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第9章 2 告白と抱擁
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「まあ!アドニス・・・。良かった・・・まさかこんなところで偶然貴方に会えるなんて・・・。あなた方の隠れ家の場所も分からなかったし、行く当ても無かったのでしばらくの間教会に身を寄せようかと思っていたのだけれど・・。」
安堵の溜息をつきながら私はアドニスを見た。
「アイリス様・・・お疲れでしょう?まずは隠れ家へご案内致します。実はここから5分程行った先に新しい隠れ家を用意してあるのです。そちらへ参りましょう。オスカー様もユリアナもすでにそこにおります。」
「え・・・オスカー様とユリアナが・・?良かった・・・無事だったのね・・。」
「ええ、ではすぐに参りましょう。」
こうして私はアドニスの案内の元、新しい隠れ家へと向かった。
「え・・・?ここが・・新しい隠れ家なのですか?」
私は案内された隠れ家を見上げると尋ねた。
「はい、こちらがそうです。」
そこは至って普通のレンガ造りの2階建ての家と呼ぶには大きい屋敷であった。
「ここが・・・新しい隠れ家・・・。」
私はあまりにもいたって普通のつくりの屋敷に驚いていた。するとアドニスが言った。
「ここは自由都市『リーベルタース』です。王宮の力の及ばぬ都市なのでいくら王族といえどもむやみに手出しが出来ない・・・素晴らしい都市です。その為、かえってこのような普通の屋敷の方が、隠れ家としては向いている。とシモン様が仰っておりました。」
「そう、シモンが・・・。」
「では、中へ入りましょう。」
「え?ええ・・・。」
アドニスがドアを開けてくれたので、私は緊張する面持ちで屋敷の中へと足を踏み入れた。
ドアを開けて中へ入るとすぐ目の前に階段があり、左右に廊下が続いている。その左側で何やら人の話し声が聞こえてきた。
「ああ・・どうやら皆さん集まっているようですね。」
背後に立っていたアドニスが私の前に進み出ると、振り返った。
「では参りましょう。アイリス様。」
「はい・・。」
私はアドニスの後に続いた。
「こちらの部屋のようですね。」
そしてアドニスはドアをノックした。
コンコン
「誰だ?」
「私です、アドニスです。アイリス様を発見してお連れしました。」
すると―。
「何?!アイリスだって?!」
バタバタと足音が聞こえ、私の目の前にオスカーが姿を見せた。そしてオスカーの背後にはシモンとアルマンゾにユリアナもいた。
「ア・・・アイリス・・・。」
オスカーは震えながら両手で私の顔に触れてくる。
「オスカー様・・・。」
次の瞬間、私はオスカーの腕の中にいた―。
「アイリス・・・良かった・・本当に・・・。また会えて・・・!」
オスカーは身体を震わせて、私を強く抱きしめてくる。そしてそんな私たちに気を使ったのか、シモン達がそっと部屋の外へ出て行く姿を私は見た。
「オスカー様も・・・ご無事で本当に何よりでした。」
私はそっとオスカーの背中に両手を回すと、オスカーの思考が流れ込んでくる。
《 アイリス・・。もう二度と会えないんじゃないかと思うと生きた心地がしなかった。やはり俺はもうアイリス無しでは・・・生きていけないくらい、お前の事を・・愛してる・・。俺は・・もう王位を剥奪された身分だが・・それでも俺の事をお前は受けいれてくれるだろうか・・? 》
そしてオスカーは私を抱きしめたまま耳元で囁く様に言った。
「アイリス・・・俺はお前が好きだ。愛してる・・・。」
「え・・・?」
初めて・・オスカーの口から『愛してる』と言う言葉を貰えた。途端に私の心の中は温かい感情に満たされる。今なら・・私も自分の心に正直になれる。
「私も・・オスカー様の事が好きです。・・・愛しています。」
「!」
オスカーの体がびくりと震え・・次の瞬間。
私はオスカーに口付けされていた―。
安堵の溜息をつきながら私はアドニスを見た。
「アイリス様・・・お疲れでしょう?まずは隠れ家へご案内致します。実はここから5分程行った先に新しい隠れ家を用意してあるのです。そちらへ参りましょう。オスカー様もユリアナもすでにそこにおります。」
「え・・・オスカー様とユリアナが・・?良かった・・・無事だったのね・・。」
「ええ、ではすぐに参りましょう。」
こうして私はアドニスの案内の元、新しい隠れ家へと向かった。
「え・・・?ここが・・新しい隠れ家なのですか?」
私は案内された隠れ家を見上げると尋ねた。
「はい、こちらがそうです。」
そこは至って普通のレンガ造りの2階建ての家と呼ぶには大きい屋敷であった。
「ここが・・・新しい隠れ家・・・。」
私はあまりにもいたって普通のつくりの屋敷に驚いていた。するとアドニスが言った。
「ここは自由都市『リーベルタース』です。王宮の力の及ばぬ都市なのでいくら王族といえどもむやみに手出しが出来ない・・・素晴らしい都市です。その為、かえってこのような普通の屋敷の方が、隠れ家としては向いている。とシモン様が仰っておりました。」
「そう、シモンが・・・。」
「では、中へ入りましょう。」
「え?ええ・・・。」
アドニスがドアを開けてくれたので、私は緊張する面持ちで屋敷の中へと足を踏み入れた。
ドアを開けて中へ入るとすぐ目の前に階段があり、左右に廊下が続いている。その左側で何やら人の話し声が聞こえてきた。
「ああ・・どうやら皆さん集まっているようですね。」
背後に立っていたアドニスが私の前に進み出ると、振り返った。
「では参りましょう。アイリス様。」
「はい・・。」
私はアドニスの後に続いた。
「こちらの部屋のようですね。」
そしてアドニスはドアをノックした。
コンコン
「誰だ?」
「私です、アドニスです。アイリス様を発見してお連れしました。」
すると―。
「何?!アイリスだって?!」
バタバタと足音が聞こえ、私の目の前にオスカーが姿を見せた。そしてオスカーの背後にはシモンとアルマンゾにユリアナもいた。
「ア・・・アイリス・・・。」
オスカーは震えながら両手で私の顔に触れてくる。
「オスカー様・・・。」
次の瞬間、私はオスカーの腕の中にいた―。
「アイリス・・・良かった・・本当に・・・。また会えて・・・!」
オスカーは身体を震わせて、私を強く抱きしめてくる。そしてそんな私たちに気を使ったのか、シモン達がそっと部屋の外へ出て行く姿を私は見た。
「オスカー様も・・・ご無事で本当に何よりでした。」
私はそっとオスカーの背中に両手を回すと、オスカーの思考が流れ込んでくる。
《 アイリス・・。もう二度と会えないんじゃないかと思うと生きた心地がしなかった。やはり俺はもうアイリス無しでは・・・生きていけないくらい、お前の事を・・愛してる・・。俺は・・もう王位を剥奪された身分だが・・それでも俺の事をお前は受けいれてくれるだろうか・・? 》
そしてオスカーは私を抱きしめたまま耳元で囁く様に言った。
「アイリス・・・俺はお前が好きだ。愛してる・・・。」
「え・・・?」
初めて・・オスカーの口から『愛してる』と言う言葉を貰えた。途端に私の心の中は温かい感情に満たされる。今なら・・私も自分の心に正直になれる。
「私も・・オスカー様の事が好きです。・・・愛しています。」
「!」
オスカーの体がびくりと震え・・次の瞬間。
私はオスカーに口付けされていた―。
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