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第25話 クズ男確定の瞬間

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「な、何だって?!今…お前何と言ったっ?!」

ラファエルは目をひん剥き、私を見た。

「ええ、良いですよ。何度でも言って差し上げましょう。離縁させて頂きます!今すぐっ!」

ラファエルに離婚届を押し付けた。すると一斉にラファエルに群がる3人。

「な、何と!信じられん…!本当に離婚届だ!」

「本当だわ…!何かの冗談かと思ったけど…!」

義父と義母が交互に声を上げる。

「う、嘘だろう…?」

ラファエルは顔面蒼白で離婚届を手にして震えている。義父も義母もラファエルも青ざめているのに、ただ1人喜んでいるのは他でもないアネットだった。

「まぁ、ようやくゲルダさんはラファエルと離婚する気になったのね。まぁ当然だわ。ラファエルには私という恋人がいるのだから…ねぇラファエル」

アネットはラファエルに腕を絡めようとして…振り払われた。

「キャアッ!!」

腕をつかみ損なったアネットはそのまま無様に顔面から倒れ込む。

ベチンッ!!

…今、物凄い音がしたけど大丈夫だろうか…?

しかし、あろう事かアネットが床に顔面から倒れ込んで起き上がれないにも関わらず、義母や義父、ラファエルは何やら円陣?を組んでコソコソと話し合いをしている。仕方がない…。

「ねぇ…大丈夫?」

床に倒れたままピクピク震えているアネットに声を掛けた。

「い…」

するとアネットが声を発した。

「い?」

「痛いッ!い~た~い~ッ!!」

余程痛かったのだろう、顔面を押さえながらゆっくり起き上がったアネットは鼻血を垂らしてボロボロ泣いている。

「た、大変!鼻血が出てるじゃないのっ!」

私はアネットの鼻に手持ちのハンカチを当てると言った。

「いい?小鼻をしっかりつかんで下を向いているのよ?分かった?」

するとアネットはグズグズ泣きながら無言でうなずく。それにしてもラファエルめ…アネットを怪我させておいて無視するとは。

「ちょっとっ!アネットが鼻血出したのに何やってるのよ!」

3人に向かって怒鳴りつけると、一斉に彼等はこちらを振り向くと言った。

「うるさいっ!アネットなど、どうだっていい!」

義父が怒鳴った。

「ええ、そうよ。今一番肝心なことはお前が何故離婚届を突きつけて来たかということ。まさか本気じゃないでしょうね?」

義母が若干すがりつくような目で私を見ている。

「ああ、そうだ。お前は俺の顔を1日1回は拝まないと、死んでしまいそうだと言っていたじゃないか?いいのか?そんな離婚なんて強がり言って。お前が俺の存在無しで生きていられるはずないだろう?」

ラファエルの猫なで声の言葉にゾゾゾッと鳥肌が立つ。

「そんな事よりも、旦那様っ!アネットに怪我させたのだから彼女に謝って下さい!」

私の言葉にラファエルは鼻血で涙目になっているアネットをチラリと一瞥しただけで再び私を見た。

「別に見た所大した怪我ではなさそうじゃないか?そんな事よりも今一番大事なことはゲルダッ!お前の離婚届についてだ!」

アネットはその言葉に鼻を押さえながらラファエルにくってかかった。

「ひろい!わらひをほんなへにあはせておひへ…!!」

なる程。きっとアネットはこう言ってるのだろう。

【ひどい!私をこんな目に遭わせておいて…!!】

するとラファエルが喚いた。

「うるさい!今忙しいんだ!後にしてくれ!」

こ、こいつ…典型的なDV男だっ!クズ確定だっ!

「ひろいっ!もうひららいっ!」

【酷い!もう知らないっ!】

アネットは部屋を飛び出していった。…鼻血止まったのだろうか?

「ふぅ…やっと部外者が去ったわね」

「ああ。これで落ち着いて話が出来る」

義父と義母が交互に言う。

「アネットは放っておけばいいさ。どうせ何されようが俺から離れられないのだから」

ラファエルの言葉に私はピクリと反応した。

「…は?旦那様…今、何と言ったのでしょう?」

「どうせ何されようが俺から離れられないと言ったのだが?お前だってそうだろう?離婚する気もないのに俺の気を引こうとして離婚届を持ってきただけだろう?」

ラファエルのあまりのナルシストぶりに思わず絶句してしまった。

「なるほど、そうだったのか?」

「ホホホホ…それなら納得したわ。そうよね?ラファエルにべた惚れのゲルダが離婚出来るはずないもの」

怒りを押さえながら私は言った。

「いえ、本気ですよ。こんな話冗談で出来るはずないでしょう?早く離婚届にサインをしなさいよ」

「な、何だって…?本気で俺と離婚する気なのか?」

「駄目だぞ、絶対にサインはするなよ?」」

「ええ、そうよ。ここで離婚しようものなら金づるがいなくなってしまうわ。」

「ああ、絶対に俺は離婚はしないぞ?大体結婚した時に交わした誓約書には、こちらの要求は一切飲むと記載してあっただろう?お前に愛は全く無いが、お前の実家の金は魅力的だからな」

ノイマン家の面々は私が想像した通りの台詞を吐いた。

「そうですか…やはりあなた方は救いようの無いくらいお馬鹿だったのですね…」

大袈裟にため息をついて肩をすくめた。

「な、何だ…?その馬鹿にしたような態度は!」

義父がまたしても私を指差してきた。

「これが結婚時に交わした誓約書ですけどね…ほら、一番下に書かれてある文章を御覧ください」


私はテーブルの上に置いておいた誓約書を手に取るとよく見えるように3人の前に差し出した。

「ほら、一番下の最後から3行目…小さな文字で記述されていますよね?」

「「「え…?」」」

義父と義母、ラファエルは私が教えた場所の文章を読み…顔面蒼白になった―。





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