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第2章 3 一番近い距離
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「私は・・・タバサ・オルフェンと申します。こちらこそよろしくお願いします。」
タバサはオスカーと私に挨拶をしたが、一瞬私を見る彼女の目に激しい敵意がこもっていることに気が付いた。やはり今世でもタバサにしてみれば私は邪魔な存在なのかもしれない。タバサはすぐに私から視線を逸らせ、オスカーを見上げると頬を赤く染めている。
「おい、そろそろ行くぞ。」
オスカーが声を掛けて来たので私達は並んで歩き始めたのだが、いつの間にかオスカーの隣はタバサが歩いていた。そこで私は2人の後ろを歩く事にした。
「あの・・・貴方のお名前を教えて頂けませんか?」
歩きながらタバサがオスカーに質問してきた。
「あ?ああ。俺の名前はオスカー・オブ・ウィンザードだ。しかし珍しい事もあるものだ。今まで俺の赤毛を見て恐れない女を見るのはお前で2人目だ。」
オスカーは歩きながらタバサを見た。
「え?私で2人目・・・なのですか?」
すると何故か微妙な反応をタバサはみせた。
「どなたですか?そのもう1人の女性と言うのは?」
「まあ、別に誰でもいいだろう?」
「お願いです。誰なのですか?教えてください。」
しかし、尚もタバサはオスカーに食い下がって来る。そんなに赤毛を見て驚かない事が重要なのだろうか?
「全く・・・教えればいいんだろう?ここにいるアイリス・イリヤだ。ついでにこの女は俺の婚約者でもある。」
オスカーが私の方を見ながら言った。
「!」
すると再び、タバサは敵意を込めた目で私をチラリとみると、すぐにオスカーに視線を戻した。
「そうでしたか、お2人は婚約者同士だったのですか・・。お似合いでいらっしゃいますね。そう言えば、ウィンザードと言う名字・・・ひょっとするとこの国の・・?」
「ああ、俺は王族だ。」
「まあ!オスカー様は王族の方だったのですね?!どうりで何処か気品が漂っていると思いました。」
タバサは嬉しそうにオスカーを見つめるが・・・私は思った。確かタバサの爵位は子爵であり、簡単には王族と話が出来るような立場ではない。それなのに初対面でファーストネームでオスカーの名を呼ぶとは・・・オスカーの機嫌が悪くならなければ良いのだが・・・・。
私は後ろを歩きながらオスカーの様子を伺ったが、特に機嫌を悪くしている素振りは見られない。それとも・・無邪気なタバサだから許されたのかもしれない。
だが・・・よくよく考えてみると、70年前のあの日・・・オスカーとタバサは2人で一緒に教室に姿を現していた。ひょっとすると先程の様にタバサが通路を歩いているオスカーに声を掛け、2人でクラス編成の掲示板を見てから教室に現れたのかもしれない・・・。そんな事をぼんやり考えていると、突如オスカーが声を掛けてきた。
「おい、アイリス・イリヤ。又お前・・顔色も悪いし・・ぼんやりしているぞ?」
「え?」
顔を上げるとオスカーが振り返り、私を見ている。そしてオスカーの隣に立っているタバサは何処か非難めいた目をしている。
やはり私は過去の記憶を思い出していると、体調に異変をきたすようだ。
「い、いえ。大丈夫で・・・。」
そこまで言いかけた時突然視界がグニャリと歪み、身体が後ろに倒れそうになった時・・・。
「危ないっ!」
オスカーの手が伸びてきて私の右腕を掴むと自分の方へ引き寄せてきた。
「おい・・?お前、本当に大丈夫なのか・・?」
気付けば私はオスカーに抱き寄せられた形になっている。ここまで私とオスカーの距離が近付いた事は今まで一度も無かった。
オスカーを見上げると、何故か心配そうに私を見つめている。
「あ・・・ありがとうございます。」
私はオスカーの胸を両手で押して離れようとしたが、何故かオスカーは私を離そうとはせずにそのまま抱き上げて来た。
「え?!オ・オスカー様、一体何を?!」
本来私が言うべき台詞を何故かタバサが言った。
「このまま歩けばまた倒れそうだ。俺が校舎迄運んでやる。」
オスカーの言葉に私はギョッとした。そ、そんな・・・なるべくオスカーとは必要最低限の関りだけしようと考えていたのに・・おまけにオスカーは気付いていないかもしれないが、先程からタバサが物凄い目でこちらを睨んでいる。
「オスカー様。大丈夫ですっ!1人で歩けますから・・・。」
慌てて言うも、オスカーは私を離そうとしない。
「ほら、暴れるな。落ちたらどうする?」
何故かオスカーは何処か楽しそうに言う。タバサが睨み付けているのは怖いが、オスカーの機嫌を損ねる位なら・・。
「あ、ありがとうございます・・・。」
私はオスカーに礼を言い、落ちないように身を寄せた—。
タバサはオスカーと私に挨拶をしたが、一瞬私を見る彼女の目に激しい敵意がこもっていることに気が付いた。やはり今世でもタバサにしてみれば私は邪魔な存在なのかもしれない。タバサはすぐに私から視線を逸らせ、オスカーを見上げると頬を赤く染めている。
「おい、そろそろ行くぞ。」
オスカーが声を掛けて来たので私達は並んで歩き始めたのだが、いつの間にかオスカーの隣はタバサが歩いていた。そこで私は2人の後ろを歩く事にした。
「あの・・・貴方のお名前を教えて頂けませんか?」
歩きながらタバサがオスカーに質問してきた。
「あ?ああ。俺の名前はオスカー・オブ・ウィンザードだ。しかし珍しい事もあるものだ。今まで俺の赤毛を見て恐れない女を見るのはお前で2人目だ。」
オスカーは歩きながらタバサを見た。
「え?私で2人目・・・なのですか?」
すると何故か微妙な反応をタバサはみせた。
「どなたですか?そのもう1人の女性と言うのは?」
「まあ、別に誰でもいいだろう?」
「お願いです。誰なのですか?教えてください。」
しかし、尚もタバサはオスカーに食い下がって来る。そんなに赤毛を見て驚かない事が重要なのだろうか?
「全く・・・教えればいいんだろう?ここにいるアイリス・イリヤだ。ついでにこの女は俺の婚約者でもある。」
オスカーが私の方を見ながら言った。
「!」
すると再び、タバサは敵意を込めた目で私をチラリとみると、すぐにオスカーに視線を戻した。
「そうでしたか、お2人は婚約者同士だったのですか・・。お似合いでいらっしゃいますね。そう言えば、ウィンザードと言う名字・・・ひょっとするとこの国の・・?」
「ああ、俺は王族だ。」
「まあ!オスカー様は王族の方だったのですね?!どうりで何処か気品が漂っていると思いました。」
タバサは嬉しそうにオスカーを見つめるが・・・私は思った。確かタバサの爵位は子爵であり、簡単には王族と話が出来るような立場ではない。それなのに初対面でファーストネームでオスカーの名を呼ぶとは・・・オスカーの機嫌が悪くならなければ良いのだが・・・・。
私は後ろを歩きながらオスカーの様子を伺ったが、特に機嫌を悪くしている素振りは見られない。それとも・・無邪気なタバサだから許されたのかもしれない。
だが・・・よくよく考えてみると、70年前のあの日・・・オスカーとタバサは2人で一緒に教室に姿を現していた。ひょっとすると先程の様にタバサが通路を歩いているオスカーに声を掛け、2人でクラス編成の掲示板を見てから教室に現れたのかもしれない・・・。そんな事をぼんやり考えていると、突如オスカーが声を掛けてきた。
「おい、アイリス・イリヤ。又お前・・顔色も悪いし・・ぼんやりしているぞ?」
「え?」
顔を上げるとオスカーが振り返り、私を見ている。そしてオスカーの隣に立っているタバサは何処か非難めいた目をしている。
やはり私は過去の記憶を思い出していると、体調に異変をきたすようだ。
「い、いえ。大丈夫で・・・。」
そこまで言いかけた時突然視界がグニャリと歪み、身体が後ろに倒れそうになった時・・・。
「危ないっ!」
オスカーの手が伸びてきて私の右腕を掴むと自分の方へ引き寄せてきた。
「おい・・?お前、本当に大丈夫なのか・・?」
気付けば私はオスカーに抱き寄せられた形になっている。ここまで私とオスカーの距離が近付いた事は今まで一度も無かった。
オスカーを見上げると、何故か心配そうに私を見つめている。
「あ・・・ありがとうございます。」
私はオスカーの胸を両手で押して離れようとしたが、何故かオスカーは私を離そうとはせずにそのまま抱き上げて来た。
「え?!オ・オスカー様、一体何を?!」
本来私が言うべき台詞を何故かタバサが言った。
「このまま歩けばまた倒れそうだ。俺が校舎迄運んでやる。」
オスカーの言葉に私はギョッとした。そ、そんな・・・なるべくオスカーとは必要最低限の関りだけしようと考えていたのに・・おまけにオスカーは気付いていないかもしれないが、先程からタバサが物凄い目でこちらを睨んでいる。
「オスカー様。大丈夫ですっ!1人で歩けますから・・・。」
慌てて言うも、オスカーは私を離そうとしない。
「ほら、暴れるな。落ちたらどうする?」
何故かオスカーは何処か楽しそうに言う。タバサが睨み付けているのは怖いが、オスカーの機嫌を損ねる位なら・・。
「あ、ありがとうございます・・・。」
私はオスカーに礼を言い、落ちないように身を寄せた—。
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