24 / 152
第2章 6 新しいクラス
しおりを挟む
私とレイフが1年A組の教室へ行くと入り口には席次表が貼られていた。
「・・・・。」
私は黙って席次表を見つめた。
「どうした?アイリス。席はもう確認したんだ。中へ入らないのか?」
横から不思議そうにレイフが尋ねてきた。
「え、ええ・・・そうね。入るわ。」
私の席は窓際から2列目の一番後ろで、当然の如くオスカーの隣の席になっていた。全く・・これでは70年前と同じだ。そしてあの時は教室に入ったタバサが私に突然声を掛けてきて・・・。
ため息をつきながら教室へ入り、自分の席を見ると案の定窓際の席に座ったオスカーが頬杖を突きながら窓の外を眺めている。
オスカーは王族でありながら、その荒々しい性格と格下の人間を見下す傾向が強かった為に、取り巻きは1人もおらず常に1人で行動していた。学生達だけではなく、教授達も彼を恐れていた。そんな彼をただ一人、恐れずに慕っていたのが他でも無い、タバサだったのである。
「それじゃな、アイリス。」
レイフは教壇の列の真ん中の席だったので、私の肩をポンと叩くと自分の席へと向かった。するとまるでタイミングを見計らったかのようにタバサが私の目の前に現れた。
「アイリス様、お話があるのですけど。」
「え、ええ・・・。」
他の学生達はそれぞれ隣同士になった席の者同士で自己紹介を兼ねた会話を楽しんでいる。かくいうレイフも、もう隣の席の男子学生と和やかに話をしていた。ポツンと1人で座っているのはオスカーぐらいだ。
そんなオスカーをタバサはチラリと見ると言った。
「見て・・・オスカー様は1人で座っているわよね?」
「ええ・・・。そうね。」
「オスカー様とアイリス様は・・・婚約者同士と言っていたけど・・・それだと2人供べったりになって、このアカデミーで新しく友人が作れないんじゃないかしら?だから私と席を交換しない?その方がオスカー様とアイリス様の為であると思わない?」
え・・?
70年前とタバサの話の内容が変化している・・・。あの時は私とオスカーの仲が悪そうだったから、席を交換しようと言って来たのに・・・。オスカーと私の関係が微妙に変化したからタバサの会話の内容が変化したのだろうか・・?
私が返事を返さないからなのか、タバサが眉をしかめると言った。
「ねえ、聞いているの?アイリス様。早く席を交換してもらえないかしら?もうすぐホームルーム開始のチャイムが鳴ってしまうじゃないの。」
若干イライラしながらタバサが私に詰め寄って来る。もしここで拒否をして面倒ごとに巻き込まれるのは遠慮したい。
「・・・分かったわ。でも・・・教授はどう思うかしら?」
「それなら視力が悪くて黒板の文字が読めないから私と席を変わって貰ったと答えればいいのよ。」
「・・・・。」
このクラスにはレイフがいる。私の視力が悪くない事位彼は知っている。だけど目の前で威嚇するように私を見るタバサを見ていたら、断る方が面倒そうだ。
「分かったわ・・・席を替わればいいのよね?」
どうせまだ鞄を机の上に置いていないのだ。
「ええ、そうよ。聞き分けの良い人は好きよ。」
タバサはにっこり微笑む。私は別にタバサに好かれたいとはこれっぽっちも思っていない。むしろ放っておいて貰いたい位だ。
心の中で溜息をついて、私は無言でタバサから視線を逸らせると、彼女が本来座るべき座席に行くと、腰を下ろした。
その時・・・。
ガターンッ!!
突然教室の後ろの方で何かが倒れる音が教室中に響き渡った。
その音に驚いた学生たちが振り向くと、そこにはオスカーが青ざめて立っているタバサを睨み付けている。そしてタバサの足元には椅子が転がっていた—。
「・・・・。」
私は黙って席次表を見つめた。
「どうした?アイリス。席はもう確認したんだ。中へ入らないのか?」
横から不思議そうにレイフが尋ねてきた。
「え、ええ・・・そうね。入るわ。」
私の席は窓際から2列目の一番後ろで、当然の如くオスカーの隣の席になっていた。全く・・これでは70年前と同じだ。そしてあの時は教室に入ったタバサが私に突然声を掛けてきて・・・。
ため息をつきながら教室へ入り、自分の席を見ると案の定窓際の席に座ったオスカーが頬杖を突きながら窓の外を眺めている。
オスカーは王族でありながら、その荒々しい性格と格下の人間を見下す傾向が強かった為に、取り巻きは1人もおらず常に1人で行動していた。学生達だけではなく、教授達も彼を恐れていた。そんな彼をただ一人、恐れずに慕っていたのが他でも無い、タバサだったのである。
「それじゃな、アイリス。」
レイフは教壇の列の真ん中の席だったので、私の肩をポンと叩くと自分の席へと向かった。するとまるでタイミングを見計らったかのようにタバサが私の目の前に現れた。
「アイリス様、お話があるのですけど。」
「え、ええ・・・。」
他の学生達はそれぞれ隣同士になった席の者同士で自己紹介を兼ねた会話を楽しんでいる。かくいうレイフも、もう隣の席の男子学生と和やかに話をしていた。ポツンと1人で座っているのはオスカーぐらいだ。
そんなオスカーをタバサはチラリと見ると言った。
「見て・・・オスカー様は1人で座っているわよね?」
「ええ・・・。そうね。」
「オスカー様とアイリス様は・・・婚約者同士と言っていたけど・・・それだと2人供べったりになって、このアカデミーで新しく友人が作れないんじゃないかしら?だから私と席を交換しない?その方がオスカー様とアイリス様の為であると思わない?」
え・・?
70年前とタバサの話の内容が変化している・・・。あの時は私とオスカーの仲が悪そうだったから、席を交換しようと言って来たのに・・・。オスカーと私の関係が微妙に変化したからタバサの会話の内容が変化したのだろうか・・?
私が返事を返さないからなのか、タバサが眉をしかめると言った。
「ねえ、聞いているの?アイリス様。早く席を交換してもらえないかしら?もうすぐホームルーム開始のチャイムが鳴ってしまうじゃないの。」
若干イライラしながらタバサが私に詰め寄って来る。もしここで拒否をして面倒ごとに巻き込まれるのは遠慮したい。
「・・・分かったわ。でも・・・教授はどう思うかしら?」
「それなら視力が悪くて黒板の文字が読めないから私と席を変わって貰ったと答えればいいのよ。」
「・・・・。」
このクラスにはレイフがいる。私の視力が悪くない事位彼は知っている。だけど目の前で威嚇するように私を見るタバサを見ていたら、断る方が面倒そうだ。
「分かったわ・・・席を替わればいいのよね?」
どうせまだ鞄を机の上に置いていないのだ。
「ええ、そうよ。聞き分けの良い人は好きよ。」
タバサはにっこり微笑む。私は別にタバサに好かれたいとはこれっぽっちも思っていない。むしろ放っておいて貰いたい位だ。
心の中で溜息をついて、私は無言でタバサから視線を逸らせると、彼女が本来座るべき座席に行くと、腰を下ろした。
その時・・・。
ガターンッ!!
突然教室の後ろの方で何かが倒れる音が教室中に響き渡った。
その音に驚いた学生たちが振り向くと、そこにはオスカーが青ざめて立っているタバサを睨み付けている。そしてタバサの足元には椅子が転がっていた—。
35
お気に入りに追加
555
あなたにおすすめの小説
あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜
風見ゆうみ
恋愛
ミアシス伯爵家の長女である私、リリーは、出席したお茶会で公爵令嬢に毒を盛ったという冤罪を着せられて投獄されてしまう。数十日後の夜、私の目の前に現れた元婚約者と元親友から、明日には私が処刑されることや、毒をいれたのは自分だと告げられる。
2人が立ち去ったあと、隣の独房に入れられている青年、リュカから「過去に戻れたら自分と一緒に戦ってくれるか」と尋ねられる。私はその願いを承諾し、再会する約束を交わす。
その後、眠りについた私が目を覚ますと、独房の中ではなく自分の部屋にいた――
※2/26日に完結予定です。
※史実とは関係なく、設定もゆるゆるのご都合主義です。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる