72 / 152
第5章 12 目覚めた場所は
しおりを挟む
次に目が覚めた時、私は自分のベッドの上にいた。
「・・?」
一体いつの間に私はイリヤ家に帰っていたのだろう・・・?ゆっくり起き上がると、一瞬グラリと激しいめまいが襲った。
「う・・・。」
暫くベッドの上で左手で額を抑えているとやがてめまいが治まって来た。今は・・何時なのだろう・・?
ベッドサイドの置時計を見ると、時刻は午後5時を指していた。確か私がレイフを探しに中庭へ行った時間は午後1時少し過ぎ。と言う事はあれから4時間近くも私は意識を失っていたことになる。
「一体・・・誰がここまで連れて来てくれたのかしら・・。」
その時、部屋のドアがカチャリと開かれ、メイドのリリーが銀の洗面器を持って現れた。そして私がベッドの上に起き上がっているのを見ると目を見張った。
「ア・・・アイリス様・・・。」
「リリー・・・。」
彼女の名前を呼ぶと、リリーは部屋の中央にある丸テーブルに洗面器を置くと私に向かって駆けよって来た。
「アイリス様!お目覚めになられたのですね?!良かった・・・。真っ青な顔で屋敷に戻られたときは・・本当に生きた心地がしませんでした!」
そして私のベッドに頭をうずめて身体を震わせる。
「リリー・・・。ごめんなさい、心配かけて・・・。」
私はそっとリリーの髪に触れながら言った。
「いいえ!そんなとんでもありませんっ!そ、それより大変失礼な事をして申し訳ございませんでした!ノックもせずに部屋へ入ってしまって・・・てっきりまだ目を覚まされていないのかとばかり思っておりましたので・・・。」
リリーはあたふたしながら言う。
「いいのよ、別にそんな事気にしなくても。」
笑みを浮かべながらリリーに言うと、彼女に質問した。
「ところでリリー。私をここまで連れて来てくれたのはどなたなの?」
「はい。オスカー王子でございます。」
「えっ!オスカー様がっ?!」
なんてことだろう。・・と言う事は私が教室を出ていく姿をオスカーは見ていたと言うのだろうか?
「実は・・・オスカー様は只今応接室におられます。どうしてもアイリス様が目を覚ますまでは帰らないと申されておりまして・・・。」
「えっ?!そ、そうだったのっ?!」
大変だ。一刻も早くオスカーの元へ行かなければ彼の逆鱗に触れてしまうかもしれない。慌ててベッドから降りて、部屋から出ようとするとリリーに呼び止められた。
「お待ち下さいっ!アイリス様っ!」
「え・・?何?リリー。」
「アイリス様・・・そのような姿でオスカー様の前に出られては・・・。」
リリーが頬を赤く染めている。
「え・・・?姿?」
そして私は気が付いた。自分がネグリジェ姿であると言う事に・・・。
それから約30分後―
リリーに手伝って貰い、濃紺の落ち着いたデザインのワンピースに着替えた私は1人で応接室へと向かった。コツコツと長い廊下を歩きながら窓を見ると、空はオレンジ色の夕暮れに染まっている。
やがて応接室の前に辿り着いた私は深呼吸をするとドアをノックした。
コンコン
すると中から声が聞こえる。
「・・・誰だ?」
「私です。アイリスです。」
「アイリスか?目が覚めたのだな?!中へ入って来い。」
オスカーに言われ、部屋のドアを開けた。
「失礼致します。」
頭を下げながらドアを閉め、顔を上げると部屋の中央のソファにはオスカーが一人で座っていた。
「アイリス・・・。」
オスカーはゆっくり立ち上がると、私の元へと駆け寄って来た。
そして次の瞬間―
私はオスカーの腕の中にいた。
「良かった・・・アイリス。目が覚めたのだな?」
耳元でオスカーが囁くように言う。
「はい、オスカー様。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。」
そして私はそっとオスカーの背中に手を回し・・・瞳を閉じた―。
「・・?」
一体いつの間に私はイリヤ家に帰っていたのだろう・・・?ゆっくり起き上がると、一瞬グラリと激しいめまいが襲った。
「う・・・。」
暫くベッドの上で左手で額を抑えているとやがてめまいが治まって来た。今は・・何時なのだろう・・?
ベッドサイドの置時計を見ると、時刻は午後5時を指していた。確か私がレイフを探しに中庭へ行った時間は午後1時少し過ぎ。と言う事はあれから4時間近くも私は意識を失っていたことになる。
「一体・・・誰がここまで連れて来てくれたのかしら・・。」
その時、部屋のドアがカチャリと開かれ、メイドのリリーが銀の洗面器を持って現れた。そして私がベッドの上に起き上がっているのを見ると目を見張った。
「ア・・・アイリス様・・・。」
「リリー・・・。」
彼女の名前を呼ぶと、リリーは部屋の中央にある丸テーブルに洗面器を置くと私に向かって駆けよって来た。
「アイリス様!お目覚めになられたのですね?!良かった・・・。真っ青な顔で屋敷に戻られたときは・・本当に生きた心地がしませんでした!」
そして私のベッドに頭をうずめて身体を震わせる。
「リリー・・・。ごめんなさい、心配かけて・・・。」
私はそっとリリーの髪に触れながら言った。
「いいえ!そんなとんでもありませんっ!そ、それより大変失礼な事をして申し訳ございませんでした!ノックもせずに部屋へ入ってしまって・・・てっきりまだ目を覚まされていないのかとばかり思っておりましたので・・・。」
リリーはあたふたしながら言う。
「いいのよ、別にそんな事気にしなくても。」
笑みを浮かべながらリリーに言うと、彼女に質問した。
「ところでリリー。私をここまで連れて来てくれたのはどなたなの?」
「はい。オスカー王子でございます。」
「えっ!オスカー様がっ?!」
なんてことだろう。・・と言う事は私が教室を出ていく姿をオスカーは見ていたと言うのだろうか?
「実は・・・オスカー様は只今応接室におられます。どうしてもアイリス様が目を覚ますまでは帰らないと申されておりまして・・・。」
「えっ?!そ、そうだったのっ?!」
大変だ。一刻も早くオスカーの元へ行かなければ彼の逆鱗に触れてしまうかもしれない。慌ててベッドから降りて、部屋から出ようとするとリリーに呼び止められた。
「お待ち下さいっ!アイリス様っ!」
「え・・?何?リリー。」
「アイリス様・・・そのような姿でオスカー様の前に出られては・・・。」
リリーが頬を赤く染めている。
「え・・・?姿?」
そして私は気が付いた。自分がネグリジェ姿であると言う事に・・・。
それから約30分後―
リリーに手伝って貰い、濃紺の落ち着いたデザインのワンピースに着替えた私は1人で応接室へと向かった。コツコツと長い廊下を歩きながら窓を見ると、空はオレンジ色の夕暮れに染まっている。
やがて応接室の前に辿り着いた私は深呼吸をするとドアをノックした。
コンコン
すると中から声が聞こえる。
「・・・誰だ?」
「私です。アイリスです。」
「アイリスか?目が覚めたのだな?!中へ入って来い。」
オスカーに言われ、部屋のドアを開けた。
「失礼致します。」
頭を下げながらドアを閉め、顔を上げると部屋の中央のソファにはオスカーが一人で座っていた。
「アイリス・・・。」
オスカーはゆっくり立ち上がると、私の元へと駆け寄って来た。
そして次の瞬間―
私はオスカーの腕の中にいた。
「良かった・・・アイリス。目が覚めたのだな?」
耳元でオスカーが囁くように言う。
「はい、オスカー様。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。」
そして私はそっとオスカーの背中に手を回し・・・瞳を閉じた―。
20
お気に入りに追加
555
あなたにおすすめの小説
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜
風見ゆうみ
恋愛
ミアシス伯爵家の長女である私、リリーは、出席したお茶会で公爵令嬢に毒を盛ったという冤罪を着せられて投獄されてしまう。数十日後の夜、私の目の前に現れた元婚約者と元親友から、明日には私が処刑されることや、毒をいれたのは自分だと告げられる。
2人が立ち去ったあと、隣の独房に入れられている青年、リュカから「過去に戻れたら自分と一緒に戦ってくれるか」と尋ねられる。私はその願いを承諾し、再会する約束を交わす。
その後、眠りについた私が目を覚ますと、独房の中ではなく自分の部屋にいた――
※2/26日に完結予定です。
※史実とは関係なく、設定もゆるゆるのご都合主義です。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~
猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。
現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。
現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、
嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、
足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。
愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。
できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、
ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。
この公爵の溺愛は止まりません。
最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる