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第13話 待っていたわけじゃないから
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翌朝―
コンコン
部屋の外で扉が叩かれる音が聞こえて来る。
「う~ん…」
コンコン
「エルザ様…お目覚めでしょうか…?」
扉の外でメイドさんの呼びかける声が聞こえ、私は慌てて飛び起きると返事をした。
「は、はい!今起きました!」
「そうですか?旦那様が既にダイニングルームへ向かわれましたが…どうされますか?」
「すぐに行きますっ!そう、伝えておいて下さいっ!」
ベッドから降りて、クローゼットに向かいながら返事をした。
「かしこまりました。では伝えてまいりますので」
遠ざかる足音を聞きながら、クローゼットを開くとすぐに着替えを取り出した。
「やっぱり昨夜の内に今日着る服を選んでおいて良かったわ…」
呟きながら大急ぎで着替えを始めた。
「…よし、こんなものかしら?」
ブラシを髪でとかし、簡単にまとめたると姿見で確認してみる。
白いブラウスに水色のロングスカートに水色のパンプス…。これなら上品に見えるし、きっとフィリップも満足してくれるだろう。
「急がなくちゃ!」
私はすぐに部屋を出るとダイニングルームへ向かった。
それはメイドが私を呼びに来て、きっちり15分後の事だった―。
****
ダイニングルームの扉は片側が開け放されており、テーブルについているフィリップの姿が見えた。
「おはようございます、フィリップ。遅くなってごめんなさい」
声を掛けながらダイニングルームに入っていった。
「おはよう、別に君を待っていたわけじゃないから謝らなくていいよ」
見ると、既にフィリップの朝食は半分近く減っていた。確かにフィリップは私を待つとは一言も言っていなかった。私は又失言をしてしまったようだ。
「そうよね、別に私を待っている必要はないものね。おかしなことを言ってごめんなさい」
もう一度頭を下げると、席に着いた。
「…」
そんな私をフィリップは何か言いたげに一度だけチラリと見ると、また黙々と食事を始めた。
その姿を見るだけで、再び私の胃はキリキリと痛みを伴う。食欲は今朝も全く無かったけれど、食べなければ厨房で食事を作ってくれる人達を心配させてしまう。
そこでとりあえず食べれそうなサラダから食べることにした。ドレッシングを掛けてサラダを口に運ぶ。
「…」
無理にサラダを飲み込むと、次にグリーンスープを飲むことにした。これも無理に口にすると、もうこれ以上何も口に出来そうになかった。
「…もういらないのかい?」
不意にフィリップが声を掛けてきた。
「え?ええ…そうね。美味しいのだけど…お腹が空かないのよ。でも時間をかければ食べられるかもしれないわ」
多分それは無いと思ったが、フィリップにこれ以上追求はされたくなかったのでごまかすことにした。
「ふ~ん、そうかい。それじゃ食事も済んだ事だし、僕は本館に行ってくるよ。両親に朝の挨拶があるからね」
そしてフィリップは席を立った。…本当は私も挨拶に行くべきかもしれないけれど、フィリップには認められていない。挨拶にも顔を出さない嫁だと思われないだろうか…?
「あ、あのね、フィリップ」
私は思い切って彼に尋ねる事にした。
「何?」
引き止められたことが余程迷惑だったのか、彼は露骨に嫌そうな顔を私に向けた。
「あ、あのね…お義父様とお義母様は私が挨拶にいかないことについて…何か言ってないかしら?」
「いや。別にないよ。僕が決めた事には一切口を挟まないように家族には告げてあるからね」
「そうなのね…分かったわ。なら…いいわ。ごめんなさい、引き止めてしまって」
「…全くだよ」
フィリップはそれだけ言うと、今度こそ部屋を出ていってしまった。
バタン…
ダイニングルームの扉は閉じられ、私は1人になってしまった。
…こんな生活が、これからずっと続くのだろうか…?
痛む胃を抑えながら私はため息をついた―。
コンコン
部屋の外で扉が叩かれる音が聞こえて来る。
「う~ん…」
コンコン
「エルザ様…お目覚めでしょうか…?」
扉の外でメイドさんの呼びかける声が聞こえ、私は慌てて飛び起きると返事をした。
「は、はい!今起きました!」
「そうですか?旦那様が既にダイニングルームへ向かわれましたが…どうされますか?」
「すぐに行きますっ!そう、伝えておいて下さいっ!」
ベッドから降りて、クローゼットに向かいながら返事をした。
「かしこまりました。では伝えてまいりますので」
遠ざかる足音を聞きながら、クローゼットを開くとすぐに着替えを取り出した。
「やっぱり昨夜の内に今日着る服を選んでおいて良かったわ…」
呟きながら大急ぎで着替えを始めた。
「…よし、こんなものかしら?」
ブラシを髪でとかし、簡単にまとめたると姿見で確認してみる。
白いブラウスに水色のロングスカートに水色のパンプス…。これなら上品に見えるし、きっとフィリップも満足してくれるだろう。
「急がなくちゃ!」
私はすぐに部屋を出るとダイニングルームへ向かった。
それはメイドが私を呼びに来て、きっちり15分後の事だった―。
****
ダイニングルームの扉は片側が開け放されており、テーブルについているフィリップの姿が見えた。
「おはようございます、フィリップ。遅くなってごめんなさい」
声を掛けながらダイニングルームに入っていった。
「おはよう、別に君を待っていたわけじゃないから謝らなくていいよ」
見ると、既にフィリップの朝食は半分近く減っていた。確かにフィリップは私を待つとは一言も言っていなかった。私は又失言をしてしまったようだ。
「そうよね、別に私を待っている必要はないものね。おかしなことを言ってごめんなさい」
もう一度頭を下げると、席に着いた。
「…」
そんな私をフィリップは何か言いたげに一度だけチラリと見ると、また黙々と食事を始めた。
その姿を見るだけで、再び私の胃はキリキリと痛みを伴う。食欲は今朝も全く無かったけれど、食べなければ厨房で食事を作ってくれる人達を心配させてしまう。
そこでとりあえず食べれそうなサラダから食べることにした。ドレッシングを掛けてサラダを口に運ぶ。
「…」
無理にサラダを飲み込むと、次にグリーンスープを飲むことにした。これも無理に口にすると、もうこれ以上何も口に出来そうになかった。
「…もういらないのかい?」
不意にフィリップが声を掛けてきた。
「え?ええ…そうね。美味しいのだけど…お腹が空かないのよ。でも時間をかければ食べられるかもしれないわ」
多分それは無いと思ったが、フィリップにこれ以上追求はされたくなかったのでごまかすことにした。
「ふ~ん、そうかい。それじゃ食事も済んだ事だし、僕は本館に行ってくるよ。両親に朝の挨拶があるからね」
そしてフィリップは席を立った。…本当は私も挨拶に行くべきかもしれないけれど、フィリップには認められていない。挨拶にも顔を出さない嫁だと思われないだろうか…?
「あ、あのね、フィリップ」
私は思い切って彼に尋ねる事にした。
「何?」
引き止められたことが余程迷惑だったのか、彼は露骨に嫌そうな顔を私に向けた。
「あ、あのね…お義父様とお義母様は私が挨拶にいかないことについて…何か言ってないかしら?」
「いや。別にないよ。僕が決めた事には一切口を挟まないように家族には告げてあるからね」
「そうなのね…分かったわ。なら…いいわ。ごめんなさい、引き止めてしまって」
「…全くだよ」
フィリップはそれだけ言うと、今度こそ部屋を出ていってしまった。
バタン…
ダイニングルームの扉は閉じられ、私は1人になってしまった。
…こんな生活が、これからずっと続くのだろうか…?
痛む胃を抑えながら私はため息をついた―。
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