73 / 152
第5章 13 引き継がれない記憶
しおりを挟む
「アイリス。何故俺の言う事を聞かなかった?」
オスカーの隣に座ると、早速尋ねてきた。
「申し訳ございません・・・・教室に戻った時に友人からまだレイフが教室に戻っていないと言う話を聞いて・・まさかあのまま中庭で倒れているのではと思い、様子をみに行ったのです。」
「俺はお前に言ったよな?今後はあの男とは2人きりでは会うなと?そんなに・・あの男の事が心配だったのか?お前はレイフの事が好きなのか?」
オスカーは私の左手をグッと握りしめてきた。
「・・・。」
何だろう、このやりとり・・これでは先ほどのレイフと同じやり取りだ。
「いえ、そう言う訳ではありません。レイフには特に恋愛感情を持ってはおりません。」
確かに子供の頃、私はレイフの事が好きだった。けれども・・・今は全く恋愛感情は持っていない。70年前の壮絶な経験が・・私のレイフに対する淡い恋心を消し去ったのだ。
「なら、あいつの事は放っておくべきだったんだ。大体・・何故あんな場所で倒れていた?」
オスカーはじっと私の顔を覗き込むように質問してくる。
「それが・・・中庭を覗いてみると・・レイフとタバサ様が・・ベンチに座っていて・・・。」
「まさか、それがショックで廊下で気を失って倒れたのか?」
「いいえ。そんな事はありません。ただあの直後に酷い眩暈に襲われて・・・それで廊下の壁に寄りかかってしゃがんだのですが・・・そのまま気を失ってしまったようです。」
「気付けばお前が教室から消えていた。だからひょっとすると中庭へ向かったのではと思って探しに行けば・・・お前が廊下で倒れていたんだ。だからすぐに馬車を呼んでお前をイリヤ家へ連れて帰って来たんだ。とにかく・・・二度と俺との約束を破るなっ!レイフには近付くんじゃない!分かったか?!」
オスカーは強い口調で私に言った。
「はい・・・分かりました。」
私は返事をしたが、心の中で思った。今のオスカーは・・もし明日、別の人格になっていれば、その考えはどうなるのだろうかと―。
「さて・・・アイリスの意識が戻った事だし・・俺はそろそろ帰る事にしよう。」
オスカーが立ち上がったので、私は肝心な事を聞かなければいけないことを思い出した。
「あの、オスカー様は今どちらにいお住まいですか?」
「俺か?」
「は、はい・・・。」
「そんな事は決まっているだろう?王宮に住んでいるに決まっている。」
え・・・?
私はその言葉を聞いて血の気が引いた。そんな・・・・。呪いに犯されていなかったオスカーは・・私を連れて王宮から一緒に逃げ出したのに?今のオスカーは王宮に住んでいる・・?
その時、耳を疑うような台詞がオスカーの口から出てきた。
「そう言えば、アイリス。父上がアイリスに会いたいと言ってるのだが・・今度城に来る気はあるか?・・最も俺は正直に言うと父と会わせたくは・・・え?どうした?アイリス?」
青ざめた顔で両肩を抱きしめて震えている私に気付いたオスカーは訝し気な目で私に尋ねてきた。
いや・・・怖い。私はもう二度と・・王宮には行きたくない。まして、国王陛下に等・・・絶対に会いたくはない!どうすればいい?私はどうすれば自分の身を保全する事が出来る?
私はオスカーを見つめた。
「オスカー様・・・・。私の事・・・どう思っていますか?」
今のオスカーも私の事を好いてくれているのは分かっている。だけど、ここはあえて尋ねる事にした。
「え・・?アイリス、お前何を突然に・・?」
オスカーは目を見開いて私を見ている。
「私の事・・・好きですか?」
本来の私であれば、こんな質問絶対にしない。だけど、今は―。
「お前・・・好きでなければ・・一緒にいるはずがないだろう?」
オスカーは頬を染め、私から視線を逸らすように言う。
「だったら・・・、お願いです。私は・・・陛下が怖いのです。だからどうか、王宮に連れて行かないで下さい。お願いします・・・。」
私はオスカーの胸に頭を付けた―。
オスカーの隣に座ると、早速尋ねてきた。
「申し訳ございません・・・・教室に戻った時に友人からまだレイフが教室に戻っていないと言う話を聞いて・・まさかあのまま中庭で倒れているのではと思い、様子をみに行ったのです。」
「俺はお前に言ったよな?今後はあの男とは2人きりでは会うなと?そんなに・・あの男の事が心配だったのか?お前はレイフの事が好きなのか?」
オスカーは私の左手をグッと握りしめてきた。
「・・・。」
何だろう、このやりとり・・これでは先ほどのレイフと同じやり取りだ。
「いえ、そう言う訳ではありません。レイフには特に恋愛感情を持ってはおりません。」
確かに子供の頃、私はレイフの事が好きだった。けれども・・・今は全く恋愛感情は持っていない。70年前の壮絶な経験が・・私のレイフに対する淡い恋心を消し去ったのだ。
「なら、あいつの事は放っておくべきだったんだ。大体・・何故あんな場所で倒れていた?」
オスカーはじっと私の顔を覗き込むように質問してくる。
「それが・・・中庭を覗いてみると・・レイフとタバサ様が・・ベンチに座っていて・・・。」
「まさか、それがショックで廊下で気を失って倒れたのか?」
「いいえ。そんな事はありません。ただあの直後に酷い眩暈に襲われて・・・それで廊下の壁に寄りかかってしゃがんだのですが・・・そのまま気を失ってしまったようです。」
「気付けばお前が教室から消えていた。だからひょっとすると中庭へ向かったのではと思って探しに行けば・・・お前が廊下で倒れていたんだ。だからすぐに馬車を呼んでお前をイリヤ家へ連れて帰って来たんだ。とにかく・・・二度と俺との約束を破るなっ!レイフには近付くんじゃない!分かったか?!」
オスカーは強い口調で私に言った。
「はい・・・分かりました。」
私は返事をしたが、心の中で思った。今のオスカーは・・もし明日、別の人格になっていれば、その考えはどうなるのだろうかと―。
「さて・・・アイリスの意識が戻った事だし・・俺はそろそろ帰る事にしよう。」
オスカーが立ち上がったので、私は肝心な事を聞かなければいけないことを思い出した。
「あの、オスカー様は今どちらにいお住まいですか?」
「俺か?」
「は、はい・・・。」
「そんな事は決まっているだろう?王宮に住んでいるに決まっている。」
え・・・?
私はその言葉を聞いて血の気が引いた。そんな・・・・。呪いに犯されていなかったオスカーは・・私を連れて王宮から一緒に逃げ出したのに?今のオスカーは王宮に住んでいる・・?
その時、耳を疑うような台詞がオスカーの口から出てきた。
「そう言えば、アイリス。父上がアイリスに会いたいと言ってるのだが・・今度城に来る気はあるか?・・最も俺は正直に言うと父と会わせたくは・・・え?どうした?アイリス?」
青ざめた顔で両肩を抱きしめて震えている私に気付いたオスカーは訝し気な目で私に尋ねてきた。
いや・・・怖い。私はもう二度と・・王宮には行きたくない。まして、国王陛下に等・・・絶対に会いたくはない!どうすればいい?私はどうすれば自分の身を保全する事が出来る?
私はオスカーを見つめた。
「オスカー様・・・・。私の事・・・どう思っていますか?」
今のオスカーも私の事を好いてくれているのは分かっている。だけど、ここはあえて尋ねる事にした。
「え・・?アイリス、お前何を突然に・・?」
オスカーは目を見開いて私を見ている。
「私の事・・・好きですか?」
本来の私であれば、こんな質問絶対にしない。だけど、今は―。
「お前・・・好きでなければ・・一緒にいるはずがないだろう?」
オスカーは頬を染め、私から視線を逸らすように言う。
「だったら・・・、お願いです。私は・・・陛下が怖いのです。だからどうか、王宮に連れて行かないで下さい。お願いします・・・。」
私はオスカーの胸に頭を付けた―。
21
お気に入りに追加
575
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる