挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

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第154話 母の考え

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 その後、屋敷に帰り着くと母にルークを託してホテルに滞在する準備を始めた。
自分の着替えの他に、ルークの着替え。
おむつの準備に、おもちゃ等…それらを準備していると母がルークを抱いて部屋を訪ねてきた。
連れてこられたルークは火が着いたように泣いている。

「エルザ、ルークがミルクを欲しがって泣いているわ」

「まぁ大変」

慌ててルークを母から受け取り、あやしながら椅子に座るとすぐに前をはだけて授乳を始めた。
ルークはよほどお腹が空いていたのか、こくんこくんと飲んでいる。

「エルザ、授乳の間私が準備をしてあげるわ。これが持っていく荷物なのね?」

母がベッドの上に置かれた衣類を見ながら尋ねてきた。

「ええ、そうなの。クローゼットの中に入っているボストンバッグに入れようかと思っていたの」

「クローゼットね?」

母はクローゼットに向かうと、淡いピンク色の大きなボストンバッグを持ってきた。

「これのことかしら?」

「ええ、そうよ」

母が手にしたボストンバッグを見ると、胸が少し痛む。
何故ならあのバッグはフィリップと一緒に最初で最期の旅行に行った時に使っていたバッグだからだ。

「……」

思わずボストンバッグを見つめていると、母が怪訝そうな目を向けてきた。

「エルザ、どうかしたの?」

「う、ううん。何でも無いわ」

腕の中のルークはいつの間にか眠っていた。眠ったルークをしばらくそのまま抱いて、背中をさすっていると母が声を掛けてきた。

「エルザ、準備が終わったわよ」

「お母様、ありがとう」

「……」

母は何故か私と眠っているルークの様子を見つめていた。

「お母様、どうかしたの?」

「エルザ……やはり貴女だけがホテルに滞在するのは無理があるわよ。いくら何でもルークを連れて病室にはそうそう行けないでしょう?」

「それは……」

確かにお母様の言うことは尤もだ。セシルに付き添うとなれば、どのくらいの間病室に入ればいいのか、何時から何時までいるのかも決められていない。

「でも、いいの?お母様……。お父様を1人屋敷に残しておくなんて」

「いいのよ。それに1人ではないでしょう?屋敷には住み込みの家政婦さん達がいるわけだし」

「確かにそうだけど……」

「貴女がセシルのことを心配する気持ちは分かるけれど、私はエルザのことが心配なのよ。貴女は私の大切な娘なのだから」

「お母様……ありがとうございます。なら、早速お母様も準備を…」

すると母は笑った。

「それなら大丈夫よ。もう既に準備は終わっているから」

「え?」

「アンバー夫人から貴女がセシルに付き添う話を提示されたときから、ついていこうと考えていたのよ。だから私も準備は終わっているのよ?」

「お母様…」

「さて、それではルークのおむつ交換を終えたら、行きましょうか?」

「はい」


そして母と2人でルークのおむつ交換を終えると家政婦さん達に留守を頼み、再び私と母は馬車に揺られてセシルの待つ病院へと向かった――。
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