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第4章 6 敵、襲来
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「ここは隠し通路へと繋がっているんだ。この集落の家屋は全て隠し通路が備え付けられてあり、最終的には一か所で合流するようになっている。さらに隠し通路には特殊な魔法をかけているのだ。」
薄暗いトンネル状になっている石畳の通路をオスカーは説明しながらシモンと一緒に私を抱き上げたまま歩き続ける。何か魔法でもかけてあるのだろうか?アーチ形の壁はところどころ鈍く青白い光を放っている。
「隠し通路・・?でも、一体何の為に・・?」
私が言いかけた時、シモンが足を止めた。
「しっ!何か・・・聞こえます。」
「え?」
その時・・・。
ヒュッ!
何か風を切るような音が私のすぐ側を通り過ぎ、前方で軽い音を立て、地面に落下した。その落下物を目にしたとき、私は凍り付いた。それは弓矢だったのだ。
「追手ですっ!オスカー様っ!」
シモンが叫ぶ。
「クッ・・・!さては・・突破されたか?!」
オスカーは悔しそうに言う。
その直後―。
「ギャアアアッ!!」
背後で恐ろしい断末魔のような叫び声が聞こえ、背後からこちらへ駆け寄ってくる音が聞こえてきた。
それだけではない。さらに前方からこちらへ向かって走ってくる足音までもが聞こえてきた。まさか・・追手に行く手を挟まれた・・?
怖くて思わずオスカーのシャツをギュッと握りしめ、震えながら顔をオスカーの胸に埋めると、彼は言った。
「大丈夫だ、安心しろ。アルマンゾとヘルマンだ。」
顔を上げると、やはりオスカーの言う通り駆けつけてきたのは先程集落で出会った2人だった。
「オスカー様。申し訳ございません。ほとんどの敵は倒したのですが・・・。」
「数名、集落に入りこんでしまいました。どうやら連中の中に腕の立つ魔術師がいたようで封印を解かれてしまったのです。」
アルマンゾが説明する。
「それで、敵の数はあとどのくらいだ?封印の方はどうなった?」
「はい、先程ヨーゼフが封印魔法をかけに向いました。敵の数は残り約10名ほどかと思われます。」
ヘルマンが刀をしまいながら言った。
「そうか・・たかだかこの集落を襲うのに魔術師迄連れてくるとはな・・・父上め、とうとう完全に気がふれたか?」
「オスカー様、おそらく陛下は血眼になってオスカー様とイリヤ様を追っていると思われます。急いでここからお逃げ下さい。」
シモンが言う。
「ああ、分かっている。」
そしてオスカーは私を見ると言った。
「いいか、イリヤ。必ずお前を両親のもとへ連れ帰ってやる。だから・・・俺を信じろ!」
オスカーは真剣な表情で私を見る。
どうしよう・・・今のオスカーを私は完全に信用していいのだろうか?この世界に戻ってきてまだ日も浅い。オスカーの事はほとんど私は知らないのに・・・。
だから・・・私はオスカーの心を読むことにした。
「・・・。」
私は指輪をはめた右手でそっとオスカーの胸に手を触れた。途端に頭の中に流れ込んでくるオスカーの思考・・・。そこには何としても私を助けたいと願うオスカーの気持ちが溢れていた。
信じよう・・・今、目の前にいるオスカーの事を。
「はい、オスカー様。私は貴方を信じます。」
するとオスカーはフッと笑みを浮かべると、シモン、ヘルマン、アルマンゾに言う。
「お前たち・・・この集落を頼む!」
「「「はい!」」」
3人は力強くうなずく。
「よし、行くぞっ!アイリスッ!この先に馬がいるっ!それに乗って逃げるぞっ!」
そしてオスカーは私を抱きかかえたまま走り出した。
オスカーは荒い息を吐きながら走り続ける。そしてついに、洞窟の先に光が見えた。
「出口だっ!アイリスッ!」
オスカーはより一層走る速度を上げ・・ついに洞窟の外へと飛び出した。
「え・・・?」
私は目の前の光景が信じられなかった。そこは深い森の中。背後を振り向いても私たちが逃げてきた洞窟は見当たらず、小さな木造の小屋が1軒たっているのみである。
そして小屋のすぐ側には蔵のついた馬がロープでくくり付けられている。
一体ここは・・・・?
その時
「お待ちしておりました。オスカー様。」
背後から声を掛けられ、オスカーは体ごと振り返る。するとそこには片目に眼帯をした一人の若者が小屋の前に立っていた―。
薄暗いトンネル状になっている石畳の通路をオスカーは説明しながらシモンと一緒に私を抱き上げたまま歩き続ける。何か魔法でもかけてあるのだろうか?アーチ形の壁はところどころ鈍く青白い光を放っている。
「隠し通路・・?でも、一体何の為に・・?」
私が言いかけた時、シモンが足を止めた。
「しっ!何か・・・聞こえます。」
「え?」
その時・・・。
ヒュッ!
何か風を切るような音が私のすぐ側を通り過ぎ、前方で軽い音を立て、地面に落下した。その落下物を目にしたとき、私は凍り付いた。それは弓矢だったのだ。
「追手ですっ!オスカー様っ!」
シモンが叫ぶ。
「クッ・・・!さては・・突破されたか?!」
オスカーは悔しそうに言う。
その直後―。
「ギャアアアッ!!」
背後で恐ろしい断末魔のような叫び声が聞こえ、背後からこちらへ駆け寄ってくる音が聞こえてきた。
それだけではない。さらに前方からこちらへ向かって走ってくる足音までもが聞こえてきた。まさか・・追手に行く手を挟まれた・・?
怖くて思わずオスカーのシャツをギュッと握りしめ、震えながら顔をオスカーの胸に埋めると、彼は言った。
「大丈夫だ、安心しろ。アルマンゾとヘルマンだ。」
顔を上げると、やはりオスカーの言う通り駆けつけてきたのは先程集落で出会った2人だった。
「オスカー様。申し訳ございません。ほとんどの敵は倒したのですが・・・。」
「数名、集落に入りこんでしまいました。どうやら連中の中に腕の立つ魔術師がいたようで封印を解かれてしまったのです。」
アルマンゾが説明する。
「それで、敵の数はあとどのくらいだ?封印の方はどうなった?」
「はい、先程ヨーゼフが封印魔法をかけに向いました。敵の数は残り約10名ほどかと思われます。」
ヘルマンが刀をしまいながら言った。
「そうか・・たかだかこの集落を襲うのに魔術師迄連れてくるとはな・・・父上め、とうとう完全に気がふれたか?」
「オスカー様、おそらく陛下は血眼になってオスカー様とイリヤ様を追っていると思われます。急いでここからお逃げ下さい。」
シモンが言う。
「ああ、分かっている。」
そしてオスカーは私を見ると言った。
「いいか、イリヤ。必ずお前を両親のもとへ連れ帰ってやる。だから・・・俺を信じろ!」
オスカーは真剣な表情で私を見る。
どうしよう・・・今のオスカーを私は完全に信用していいのだろうか?この世界に戻ってきてまだ日も浅い。オスカーの事はほとんど私は知らないのに・・・。
だから・・・私はオスカーの心を読むことにした。
「・・・。」
私は指輪をはめた右手でそっとオスカーの胸に手を触れた。途端に頭の中に流れ込んでくるオスカーの思考・・・。そこには何としても私を助けたいと願うオスカーの気持ちが溢れていた。
信じよう・・・今、目の前にいるオスカーの事を。
「はい、オスカー様。私は貴方を信じます。」
するとオスカーはフッと笑みを浮かべると、シモン、ヘルマン、アルマンゾに言う。
「お前たち・・・この集落を頼む!」
「「「はい!」」」
3人は力強くうなずく。
「よし、行くぞっ!アイリスッ!この先に馬がいるっ!それに乗って逃げるぞっ!」
そしてオスカーは私を抱きかかえたまま走り出した。
オスカーは荒い息を吐きながら走り続ける。そしてついに、洞窟の先に光が見えた。
「出口だっ!アイリスッ!」
オスカーはより一層走る速度を上げ・・ついに洞窟の外へと飛び出した。
「え・・・?」
私は目の前の光景が信じられなかった。そこは深い森の中。背後を振り向いても私たちが逃げてきた洞窟は見当たらず、小さな木造の小屋が1軒たっているのみである。
そして小屋のすぐ側には蔵のついた馬がロープでくくり付けられている。
一体ここは・・・・?
その時
「お待ちしておりました。オスカー様。」
背後から声を掛けられ、オスカーは体ごと振り返る。するとそこには片目に眼帯をした一人の若者が小屋の前に立っていた―。
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