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第77話 静かな夜
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「う…」
フィリップは余程苦しいのか、額に汗を浮かべながら目を閉じ…痛みに耐えているように見えた。
「フィリップ…」
私は彼の左手をギュッと握りしめ、右手に持ったハンカチで額に浮かぶ汗を拭っていた。
その時―
コンコン
部屋の扉がノックされた。
『エルザ様、今少々宜しいでしょうか?』
チャールズさんの声だ。
「ええ、大丈夫よ。入って」
すると扉が開かれ、銀のトレーにティーポットとティーカップを乗せたチャールズさんが部屋の中に入ってきた。
「お薬をお持ち致しました」
「ありがとう」
チャールズさんは傍らの丸テーブルにトレーを置くと、カップにお茶を注いだ。途端に部屋の中に薬草の香りが漂う。
「チャールズさん。このお茶は何ですか?」
「フィリップ様が病院から頂いているお薬です。薬と言っても…痛み止めなのですが…」
チャールズさんは悲しげに目を伏せる。
痛み止め…。
フィリップの病気を根本的に治せる薬ではないのだ…。その事実が私の胸を締め上げる。
「フィリップ、大丈夫?チャールズさんが痛み止めのお薬を持ってきてくれわ。飲めるかしら?」
「う、うん…ありがとう…」
フィリップの身体を支えて起こしてあげると、チャールズさんがカップをフィリップに手渡した。
「…ん…」
フィリップはゆっくりお茶を飲み干した。
「又横になる?」
「うん…そうさせて貰うよ…」
フィリップは余程身体が辛いのか、再び身体を横たえた。
「それでは私はこれで失礼致します。あの、エルザ様…お夕食は…」
チャールズさんが尋ねてきた。
「ええ、この部屋に運んでくれる?一応…2人分を。20時頃で構わないから」
青ざめた顔で横たわるフィリップをチラリと見ながらチャールズさんに返事した。
前回もそうだったけれども、この薬を飲んだ後フィリップは眠りに就いてしまった。今回もそうかもしれない。
「はい、承知致しました」
チャールズさんは頭を下げると、部屋を出ていった。
パタン…
扉が閉まると、途端に部屋の中は静まり返る。
カチコチカチコチ…
部屋の中には時計が秒針を刻む音と、フィリップの苦しげな息遣いが聞こえている。
「ご、ごめ…ん…エルザ…」
フィリップが薄目を開けて、私をじっと見つめながら絞り出すような声で謝ってきた。
「いいのよ、何も気にしないで?今は…痛みが引くまで休んで頂戴。ずっと貴方の側にいるから…」
「あ、ありが…とう…」
そして再び、フィリップは目を閉じた。
「…」
私はそんなフィリップを黙って見つめていた。
部屋の中はすっかり日が落ち、薄暗くなっている。やがてフィリップが規則的な寝息を立て始めた所で、私は部屋の灯りを灯すために立ち上がった。
部屋のランプに灯りを付けて周り、オレンジ色の灯りに満たされる頃には外はすっかり闇に染まり、一番星が大きく輝きを放っていた。
「…綺麗な夜空…」
その後アルコールランプの下で1時間程読書をし、再度顔をあげた時に窓から夜空がよく見えているということに気がついた。
「あ…そう言えばまだレースのカーテンだけだったわ」
そこで部屋のカーテンを閉めるために窓へ向かい、何気なく空を眺めてみると星空が見えた。
「綺麗ね…。そうだわ。フィリップも今落ちつているし、夜空でも見てみようかしら」
そこで私は窓を開けるとバルコニーへ出た。そして手摺につかまり、夜空を眺めた。
「まぁ…本当に綺麗…。まるで夜空に手が届きそうだわ…」
そして思った。
もし流れ星が今流れるのなら、フィリップの病気が治りますようにとお祈りするのに…と。
少しの間、夜空を眺めていたけれども夜風が冷たくなってきた。
「少し肌寒くなってきたわね…。部屋に戻りましょう」
そして私はフィリップの眠る部屋へと戻った。
「あ…?フィリップ…目が覚めたの?」
部屋に戻るとフィリップがソファの上に座って目を擦っていた。
「うん、たった今…目が覚めたところだよ。エルザ、食事は終わらせたの?もうすぐ20時になるけど」
「まだよ、フィリップは?」
フィリップの隣に座ると返事をした。
「僕もまだだけど…エルザもまだだったのかい?」
身体の痛みが消えたからか、フィリップの顔色が良くなっている。
「ええ。フィリップの具合が良くなったら…2人で一緒に食べたかったから」
「ありがとう…。嬉しいよ…」
フィリップの腕が伸びてくると私を抱きしめ、頭をそっと撫でてくれた。
私はそんなフィリップの胸に顔を埋め…神様に祈った。
どうか、神様。
1日でも長くフィリップと一緒にいられますように―と。
フィリップは余程苦しいのか、額に汗を浮かべながら目を閉じ…痛みに耐えているように見えた。
「フィリップ…」
私は彼の左手をギュッと握りしめ、右手に持ったハンカチで額に浮かぶ汗を拭っていた。
その時―
コンコン
部屋の扉がノックされた。
『エルザ様、今少々宜しいでしょうか?』
チャールズさんの声だ。
「ええ、大丈夫よ。入って」
すると扉が開かれ、銀のトレーにティーポットとティーカップを乗せたチャールズさんが部屋の中に入ってきた。
「お薬をお持ち致しました」
「ありがとう」
チャールズさんは傍らの丸テーブルにトレーを置くと、カップにお茶を注いだ。途端に部屋の中に薬草の香りが漂う。
「チャールズさん。このお茶は何ですか?」
「フィリップ様が病院から頂いているお薬です。薬と言っても…痛み止めなのですが…」
チャールズさんは悲しげに目を伏せる。
痛み止め…。
フィリップの病気を根本的に治せる薬ではないのだ…。その事実が私の胸を締め上げる。
「フィリップ、大丈夫?チャールズさんが痛み止めのお薬を持ってきてくれわ。飲めるかしら?」
「う、うん…ありがとう…」
フィリップの身体を支えて起こしてあげると、チャールズさんがカップをフィリップに手渡した。
「…ん…」
フィリップはゆっくりお茶を飲み干した。
「又横になる?」
「うん…そうさせて貰うよ…」
フィリップは余程身体が辛いのか、再び身体を横たえた。
「それでは私はこれで失礼致します。あの、エルザ様…お夕食は…」
チャールズさんが尋ねてきた。
「ええ、この部屋に運んでくれる?一応…2人分を。20時頃で構わないから」
青ざめた顔で横たわるフィリップをチラリと見ながらチャールズさんに返事した。
前回もそうだったけれども、この薬を飲んだ後フィリップは眠りに就いてしまった。今回もそうかもしれない。
「はい、承知致しました」
チャールズさんは頭を下げると、部屋を出ていった。
パタン…
扉が閉まると、途端に部屋の中は静まり返る。
カチコチカチコチ…
部屋の中には時計が秒針を刻む音と、フィリップの苦しげな息遣いが聞こえている。
「ご、ごめ…ん…エルザ…」
フィリップが薄目を開けて、私をじっと見つめながら絞り出すような声で謝ってきた。
「いいのよ、何も気にしないで?今は…痛みが引くまで休んで頂戴。ずっと貴方の側にいるから…」
「あ、ありが…とう…」
そして再び、フィリップは目を閉じた。
「…」
私はそんなフィリップを黙って見つめていた。
部屋の中はすっかり日が落ち、薄暗くなっている。やがてフィリップが規則的な寝息を立て始めた所で、私は部屋の灯りを灯すために立ち上がった。
部屋のランプに灯りを付けて周り、オレンジ色の灯りに満たされる頃には外はすっかり闇に染まり、一番星が大きく輝きを放っていた。
「…綺麗な夜空…」
その後アルコールランプの下で1時間程読書をし、再度顔をあげた時に窓から夜空がよく見えているということに気がついた。
「あ…そう言えばまだレースのカーテンだけだったわ」
そこで部屋のカーテンを閉めるために窓へ向かい、何気なく空を眺めてみると星空が見えた。
「綺麗ね…。そうだわ。フィリップも今落ちつているし、夜空でも見てみようかしら」
そこで私は窓を開けるとバルコニーへ出た。そして手摺につかまり、夜空を眺めた。
「まぁ…本当に綺麗…。まるで夜空に手が届きそうだわ…」
そして思った。
もし流れ星が今流れるのなら、フィリップの病気が治りますようにとお祈りするのに…と。
少しの間、夜空を眺めていたけれども夜風が冷たくなってきた。
「少し肌寒くなってきたわね…。部屋に戻りましょう」
そして私はフィリップの眠る部屋へと戻った。
「あ…?フィリップ…目が覚めたの?」
部屋に戻るとフィリップがソファの上に座って目を擦っていた。
「うん、たった今…目が覚めたところだよ。エルザ、食事は終わらせたの?もうすぐ20時になるけど」
「まだよ、フィリップは?」
フィリップの隣に座ると返事をした。
「僕もまだだけど…エルザもまだだったのかい?」
身体の痛みが消えたからか、フィリップの顔色が良くなっている。
「ええ。フィリップの具合が良くなったら…2人で一緒に食べたかったから」
「ありがとう…。嬉しいよ…」
フィリップの腕が伸びてくると私を抱きしめ、頭をそっと撫でてくれた。
私はそんなフィリップの胸に顔を埋め…神様に祈った。
どうか、神様。
1日でも長くフィリップと一緒にいられますように―と。
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