間にかこんなおじさんになっていましたよ」

ハハハと爽やかな笑顔で答えるジョシュアさん。

「いえ、そんな!ジョシュアさんはとても素敵な方だと思います!」

思わず本音をぶちまけてしまった。

「そうですか?若い女性にそんな風に言って頂けると、年甲斐もなく照れますね」

ジョシュアさんは照れくさそうに笑いながら頭を掻いた。


私はその笑顔に密かに胸が高鳴るのを感じた―。
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