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第6話 私の初恋とフィリップの恋
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「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ」
フィリップは私の顔を見ることも無く言い切った。
「え…?」
あまりの言葉に頭が追いつかなかった。するとフィリップは部屋の中央に置かれた丸テーブルへと向かった。そこには大きめの茶封筒が乗っている。
「…?」
様子をうかがっているとフィリップは茶封筒を手に私の元へと戻って来ると差し出してきた。
「これを預けておくから、離婚する気になったら僕の代わりに提出してくれ」
「な、何…?」
震える手で封筒を受け取り、中から書類を取り出すと出てきたのは…。
「え…?り、離婚届け…?」
あまりのショックで言葉が出てこない。するとフィリップは言った。
「エルザ…君だって良く知っているじゃないか。僕が好きな女性はローズだって事位…」
「ローズ…お姉様…?だって、お姉さまはもう…」
私はその名を口にした―。
****
私には3歳年上の姉がいる。
姉の名前はローズ。その名の通り、とても美しい人だった。
プラチナブロンドの巻毛に紫色の瞳…薔薇色の肌にピンク色の唇。
まさに絶世の美女と言っても過言では無かった。
私達家族は平民だったけれども、姉の美貌は王侯貴族にまで届く程で、数多くの求婚者が現れたが、どれ程身分が高い相手にも姉は首を縦にふることは無かった。何故なら…姉には恋人がいたからだ。
子供時代からの幼馴染であり…その人物が今、私の目の前に立っているフィリップだった。
姉とフィリプは結婚の約束をしていたが…その約束は1年前に突然破られることになる。
姉に好きな人が現れたからだ。
その男性は他の国から来た旅人で、偶然出会った2人はその場で恋に落ち…あっという間に結婚の話にまで飛躍した。
けれど、フィリップと姉は既に半年後に結婚することが決まっており、両家は猛反対した。何しろフィリップは男爵家の長男であり、片や我が家は名門商家とは言えども所詮はただの平民なのだ。
そこで両家は強引に姉と男性を別れさせようとしたのだが…ついに姉は恋人と一緒に駆け落ちしてしまい、行方をくらましてしまった。
子供の頃からずっと姉を一途に好きだったフィリップの嘆きは凄まじく…一時は命を断ってしまうのではないかと思われた。
彼の両親は姉の事は諦め、結婚適齢期のフィリップを何とか結婚させる為に様々な縁談を持ち込んだ。
けれど、姉のことをどうしても忘れることが出来なかったフィリップは頑なに縁談を断り続け…ついにアンバー家はフィリップの結婚相手に私を指名してきたのだ。
子供の頃から、妹のように可愛がっていたローズの妹ならフィリップも結婚を考えるのではないか…というのがアンバー家の考えだった。
私は子供の頃からずっとフィリップのことが好きだった。だから当然断るという選択肢は存在しなかった。
又、両親も姉がフィリップとの結婚を目前に見知らぬ若者と駆け落ちをしてしまったことに対し、負い目があった。
その為、アンバー家からの申し出を受け入れたのだった。
こうして両者の利害関係は一致した。
…ただ1人、最後までこの結婚に反対している人物を除いて。
だから私は説得した。
どうしてもフィリップと結婚したいという胸の内を明かしたところ…その人は最終的に納得してくれた。
そして私とフィリップの結婚話はトントン拍子に進み…本日結婚するに至ったのだが…。
まさか、結婚した当日に離婚届を渡されるなんて…。
****
「そ、そんな…嘘よね…?フィリップ…」
声を震わせながら私はフィリップに尋ねた。
「嘘じゃないよ。本気だ」
フィリップはこの時、始めて私と目を合わせた―。
フィリップは私の顔を見ることも無く言い切った。
「え…?」
あまりの言葉に頭が追いつかなかった。するとフィリップは部屋の中央に置かれた丸テーブルへと向かった。そこには大きめの茶封筒が乗っている。
「…?」
様子をうかがっているとフィリップは茶封筒を手に私の元へと戻って来ると差し出してきた。
「これを預けておくから、離婚する気になったら僕の代わりに提出してくれ」
「な、何…?」
震える手で封筒を受け取り、中から書類を取り出すと出てきたのは…。
「え…?り、離婚届け…?」
あまりのショックで言葉が出てこない。するとフィリップは言った。
「エルザ…君だって良く知っているじゃないか。僕が好きな女性はローズだって事位…」
「ローズ…お姉様…?だって、お姉さまはもう…」
私はその名を口にした―。
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私には3歳年上の姉がいる。
姉の名前はローズ。その名の通り、とても美しい人だった。
プラチナブロンドの巻毛に紫色の瞳…薔薇色の肌にピンク色の唇。
まさに絶世の美女と言っても過言では無かった。
私達家族は平民だったけれども、姉の美貌は王侯貴族にまで届く程で、数多くの求婚者が現れたが、どれ程身分が高い相手にも姉は首を縦にふることは無かった。何故なら…姉には恋人がいたからだ。
子供時代からの幼馴染であり…その人物が今、私の目の前に立っているフィリップだった。
姉とフィリプは結婚の約束をしていたが…その約束は1年前に突然破られることになる。
姉に好きな人が現れたからだ。
その男性は他の国から来た旅人で、偶然出会った2人はその場で恋に落ち…あっという間に結婚の話にまで飛躍した。
けれど、フィリップと姉は既に半年後に結婚することが決まっており、両家は猛反対した。何しろフィリップは男爵家の長男であり、片や我が家は名門商家とは言えども所詮はただの平民なのだ。
そこで両家は強引に姉と男性を別れさせようとしたのだが…ついに姉は恋人と一緒に駆け落ちしてしまい、行方をくらましてしまった。
子供の頃からずっと姉を一途に好きだったフィリップの嘆きは凄まじく…一時は命を断ってしまうのではないかと思われた。
彼の両親は姉の事は諦め、結婚適齢期のフィリップを何とか結婚させる為に様々な縁談を持ち込んだ。
けれど、姉のことをどうしても忘れることが出来なかったフィリップは頑なに縁談を断り続け…ついにアンバー家はフィリップの結婚相手に私を指名してきたのだ。
子供の頃から、妹のように可愛がっていたローズの妹ならフィリップも結婚を考えるのではないか…というのがアンバー家の考えだった。
私は子供の頃からずっとフィリップのことが好きだった。だから当然断るという選択肢は存在しなかった。
又、両親も姉がフィリップとの結婚を目前に見知らぬ若者と駆け落ちをしてしまったことに対し、負い目があった。
その為、アンバー家からの申し出を受け入れたのだった。
こうして両者の利害関係は一致した。
…ただ1人、最後までこの結婚に反対している人物を除いて。
だから私は説得した。
どうしてもフィリップと結婚したいという胸の内を明かしたところ…その人は最終的に納得してくれた。
そして私とフィリップの結婚話はトントン拍子に進み…本日結婚するに至ったのだが…。
まさか、結婚した当日に離婚届を渡されるなんて…。
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「そ、そんな…嘘よね…?フィリップ…」
声を震わせながら私はフィリップに尋ねた。
「嘘じゃないよ。本気だ」
フィリップはこの時、始めて私と目を合わせた―。
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