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第6章 13 消えたオスカー
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救護室の前に着くと、私は深呼吸した。どうか・・出来ればまだオスカーが眠っていますように・・。そう祈りつつ、ドアを開けた。
「え・・・?」
中へ入って驚いた。オスカーが眠っていたはずのベッドにはその姿がない。窓は閉じられ、部屋の中を見渡してもオスカーの姿はどこにも見当たらない。
「どこへ行ったのかしら・・・?」
あんな酷い怪我をしていたのに、とても1人では歩けないくらいの深い傷だったのに・・。その時、私の脳裏に嫌な予感がした。まさかウィンザード家の手の者に誘拐されてしまったのだろうか?
「オスカー様っ?!」
半分悲鳴交じりの声をあげて、私は救護室を飛び出した。オスカーがどこへ行ったのか手がかりが全くないまま私はエントランスへ向かって走った。
扉を開けて外へ飛び出したとした時、突然背後から呼び止められた。
「アイリス様っ!どちらへ行かれるのですかっ?!」
振り向くとそこに立っていたのはこの屋敷の騎士団長だった。
「あ・・私は・・・。」
何と答えればよいか迷っていると、騎士団長が口を開いた。
「まさか・・オスカー様を探しに行かれるおつもりですか?」
「え・・?その言い方・・まるで貴方は彼がこの屋敷からいなくなったことを知っているような口ぶりじゃない・・・。」
私は衛兵をじっと見つめた。
「ええ・・知ってるも何も・・・眠っていたオスカー様を起こして、私が出て行って頂くようお願いしたからです。」
「え・・?何ですって・・?」
私は耳を疑った。
「ま、まさか・・・貴方はウィンザード家の・・王族であるオスカー様を追い出したと言うの・・?」
声を震わせて尋ねた。
「はい、命令でしたか。それに・・・アイリス様。勘違いしないで頂けますか?」
「勘違い・・?」
「もうオスカー様はウィンザード家の地位を剥奪され、今や指名手配されている身分なのですよ?」
「ま、まさか・・・その事をオスカー様に・・・?」
「はい。勿論伝えました。恐らく・・・ご存じなかったのでしょうね。顔が真っ青になっておられましたから。そしてオスカー様を庇った者は逆賊として囚われる話も勿論致しました。」
私は彼の言葉に衝撃を受けてしまった。
「あ、貴方は酷い怪我を負ったオスカー様に・・そんな事を告げたのですかっ?!」
思わず避難交じりの声を上げる。
「アイリス様、良いですか?陛下はオスカー様を庇うと逆賊として捕らえると言ってきているのですよ?我々がオスカー様をかくまっている事が知られて、ウィンザード家の兵士がこの都市に攻め入ってきたらどうなるとお思いですか?たちまちここは戦場と化し、『リオス』の人々は戦火に見舞われてしまうかもしれないのですよ?王級の兵力とイリヤ家の兵力とでは雲泥の差があるのはご存じですよね?」
「!そ、それは・・・っ!」
私はその言葉に何一つ反論する事が出来なかった。だけど・・・!オスカーの身体を巻いている包帯にはうっすらと血が滲んでいた。顔にはあざが出来き、あちこち鬱血した後が酷く痛々しかった。あんな身体で放り出されるなんて・・・!
「・・・。」
私は再び背を向けて駆けだそうとした時、再び騎士団長が声を掛けてきた。
「お待ちくださいっ!アイリス様っ!」
私は足を止めて背を向けたまま言った。
「ごめんなさい・・・。私は・・・何があっても自分からオスカー様からは離れないと・・約束したの。彼は・・私を命がけで助けてくれた人。そんな彼を・・見捨てる事は出来ません。・・ごめんなさい・・。」
それだけ言うと私は駆けだした。
「アイリス様っ!」
背後で私の名を呼ぶ騎士団長の声を聞きながら―。
「え・・・?」
中へ入って驚いた。オスカーが眠っていたはずのベッドにはその姿がない。窓は閉じられ、部屋の中を見渡してもオスカーの姿はどこにも見当たらない。
「どこへ行ったのかしら・・・?」
あんな酷い怪我をしていたのに、とても1人では歩けないくらいの深い傷だったのに・・。その時、私の脳裏に嫌な予感がした。まさかウィンザード家の手の者に誘拐されてしまったのだろうか?
「オスカー様っ?!」
半分悲鳴交じりの声をあげて、私は救護室を飛び出した。オスカーがどこへ行ったのか手がかりが全くないまま私はエントランスへ向かって走った。
扉を開けて外へ飛び出したとした時、突然背後から呼び止められた。
「アイリス様っ!どちらへ行かれるのですかっ?!」
振り向くとそこに立っていたのはこの屋敷の騎士団長だった。
「あ・・私は・・・。」
何と答えればよいか迷っていると、騎士団長が口を開いた。
「まさか・・オスカー様を探しに行かれるおつもりですか?」
「え・・?その言い方・・まるで貴方は彼がこの屋敷からいなくなったことを知っているような口ぶりじゃない・・・。」
私は衛兵をじっと見つめた。
「ええ・・知ってるも何も・・・眠っていたオスカー様を起こして、私が出て行って頂くようお願いしたからです。」
「え・・?何ですって・・?」
私は耳を疑った。
「ま、まさか・・・貴方はウィンザード家の・・王族であるオスカー様を追い出したと言うの・・?」
声を震わせて尋ねた。
「はい、命令でしたか。それに・・・アイリス様。勘違いしないで頂けますか?」
「勘違い・・?」
「もうオスカー様はウィンザード家の地位を剥奪され、今や指名手配されている身分なのですよ?」
「ま、まさか・・・その事をオスカー様に・・・?」
「はい。勿論伝えました。恐らく・・・ご存じなかったのでしょうね。顔が真っ青になっておられましたから。そしてオスカー様を庇った者は逆賊として囚われる話も勿論致しました。」
私は彼の言葉に衝撃を受けてしまった。
「あ、貴方は酷い怪我を負ったオスカー様に・・そんな事を告げたのですかっ?!」
思わず避難交じりの声を上げる。
「アイリス様、良いですか?陛下はオスカー様を庇うと逆賊として捕らえると言ってきているのですよ?我々がオスカー様をかくまっている事が知られて、ウィンザード家の兵士がこの都市に攻め入ってきたらどうなるとお思いですか?たちまちここは戦場と化し、『リオス』の人々は戦火に見舞われてしまうかもしれないのですよ?王級の兵力とイリヤ家の兵力とでは雲泥の差があるのはご存じですよね?」
「!そ、それは・・・っ!」
私はその言葉に何一つ反論する事が出来なかった。だけど・・・!オスカーの身体を巻いている包帯にはうっすらと血が滲んでいた。顔にはあざが出来き、あちこち鬱血した後が酷く痛々しかった。あんな身体で放り出されるなんて・・・!
「・・・。」
私は再び背を向けて駆けだそうとした時、再び騎士団長が声を掛けてきた。
「お待ちくださいっ!アイリス様っ!」
私は足を止めて背を向けたまま言った。
「ごめんなさい・・・。私は・・・何があっても自分からオスカー様からは離れないと・・約束したの。彼は・・私を命がけで助けてくれた人。そんな彼を・・見捨てる事は出来ません。・・ごめんなさい・・。」
それだけ言うと私は駆けだした。
「アイリス様っ!」
背後で私の名を呼ぶ騎士団長の声を聞きながら―。
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