旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

第39話 衝撃の再会

　振り向くとそこに立っていたのは20代半ばと思しき男性だった。
え…？嘘でしょう…ま、まさか…。

「すみません、実は先程不動産屋にいた者なのですが…えっ？！」

その男性も私の顔を見てギョッとした顔を見せた。

「「ま、まさか…」」

私達は同時に声をあげる。

「俊也っ？！」

「母さんっ？！」

そう、お互いに外見は全く違ってしまっているけれども私と目の前の男性は一目見た瞬間に分ってしまった。私達は前世で母息子関係だったと言う事に―！


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「ちょっとっ俊也っ！あなたどうしちゃったのよ！何でこの世界にいるの？！ひょっとして私が死んだ後すぐに死んでしまったのっ？！」

私は俊也の両腕を掴むと言った。

「何言ってるんだよ！俺は87歳まで生きたよ。ひ孫だっていたんだからな？それより母さん、何であんな若さで死んでしまうんだよっ！いくら電話しても連絡が付かないから慌てて団地に様子を見に行ったら…ふ、布団の上でつ、冷たくなっていたんだから…な…？」

当時の事を思い出したのだろう。俊也の目に見る見るうちに涙がたまる。

「あ～ごめんね…。あの当時は頭痛が頻繁にあるとは思っていたんだけどね…ひょっとするとそれが原因…うん？ちょっと待って。ねぇ俊也。私の死因は結局何だったの？」

「母さんの死因は脳梗塞だったんだよ。でも…体調が悪いなら、何故俺に相談してくれなかったんだよ…たった2人きりの家族なのに…」

俊也は眼をゴシゴシ擦ると言った。

「うん、ごめんね…。何しろ俊也は結婚したばかりだったから心配かけさせたくなかったんだよね」

言いながら背の高い、俊也の頭を撫でながら言う。うん、やっぱり我が子。なんていい子なのだろう。

「それにしても不思議なものよね…私も俊也も死んだ時期は全く別なのに、お互いにこの世界で、しかも2人共年齢がこんなに近いんだもの…。おまけに2人共外見が全く違っているのに、一目で前世では親子だったことが分ってしまうんだものね」

「うん。そうだね。確かに不思議だよ。ところで母さんはいつ前世の記憶を思い出したの？」

「私？私はねぇ、本当につい最近だったのよ。ある日目覚めたら自分の前世を思い出したのよ」

すると俊也が驚いたように言った。

「えっ！そうなの？！俺なんか、赤ん坊の頃から前世の記憶があったんだよ？だから中々この世界に慣れなくて…。前世の記憶が強すぎるんだよ…」

俊也は頭をポリポリかきながら言う。

「そう…苦労したのね…。」

「だから驚いたんだよ。さっき、実は僕も母さんが不動産屋で話をしている時、客としてあの店に来ていたんだよ。そしたら会話の中で『シェアハウス』なんて名前が出て来たから、驚いてしまって思わず声を掛けたんだ」

「成程…確かにこの世界には『シェアハウス』なんて存在していない物ね」

すると突然俊也が頭を下げて来た。

「母さん！頼むっ！実は俺、住む処を探していたんだ。母さんは『シェアハウス』を始めるんだろう？俺を入居させてくれないかっ？！お金なら勿論支払うから！」

私に必死になって頭を下げる俊也。

「何言ってるの？かつての我が子が頭を下げて頼んでいるのに、断る親がいると思っているの？勿論歓迎するわよ」

「本当かい？助かるよ。ありがとう！」

嬉しそうに笑みを浮かべる俊也。となると、お互い尋ねる事は決まっている。

「「ところで…今の名前、何て言うの？」」

私達は声を揃えて、お互いの現在の名前を質問しあった―。