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第125話 姉との別れ
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「それじゃ、エルザも目を覚ましたことだし…そろそろ私は行くわ」
2人で抱き合って、ひとしきり泣いた後…姉は立ち上がった。
「え…?もう行くの?今夜は実家に泊っていかないの?」
すると姉は少し寂しげに笑った。
「無理よ…そういう訳にはいかないわ。理由はどうあれ、私は駆け落ちして皆に迷惑をかけてしまったのよ?私の姿を大勢の人に晒すわけにはいかないでしょう?」
「お姉さま…」
「それにね…貴女にだけは話すわ。実は私彼と一緒にこの町に来たのよ。彼は今駅前のホテルに宿泊して、私の帰りを待っているのよ。今日1泊したら明日の始発で帰るつもりよ」
「そうだったの?」
「ええ、皆が埋葬から戻ってくる前に私はもう行くわ。ゴシップ好きな人たちに私の姿が見られたらまずいでしょう?」
姉はヘッドドレスをかぶり、チュールで顔を隠した。
「元気でね?エルザ」
「ええ、お姉様も…」
「また手紙を書くわ」
「私もお姉さまに手紙を出すわね」
そして私と姉は再び抱きあい、お別れをした―。
バタン…
扉がしまると、部屋の中は途端に静まり返った。
「ルーク…」
ルークはお腹も満たされ、オムツも変えて貰って気分が良いのかぐっすり眠っている。
そんなルークを見ていると、自分まで眠くなってきた。
「そうね…。皆はいつ戻って来るか分からないから少し眠って待っていましょう…」
そして私は再び眠りに就いた―。
****
ふと、誰かが髪に触れている気配を感じた。
これは…夢なのだろうか…?
誰…?もしかしてフィリップなの…?
「う…ん……」
身じろぎしながら目を瞬かせてゆっくり開くと声を掛けられた。
「あ…起きたのか?エルザ」
「え‥?」
声を掛けられて首を動かすと、少し離れた場所でセシルが立っていた。
「セシル…?戻っていたのね?でもどうしてそんな所に立っているの?」
「い、いや。たった今部屋に入ってきたらエルザが眠っていたから、部屋に戻った方がいいのか考えていたところだったんだ」
「そうだったのね。それで?何か用があったのでしょう?」
「もうすぐ昼の会食の時間になるから声を掛けに来たんだよ」
セシルは向かい側のソファに座った。
「え?もう…そんな時間なの?」
「そうさ。もうすぐ13時になる。他の参列客たちは既にダイニングルームに集まって食事を始めてる。俺はエルザと2人で食事する為にここへ来たんだ。食べるだろう?」
食欲は全く無かった。けれども食べなければまた皆を心配させてしまうだろう。
「ええ…食べるわ。でも、本当にいいの?会場に顔を出さなくても」
するとセシルは吐き捨てるように言った。
「そんなの構うものか。どうせ行ったって、ろくな質問しかしてこないに決まっている。…分かっただろう?参列者達がどういう目で俺たちを見ているか」
「ええ…でも、セシル。貴方私に言ったわよね?私が世間の誤解を解いたって」
「ああ、確かに言ったが…問題はまだ残っている」
「問題?」
「そうだ、世間では若くして未亡人になったエルザが今後どうするかで話題がもちきりだったんだ」
「え…?そ、そんなことまで…?」
「俺が会食の席に顔を出したらそれこそ格好の餌になってしまう。だから俺は参加しないほうがいいのさ」
「セシル…ごめんなさい。私のせいで‥貴方にまで迷惑を…」
「何言ってるんだ?お前のせいじゃないだろう?それじゃエルザが目を覚ましたってことを厨房に伝えてくるから、待っていてくれ」
「ええ。ありがとう」
パタン…
扉が閉ざされ、再び部屋には私とルークだけが残された。
「私…本当はここに残らないほうがいいのかしら…?」
だけど…私はフィリップの温もりの残るあの部屋から離れたくは無かった。
「フィリップ…どうして死んでしまったの…?」
再び悲しみがこみあげてきて…少しの間、涙した――。
2人で抱き合って、ひとしきり泣いた後…姉は立ち上がった。
「え…?もう行くの?今夜は実家に泊っていかないの?」
すると姉は少し寂しげに笑った。
「無理よ…そういう訳にはいかないわ。理由はどうあれ、私は駆け落ちして皆に迷惑をかけてしまったのよ?私の姿を大勢の人に晒すわけにはいかないでしょう?」
「お姉さま…」
「それにね…貴女にだけは話すわ。実は私彼と一緒にこの町に来たのよ。彼は今駅前のホテルに宿泊して、私の帰りを待っているのよ。今日1泊したら明日の始発で帰るつもりよ」
「そうだったの?」
「ええ、皆が埋葬から戻ってくる前に私はもう行くわ。ゴシップ好きな人たちに私の姿が見られたらまずいでしょう?」
姉はヘッドドレスをかぶり、チュールで顔を隠した。
「元気でね?エルザ」
「ええ、お姉様も…」
「また手紙を書くわ」
「私もお姉さまに手紙を出すわね」
そして私と姉は再び抱きあい、お別れをした―。
バタン…
扉がしまると、部屋の中は途端に静まり返った。
「ルーク…」
ルークはお腹も満たされ、オムツも変えて貰って気分が良いのかぐっすり眠っている。
そんなルークを見ていると、自分まで眠くなってきた。
「そうね…。皆はいつ戻って来るか分からないから少し眠って待っていましょう…」
そして私は再び眠りに就いた―。
****
ふと、誰かが髪に触れている気配を感じた。
これは…夢なのだろうか…?
誰…?もしかしてフィリップなの…?
「う…ん……」
身じろぎしながら目を瞬かせてゆっくり開くと声を掛けられた。
「あ…起きたのか?エルザ」
「え‥?」
声を掛けられて首を動かすと、少し離れた場所でセシルが立っていた。
「セシル…?戻っていたのね?でもどうしてそんな所に立っているの?」
「い、いや。たった今部屋に入ってきたらエルザが眠っていたから、部屋に戻った方がいいのか考えていたところだったんだ」
「そうだったのね。それで?何か用があったのでしょう?」
「もうすぐ昼の会食の時間になるから声を掛けに来たんだよ」
セシルは向かい側のソファに座った。
「え?もう…そんな時間なの?」
「そうさ。もうすぐ13時になる。他の参列客たちは既にダイニングルームに集まって食事を始めてる。俺はエルザと2人で食事する為にここへ来たんだ。食べるだろう?」
食欲は全く無かった。けれども食べなければまた皆を心配させてしまうだろう。
「ええ…食べるわ。でも、本当にいいの?会場に顔を出さなくても」
するとセシルは吐き捨てるように言った。
「そんなの構うものか。どうせ行ったって、ろくな質問しかしてこないに決まっている。…分かっただろう?参列者達がどういう目で俺たちを見ているか」
「ええ…でも、セシル。貴方私に言ったわよね?私が世間の誤解を解いたって」
「ああ、確かに言ったが…問題はまだ残っている」
「問題?」
「そうだ、世間では若くして未亡人になったエルザが今後どうするかで話題がもちきりだったんだ」
「え…?そ、そんなことまで…?」
「俺が会食の席に顔を出したらそれこそ格好の餌になってしまう。だから俺は参加しないほうがいいのさ」
「セシル…ごめんなさい。私のせいで‥貴方にまで迷惑を…」
「何言ってるんだ?お前のせいじゃないだろう?それじゃエルザが目を覚ましたってことを厨房に伝えてくるから、待っていてくれ」
「ええ。ありがとう」
パタン…
扉が閉ざされ、再び部屋には私とルークだけが残された。
「私…本当はここに残らないほうがいいのかしら…?」
だけど…私はフィリップの温もりの残るあの部屋から離れたくは無かった。
「フィリップ…どうして死んでしまったの…?」
再び悲しみがこみあげてきて…少しの間、涙した――。
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