50 / 152
第4章 3 謎の集落
しおりを挟む
オスカーは私を抱きかかえたまま集落へと入って行った。そこは本当に小さな集落の様で周囲を見渡しても普通の平屋の家屋が20件ほどで、店らしきものが1軒あるのみだった。外には2人の男性が立ち話をしていたようだが、遠目で私達の姿を見ると警戒心をあらわにした。
「おい!そこの2人、そこで止まれっ!」
突然1人の男性が大きな声でオスカーの足を止めさせた。そして彼等は遠目からも分かる動きで腰から剣を引き抜いた。
「オ、オスカー様・・・。」
私は彼らが剣を持っている事にも驚いたが、こちらへ剣を構えたまま近付いて来る彼らが恐ろしかった。思わずオスカーの腕の中で震えていると、オスカーが私を抱きよせ、まるで安心させるかのように髪を撫でて来ると耳元で言った。
「大丈夫だ。安心しろ。」
え・・・それは一体・・。
彼らは剣を構えたまま、徐々に私達に近付いて行き・・その顔がはっきり分かった。
若い・・・彼らはとても若かったのだ。恐らく私達とさほど年齢は変わらないだろう。そして1人の青い髪をした男性がオスカーを見て、ハッとなった。
「オ・・オスカー様じゃないですかっ!」
もう1人は黒髪の若い男性。彼は素早く剣をしまうと、慌ててオスカーに頭を下げてきた。
「も。申し訳ございませんっ!まさか・・・こんな朝からここを訪ねて来た事等一度も無かったので・・・オスカー様とは思いもしませんでしたっ!」
オスカーはフンと鼻を鳴らしながら言った。
「当り前だ、俺の様に鮮やかな赤い髪の人間など、俺以外にいるまい?もう二度と間違えるなよ?」
オスカーはニヤリと笑みを浮かべると言った。すると青い髪の男性が私を見ると言った。
「所で・・・オスカー様。そちらの美しい女性は・・・どなたですか?」
するとオスカーは得意げに言う。
「ああ、そうだ。美しいだろう?彼女はアイリス・イリヤ。公爵家の令嬢で俺の婚約者だ。」
「ええっ?!そうなのですかっ?!」
「やはり流石王族ですね。まさかこのように美しい公爵令嬢の婚約者がいらしたとは・・・。」
青い髪の男性と黒髪の男性が交互に言う。
「そうだ、羨ましいだろう?」
オスカーがニヤリと口元に笑みを浮かべて言うので、私は思わずオスカーの顔をじっと見つめてしまった。まさかあのオスカーがこのような台詞を言うとは・・。
「どうした?アイリス。」
「い、いえ・・・何でもありません。それよりももう大丈夫ですので降ろして頂いて構いませんよ?」
「いや、駄目だ。まずは足の治療をしてからだ。」
オスカーは首を振った。するとそれを聞いた青い髪の男性が言った。
「え・・?まさか怪我をされているのですか?」
「ええ・・・大したことはありませんので。」
私は返事をしたが、オスカーは言った。
「何を言う、まずは怪我の治療が先だ。それにその傷の何処が大したことではないのだ。」
「・・・。」
私は口を閉ざした。確かに多少は傷が深いかもしれないが・・・これ位の傷・・70年前のあの時に比べれば・・・。
「俺は・・・お前がこれ以上傷付くのを見たくないんだ。とにかく傷の治療がおわるまでは歩き回るな。これからお前を教会へ連れて行く。」
「そうですね。神官様に祈りを貰えばこれ位の傷、すぐに治して貰えますよ。」
青い髪の男性が言う。
「え・・・?神官様が・・?」
私が尋ねると青い髪の男性が言う。
「ええ、そうです。この集落は・・少し特殊な集落でしてね・・・。あ、申し遅れましたが俺はアルマンゾって言います。」
「アルマンゾ、もしかすると国王がここを襲って来るかもしれない。急いで魔術師たちに集まって貰って、封印を掛けてくれ。」
オスカーは次に黒髪の男性に命じた。
「ヘルマン。万一封印を解かれた場合を考えて武装した兵士を集落の要素に配置しておいてくれ。まあ・・多分大丈夫だとは思うがな。」
「はい。」
ヘルマンと呼ばれた黒髪男性は返事をした。一体・・・この集落は・・?彼等は何者なのだろう・・・?
私の謎は深まるばかりだった—。
「おい!そこの2人、そこで止まれっ!」
突然1人の男性が大きな声でオスカーの足を止めさせた。そして彼等は遠目からも分かる動きで腰から剣を引き抜いた。
「オ、オスカー様・・・。」
私は彼らが剣を持っている事にも驚いたが、こちらへ剣を構えたまま近付いて来る彼らが恐ろしかった。思わずオスカーの腕の中で震えていると、オスカーが私を抱きよせ、まるで安心させるかのように髪を撫でて来ると耳元で言った。
「大丈夫だ。安心しろ。」
え・・・それは一体・・。
彼らは剣を構えたまま、徐々に私達に近付いて行き・・その顔がはっきり分かった。
若い・・・彼らはとても若かったのだ。恐らく私達とさほど年齢は変わらないだろう。そして1人の青い髪をした男性がオスカーを見て、ハッとなった。
「オ・・オスカー様じゃないですかっ!」
もう1人は黒髪の若い男性。彼は素早く剣をしまうと、慌ててオスカーに頭を下げてきた。
「も。申し訳ございませんっ!まさか・・・こんな朝からここを訪ねて来た事等一度も無かったので・・・オスカー様とは思いもしませんでしたっ!」
オスカーはフンと鼻を鳴らしながら言った。
「当り前だ、俺の様に鮮やかな赤い髪の人間など、俺以外にいるまい?もう二度と間違えるなよ?」
オスカーはニヤリと笑みを浮かべると言った。すると青い髪の男性が私を見ると言った。
「所で・・・オスカー様。そちらの美しい女性は・・・どなたですか?」
するとオスカーは得意げに言う。
「ああ、そうだ。美しいだろう?彼女はアイリス・イリヤ。公爵家の令嬢で俺の婚約者だ。」
「ええっ?!そうなのですかっ?!」
「やはり流石王族ですね。まさかこのように美しい公爵令嬢の婚約者がいらしたとは・・・。」
青い髪の男性と黒髪の男性が交互に言う。
「そうだ、羨ましいだろう?」
オスカーがニヤリと口元に笑みを浮かべて言うので、私は思わずオスカーの顔をじっと見つめてしまった。まさかあのオスカーがこのような台詞を言うとは・・。
「どうした?アイリス。」
「い、いえ・・・何でもありません。それよりももう大丈夫ですので降ろして頂いて構いませんよ?」
「いや、駄目だ。まずは足の治療をしてからだ。」
オスカーは首を振った。するとそれを聞いた青い髪の男性が言った。
「え・・?まさか怪我をされているのですか?」
「ええ・・・大したことはありませんので。」
私は返事をしたが、オスカーは言った。
「何を言う、まずは怪我の治療が先だ。それにその傷の何処が大したことではないのだ。」
「・・・。」
私は口を閉ざした。確かに多少は傷が深いかもしれないが・・・これ位の傷・・70年前のあの時に比べれば・・・。
「俺は・・・お前がこれ以上傷付くのを見たくないんだ。とにかく傷の治療がおわるまでは歩き回るな。これからお前を教会へ連れて行く。」
「そうですね。神官様に祈りを貰えばこれ位の傷、すぐに治して貰えますよ。」
青い髪の男性が言う。
「え・・・?神官様が・・?」
私が尋ねると青い髪の男性が言う。
「ええ、そうです。この集落は・・少し特殊な集落でしてね・・・。あ、申し遅れましたが俺はアルマンゾって言います。」
「アルマンゾ、もしかすると国王がここを襲って来るかもしれない。急いで魔術師たちに集まって貰って、封印を掛けてくれ。」
オスカーは次に黒髪の男性に命じた。
「ヘルマン。万一封印を解かれた場合を考えて武装した兵士を集落の要素に配置しておいてくれ。まあ・・多分大丈夫だとは思うがな。」
「はい。」
ヘルマンと呼ばれた黒髪男性は返事をした。一体・・・この集落は・・?彼等は何者なのだろう・・・?
私の謎は深まるばかりだった—。
24
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます
あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。
腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。
お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。
うんうんと頭を悩ませた結果、
この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。
聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。
だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。
早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。
表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
―――――――――――――――――――――――――
※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。
※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。
※基本21時更新(50話完結)
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
いつかの空を見る日まで
たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。
------------
復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。
悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。
中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。
どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。
(うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります)
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる