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第17話 金の亡者共
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「オ…」
義母の言葉に首を傾げる。オ?一体どうしたのだろう。すると…
「オーホッホッホッホッホッ…!!」
義母が突然高笑いした。大変だ!ついにイカれてしまたったのか?
「お、おい!どうしたんだ!」
「母さん!しっかり!」
「キャアッ!お、おばさま!」
高笑いが止まらない義母を3人が囲んで大騒ぎしている。そして未だに笑いが止まらない義母を前に義父がギラリと私を睨みつけると言った。
「おい!ゲルダッ!お前のせいで妻がおかしくなった!責任を取れっ!慰謝料だ!慰謝料5億シリルを請求するぞ!」
言ってることがメチャクチャだ。
「は?何故私がそんな物支払わなくちゃならないのです?」
「オーホッホッホッホッホッ…!!」
義母のけたたましい笑い声は止まらない。耳障りでしょうがない。
「母さん!気を確かに!」
「ええ、おばさま!正気に戻って下さい!」
「ゲルダ!早く慰謝料をよこせ!」
甲高い笑い声に3人の叫び声が部屋の中に響き渡る。うるさくてたまらない。気づけばジェフはとっくにいなくなっている。…恐らく恐怖のあまり逃げたのだろう。
もう我慢の限界だ。机の上に置いておいた読みかけの新聞をくるくる丸めて筒状にすると、口を当てて思い切り怒鳴った。
「うるさーいっ!!」
すると…ピタリと3人は静かになった。何とあの狂ったように笑っていた義母までも。そして義母は私をビシッと指差すと言った。
「笑わせないで頂戴!ゲルダッ!!」
あ…何だ。別に義母は頭がおかしくなったわけでは無かったのか?
「お、おい?お前…平気なのか?」
「母さん、頭が狂ったわけじゃなかったんだね?」
「おばさま…心配掛けさせないで下さい」
義母を囲んで語りかける3人を尻目に私はボストンバッグに重要書類を詰め込んでいるとラファエルが声を掛けてきた。
「おい?ゲルダ。お前、本気で今から出掛けるつもりなのか?!」
「ええ、そうですよ。だから早く出て行って下さい」
ボストンバッグの蓋をパチンパチンと止めながらラファエルの顔も見ずに返事をする。
「待て!勝手に行かせないぞ!」
義父が睨みつけてきた。
「ええ、そうよ!お前がお金を置いていくまでは出ていくものですか!」
義母は腰に両腕を当てて私を見ている。
「分かりましたよ…置いていけばいいんでしょう?」
全く、はた迷惑な…。この3人、まるで子供だ。駄々っ子と何ら変わりない。唯一黙っているアネットがまともに見えてくるほどだ。こんな奴らに本来ならビタ一文払ってやりたくはないが、お金を渡さなければ梃子でも動かなそうだ。しかし…お金を置いていけと言われても、ノイマン家の現在の銀行口座の預貯金はゼロ。彼等は金遣いが荒いから私はあまり屋敷に現金を置かないようにしていたのだ。
「あ、そうだ」
思い出した。
お金ならあるじゃないの。
私はおもむろにポケットから小銭入れを取り出し、パチンとがま口を開くとテーブルの上にジャラジャラと無造作にお金を置いた。
「…何だ?これは…?」
義父がテーブルの上に置かれた小銭を見て忌々しげに言う。
「見て分かりませんか?お金ですよ。え~と…全部で4852シリルあります。どうぞ受け取って下さい」
どうよ?お金は置いたのだから文句はないでしょう?私は呆気に取られている4人をグルリと見渡した。
「は?ふざけないで頂戴!こんなはした金、お金のうちに入らないのよ!」
一度も働いたことがないくせに、何とも罰当たりな台詞を言う義母に苛立ちが募る。
「ああ!そうだ!たったこれっぽっちで何が出来るというのだ!」
「おい、ゲルダ。冗談はその顔だけにしておけ」
ラファエルはどさくさに紛れて失礼なことを言う。
「あ…そうですか。ならどうぞこのままここにいてください。私は出ていきますから。」
「「「は…?」」」
3人の声が見事にハモる。そうだ、彼等が出ていかないのならこの部屋に残して私がさっさと出ていけばいいのだ。部屋にある重要書類は全て手持ちのバッグの中に入っているし、アクセサリーの入った金庫も隠してある。鍵は私が持っているので決して彼等に見つかることは無いだろう。
呆気にとられている彼等の前を素通りしようとすると、我に返ったラファエルが呼び止めてきた。
「おい?何処へ行く気だ?やはり頭がイカれてしまったんだな?こんな夜更けに外に出ていこうとするなんて…。これでも俺はお前の夫だからな?とにかく落ち着け、落ち着くんだ。今のお前は頭が一時的におかしくなっているだけなんだ。深呼吸でもして落ち着けば絶対に金の在処を思い出せるはずだ」
落ち着けを連呼するラファエル。いや、むしろ落ち着くのは自分の方ではないだろうか?
「そうだ、ゲルダ。落ち着いて金の在処を思い出せ」
阿呆義父までクズ息子と似たような事を言う。
「そうよ!だったら…こっちは所在場所を知っておく必要があるわ。ゲルダ!何処へ行くのか正直に言いなさい!」
義母は眉間にシワを寄せてこちらを睨みつけている。
「分かりましたよ…実家です。お金の相談で実家へ行くんですよ」
そう、ノイマン家に今後のお金の援助を止めてもらう為にね…!
すると…。
「何だ?そうだったのか?だったら初めからそう言えばよかったのだ」
急に手の平を返したかのような態度を取る義父。
「まぁ、そうだったのね?引き止めて悪かったわ。だったらさっさと行かないと」
義母はとたんに笑顔になる。
「よし、ならお前の為に一頭建ての馬車を出してやろう。あの馬車なら実家までの距離も快適に乗れるはずだからな?すぐに伝えてきてやる!」
ラファエルは笑顔で部屋を飛び出して行った。
「ゲルダさん、実家の方々に宜しく伝えてくださいね?」
アネットまで媚を売ってくるなんて…!
「…分かりました。それでは私は出かけてきますけど…」
そして義父、義母、アネットを順に見渡すと言った。
「さっさとこの部屋からお引取り下さい」
私不在の部屋に長居されるのは正直気分が悪い。
「ああ、分かった。すぐに出ていこう。そうだ、援助金の話だが…少し増額を検討するよう伝えておいてくれ」
「ええ、そうね。最近物価が高くなってきたからねぇ…」
義母はわざと困った素振りで言う。そしてアネットはニコニコしながら頷いている。
本当におめでたい奴らだ。実家には援助金の打ち切りを伝えに行くのに…。でもそこは当然内緒だ。
「では、いますぐ出ていって下さい」
私が言うと、3人は大人しく部屋を出ていった。そんな彼等の後ろ姿を見届けると私はジェフを呼んだ。
「ジェフ」
「はい、ゲルダ様」
音もなく現れたジェフに私は言った。
「私がこの部屋を出たら、誰も入ることが出来ないように鍵を掛けておいて頂戴」
「ええ、分かりました」
にっこり笑みを浮かべるジェフ。
「それじゃ、実家に行ってくるわね。後の事はよろしく」
「はい、行ってらっしゃいませ」
こうして私はジェフに見守られながら部屋を出た。
時刻はもうすぐ23時になろうとしている頃の出来事だった―。
義母の言葉に首を傾げる。オ?一体どうしたのだろう。すると…
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「母さん!気を確かに!」
「ええ、おばさま!正気に戻って下さい!」
「ゲルダ!早く慰謝料をよこせ!」
甲高い笑い声に3人の叫び声が部屋の中に響き渡る。うるさくてたまらない。気づけばジェフはとっくにいなくなっている。…恐らく恐怖のあまり逃げたのだろう。
もう我慢の限界だ。机の上に置いておいた読みかけの新聞をくるくる丸めて筒状にすると、口を当てて思い切り怒鳴った。
「うるさーいっ!!」
すると…ピタリと3人は静かになった。何とあの狂ったように笑っていた義母までも。そして義母は私をビシッと指差すと言った。
「笑わせないで頂戴!ゲルダッ!!」
あ…何だ。別に義母は頭がおかしくなったわけでは無かったのか?
「お、おい?お前…平気なのか?」
「母さん、頭が狂ったわけじゃなかったんだね?」
「おばさま…心配掛けさせないで下さい」
義母を囲んで語りかける3人を尻目に私はボストンバッグに重要書類を詰め込んでいるとラファエルが声を掛けてきた。
「おい?ゲルダ。お前、本気で今から出掛けるつもりなのか?!」
「ええ、そうですよ。だから早く出て行って下さい」
ボストンバッグの蓋をパチンパチンと止めながらラファエルの顔も見ずに返事をする。
「待て!勝手に行かせないぞ!」
義父が睨みつけてきた。
「ええ、そうよ!お前がお金を置いていくまでは出ていくものですか!」
義母は腰に両腕を当てて私を見ている。
「分かりましたよ…置いていけばいいんでしょう?」
全く、はた迷惑な…。この3人、まるで子供だ。駄々っ子と何ら変わりない。唯一黙っているアネットがまともに見えてくるほどだ。こんな奴らに本来ならビタ一文払ってやりたくはないが、お金を渡さなければ梃子でも動かなそうだ。しかし…お金を置いていけと言われても、ノイマン家の現在の銀行口座の預貯金はゼロ。彼等は金遣いが荒いから私はあまり屋敷に現金を置かないようにしていたのだ。
「あ、そうだ」
思い出した。
お金ならあるじゃないの。
私はおもむろにポケットから小銭入れを取り出し、パチンとがま口を開くとテーブルの上にジャラジャラと無造作にお金を置いた。
「…何だ?これは…?」
義父がテーブルの上に置かれた小銭を見て忌々しげに言う。
「見て分かりませんか?お金ですよ。え~と…全部で4852シリルあります。どうぞ受け取って下さい」
どうよ?お金は置いたのだから文句はないでしょう?私は呆気に取られている4人をグルリと見渡した。
「は?ふざけないで頂戴!こんなはした金、お金のうちに入らないのよ!」
一度も働いたことがないくせに、何とも罰当たりな台詞を言う義母に苛立ちが募る。
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ラファエルはどさくさに紛れて失礼なことを言う。
「あ…そうですか。ならどうぞこのままここにいてください。私は出ていきますから。」
「「「は…?」」」
3人の声が見事にハモる。そうだ、彼等が出ていかないのならこの部屋に残して私がさっさと出ていけばいいのだ。部屋にある重要書類は全て手持ちのバッグの中に入っているし、アクセサリーの入った金庫も隠してある。鍵は私が持っているので決して彼等に見つかることは無いだろう。
呆気にとられている彼等の前を素通りしようとすると、我に返ったラファエルが呼び止めてきた。
「おい?何処へ行く気だ?やはり頭がイカれてしまったんだな?こんな夜更けに外に出ていこうとするなんて…。これでも俺はお前の夫だからな?とにかく落ち着け、落ち着くんだ。今のお前は頭が一時的におかしくなっているだけなんだ。深呼吸でもして落ち着けば絶対に金の在処を思い出せるはずだ」
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「そうだ、ゲルダ。落ち着いて金の在処を思い出せ」
阿呆義父までクズ息子と似たような事を言う。
「そうよ!だったら…こっちは所在場所を知っておく必要があるわ。ゲルダ!何処へ行くのか正直に言いなさい!」
義母は眉間にシワを寄せてこちらを睨みつけている。
「分かりましたよ…実家です。お金の相談で実家へ行くんですよ」
そう、ノイマン家に今後のお金の援助を止めてもらう為にね…!
すると…。
「何だ?そうだったのか?だったら初めからそう言えばよかったのだ」
急に手の平を返したかのような態度を取る義父。
「まぁ、そうだったのね?引き止めて悪かったわ。だったらさっさと行かないと」
義母はとたんに笑顔になる。
「よし、ならお前の為に一頭建ての馬車を出してやろう。あの馬車なら実家までの距離も快適に乗れるはずだからな?すぐに伝えてきてやる!」
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「…分かりました。それでは私は出かけてきますけど…」
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