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3-6 意味深な言葉
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同時刻―
朱莉がキッチンで食洗器から乾いた食器の片づけをしていた時、バウンサーの上に乗っていた蓮が手足をバタバタさせた。それを見ながら朱莉は微笑んだ。
「フフ・・何て可愛いんだろう。」
蓮を見ているだけで、朱莉の心が明るくなってくる。昨夜翔に冷たい言葉を投げかけられたけれども、蓮を見ているだけで癒されていく。
(やっぱり私も翔先輩との離婚が成立したら・・・誰かと結婚して赤ちゃんが欲しいな・・・。)
けれど、将来自分の隣に立つ男性が誰か全く見当がつかなかった。けれども・・・。
「優しい人がいいな・・・。」
気付けばポツリと呟いていた。片付けが終わって蓮の傍に行くと朱莉はバウンサーから蓮を抱き上げた。
「よしよし、蓮ちゃん。今日は寝ないんですか?」
朱莉は蓮を胸に抱いて、背中をポンポンと軽く叩き、あやしていると、突然個人用スマホが鳴り響いた。
「え・・?」
着信の相手は京極正人からだった。朱莉は蓮を抱きながらスマホをタップした。
「もしもし・・・。」
自分では意識しないようにと思っているのに、声が震えてしまう。
『朱莉さん・・・久しぶりですね。』
「はい、お久しぶりです。」
『元気にしていましたか?』
「は、はい・・・。」
『朱莉さん。今から・・・会えませんか?』
それは唐突の誘いだった。
「え・・?今から・・?もしかして、京極さん・・東京にいらしたんですか?」
『ええ。もう10月から六本木に戻っていました。」
「え?10月からですか?」
『はい。本当は・・・もっと早くに連絡を入れたかったのですが・・・朱莉さんに拒絶されるのが怖くて・・連絡出来ませんでした。』
京極の声は寂し気だった。
「京極さん・・・・。」
京極と会話を交わしながら朱莉は思った。
(私が・・京極さんの事拒絶出来ないのは知っていますよね?だって、貴方はマロンを引き取ってくれた方ですよ?)
『朱莉さん、それで・・・本当に急なんですが、この億ションに併設の公園で待ち合わせしませんか?』
「え・・・?公園・・ですか?」
(そう言えば一度も行った事が無かったけれど・・公園があったっけ・・・。)
『はい、公園です。僕はマロンとショコラを連れて行きますから・・。』
「わ、分かりました・・・。あの、京極さん。」
『はい、何でしょう?』
「あ、あの・・・・。何を見ても・・・決して驚かないで・・下さいね?」
朱莉は念を押した。いよいよ・・蓮の存在を京極に明かさなくてはならない。けど・・不思議な事に何故か朱莉は京極になら大事な秘密が知られても大丈夫だろうと言う確信があった。すると予想通りの返事が京極からかえってきた。
『ええ、大丈夫です。僕は・・・何があっても驚きませんよ。』
「・・・ありがとうございます。それでは準備が終わったら公園に行きますので。」
『はい、待っていますね。』
朱莉は電話を切ると蓮に言った。
「レンちゃん、今から公園に行きましょうね?」
そして朱莉は念のためおむつ交換セットやミルクを作る為の道具を準備すると、スリングに蓮を入れ、ママバッグを肩から下げると玄関を出た。エレベーターを待っているうちに、いつの間にか蓮は眠りに就いていた。
「良かった・・・この調子なら・・・京極さんと話している間、レンちゃんは眠っていてくれるかも・・・。」
そしてエレベーターが到着したので、朱莉は緊張する面持ちで乗り込んだ。
(京極さん・・私に会いたいって言ってたけど・・・どんな話があるんだろう・・。でも京極さんと会うのってどうしてこんなに緊張するんだろう。)
そして沖縄で京極と会った時の事を思い出しながら公園に向かって歩いていると声を掛けられた。
「朱莉さん!」
声の方を振り向くと、そこにはマロンとショコラを連れて公園のベンチに座っている京極の姿があった―。
「お久しぶりですね。朱莉さん。」
京極は朱莉に近づくと声を掛けた。
「はい。お久しぶりです・・・。」
すると京極はニコリと笑みを浮かべた。
「ああ。やっぱり朱莉さんは・・いつ見てもお綺麗ですね。」
京極のその言葉に朱莉は思わずカッと顔が赤くなる。
(ど、どうして京極さんは・・・いつもそんな事を言うの・・?)
それなのに京極は朱莉が蓮を抱いている姿を見ても、何も質問してこない。ついに朱莉は我慢出来ず、自分から言おうと思い、顔を上げた。
「あ、あの・・・京極さん・・!」
すると京極が口を開いた。
「朱莉さん。少し座って話しませんか?」
「え?は、はい・・・。」
この公園の敷地内にもドッグランがある。朱莉と京極はドッグランに正面のベンチに並んで座り。2匹の犬が遊んでいる様子を少しの間無言で眺めていた。
「どうですか?朱莉さん。ここの公園は?」
ふいに隣に座る京極が声を掛けてきた。
「はい。とても素敵ですね。小さな噴水もあるし、ベンチも沢山・・それに・・。」
目の前には滑り台、ブランコ、砂場、スプリング遊具がある。
「子供用の遊具も充実してるでしょう?」
何処か意味深に京極は言う。
「は、はい。そうですね・・・。」
朱莉は蓮をギュっと抱きしめると言った。
「京極さん・・・あの、この子は・・・。」
「とても可愛いお子さんですよね。・・・男の子ですよね?」
「え?な、何故それを・・・?」
「ああ。だって・・・。」
京極は笑みを浮かべると言った。
「だって着てる服が全て水色じゃないですか?女の子なら大抵ピンクですよね?」
「あ・・そ、そう言う事・・・ですか。」
「ええ。」
「京極さん。それでこの子は蓮という名前で・・・。」
そこまで言いかけると京極は言った。
「いいですよ、最後まで言わなくても。僕にはこの子の両親が誰か知ってますから。だから・・・あえて朱莉さんから無理に聞き出そうとも思っていません。」
「京極さん・・・。」
(きっと、京極さんは・・・レンちゃんのお父さんとお母さんが誰か見当がついているんだ。だから・・・何も聞かないのね・・・。)
朱莉はこの段階で、またしても京極に大きな貸しを作ってしまったように感じられた。
「朱莉さん。子育てはどうですか?楽しいですか?」
突然京極が尋ねてきた。
「はい、楽しいです。毎日ちょっとずつ成長してきて・・・最近はご機嫌だと声も出すようになったんですよ。手足をばたばたと動かすしぐさは本当に可愛くて・・。」
気付けば、朱莉は夢中になって話していた。
「あ、す・すみません。私・・・一人で勝手にしゃべって・・・。」
「いえ、いいんですよ。朱莉さんが楽しそうに話をしている姿を見るのは・・・僕も幸せな気持ちになってきます。」
京極は朱莉の目をじっと見つめながら言う。
「あ・・あの、京極さんのお仕事の方は・・・どうですか?」
朱莉はその視線から逃れるように言った。
「ええ、お陰様で順調です。何もかも ・・・ね。」
京極の意味深な台詞を聞くたび、朱莉は不安な気持ちになって来る。すると突然京極が朱莉の左手を握りしめてきた。
「!」
思わず朱莉の肩がビクリと跳ねる。
「あ、あの・・・ここは敷地内の公園で・・誰が見ているか分からないので・・は、離して頂けますか?」
「ええ。質問に答えて頂ければ、ちゃんと離します。」
「最近・・・鳴海翔に酷い目に遭わされたり・・理不尽な態度を取られたりはしていませんか・・・?」
「え・・?な、何故突然そんな事を・・・?」
「僕は朱莉さんが・・・本当に心配だからです。それで、どうなんですか?もし・・不快な目に遭わされているのなら・・僕が助けてあげますよ?」
京極は真剣な目で朱莉を見つめた―。
朱莉がキッチンで食洗器から乾いた食器の片づけをしていた時、バウンサーの上に乗っていた蓮が手足をバタバタさせた。それを見ながら朱莉は微笑んだ。
「フフ・・何て可愛いんだろう。」
蓮を見ているだけで、朱莉の心が明るくなってくる。昨夜翔に冷たい言葉を投げかけられたけれども、蓮を見ているだけで癒されていく。
(やっぱり私も翔先輩との離婚が成立したら・・・誰かと結婚して赤ちゃんが欲しいな・・・。)
けれど、将来自分の隣に立つ男性が誰か全く見当がつかなかった。けれども・・・。
「優しい人がいいな・・・。」
気付けばポツリと呟いていた。片付けが終わって蓮の傍に行くと朱莉はバウンサーから蓮を抱き上げた。
「よしよし、蓮ちゃん。今日は寝ないんですか?」
朱莉は蓮を胸に抱いて、背中をポンポンと軽く叩き、あやしていると、突然個人用スマホが鳴り響いた。
「え・・?」
着信の相手は京極正人からだった。朱莉は蓮を抱きながらスマホをタップした。
「もしもし・・・。」
自分では意識しないようにと思っているのに、声が震えてしまう。
『朱莉さん・・・久しぶりですね。』
「はい、お久しぶりです。」
『元気にしていましたか?』
「は、はい・・・。」
『朱莉さん。今から・・・会えませんか?』
それは唐突の誘いだった。
「え・・?今から・・?もしかして、京極さん・・東京にいらしたんですか?」
『ええ。もう10月から六本木に戻っていました。」
「え?10月からですか?」
『はい。本当は・・・もっと早くに連絡を入れたかったのですが・・・朱莉さんに拒絶されるのが怖くて・・連絡出来ませんでした。』
京極の声は寂し気だった。
「京極さん・・・・。」
京極と会話を交わしながら朱莉は思った。
(私が・・京極さんの事拒絶出来ないのは知っていますよね?だって、貴方はマロンを引き取ってくれた方ですよ?)
『朱莉さん、それで・・・本当に急なんですが、この億ションに併設の公園で待ち合わせしませんか?』
「え・・・?公園・・ですか?」
(そう言えば一度も行った事が無かったけれど・・公園があったっけ・・・。)
『はい、公園です。僕はマロンとショコラを連れて行きますから・・。』
「わ、分かりました・・・。あの、京極さん。」
『はい、何でしょう?』
「あ、あの・・・・。何を見ても・・・決して驚かないで・・下さいね?」
朱莉は念を押した。いよいよ・・蓮の存在を京極に明かさなくてはならない。けど・・不思議な事に何故か朱莉は京極になら大事な秘密が知られても大丈夫だろうと言う確信があった。すると予想通りの返事が京極からかえってきた。
『ええ、大丈夫です。僕は・・・何があっても驚きませんよ。』
「・・・ありがとうございます。それでは準備が終わったら公園に行きますので。」
『はい、待っていますね。』
朱莉は電話を切ると蓮に言った。
「レンちゃん、今から公園に行きましょうね?」
そして朱莉は念のためおむつ交換セットやミルクを作る為の道具を準備すると、スリングに蓮を入れ、ママバッグを肩から下げると玄関を出た。エレベーターを待っているうちに、いつの間にか蓮は眠りに就いていた。
「良かった・・・この調子なら・・・京極さんと話している間、レンちゃんは眠っていてくれるかも・・・。」
そしてエレベーターが到着したので、朱莉は緊張する面持ちで乗り込んだ。
(京極さん・・私に会いたいって言ってたけど・・・どんな話があるんだろう・・。でも京極さんと会うのってどうしてこんなに緊張するんだろう。)
そして沖縄で京極と会った時の事を思い出しながら公園に向かって歩いていると声を掛けられた。
「朱莉さん!」
声の方を振り向くと、そこにはマロンとショコラを連れて公園のベンチに座っている京極の姿があった―。
「お久しぶりですね。朱莉さん。」
京極は朱莉に近づくと声を掛けた。
「はい。お久しぶりです・・・。」
すると京極はニコリと笑みを浮かべた。
「ああ。やっぱり朱莉さんは・・いつ見てもお綺麗ですね。」
京極のその言葉に朱莉は思わずカッと顔が赤くなる。
(ど、どうして京極さんは・・・いつもそんな事を言うの・・?)
それなのに京極は朱莉が蓮を抱いている姿を見ても、何も質問してこない。ついに朱莉は我慢出来ず、自分から言おうと思い、顔を上げた。
「あ、あの・・・京極さん・・!」
すると京極が口を開いた。
「朱莉さん。少し座って話しませんか?」
「え?は、はい・・・。」
この公園の敷地内にもドッグランがある。朱莉と京極はドッグランに正面のベンチに並んで座り。2匹の犬が遊んでいる様子を少しの間無言で眺めていた。
「どうですか?朱莉さん。ここの公園は?」
ふいに隣に座る京極が声を掛けてきた。
「はい。とても素敵ですね。小さな噴水もあるし、ベンチも沢山・・それに・・。」
目の前には滑り台、ブランコ、砂場、スプリング遊具がある。
「子供用の遊具も充実してるでしょう?」
何処か意味深に京極は言う。
「は、はい。そうですね・・・。」
朱莉は蓮をギュっと抱きしめると言った。
「京極さん・・・あの、この子は・・・。」
「とても可愛いお子さんですよね。・・・男の子ですよね?」
「え?な、何故それを・・・?」
「ああ。だって・・・。」
京極は笑みを浮かべると言った。
「だって着てる服が全て水色じゃないですか?女の子なら大抵ピンクですよね?」
「あ・・そ、そう言う事・・・ですか。」
「ええ。」
「京極さん。それでこの子は蓮という名前で・・・。」
そこまで言いかけると京極は言った。
「いいですよ、最後まで言わなくても。僕にはこの子の両親が誰か知ってますから。だから・・・あえて朱莉さんから無理に聞き出そうとも思っていません。」
「京極さん・・・。」
(きっと、京極さんは・・・レンちゃんのお父さんとお母さんが誰か見当がついているんだ。だから・・・何も聞かないのね・・・。)
朱莉はこの段階で、またしても京極に大きな貸しを作ってしまったように感じられた。
「朱莉さん。子育てはどうですか?楽しいですか?」
突然京極が尋ねてきた。
「はい、楽しいです。毎日ちょっとずつ成長してきて・・・最近はご機嫌だと声も出すようになったんですよ。手足をばたばたと動かすしぐさは本当に可愛くて・・。」
気付けば、朱莉は夢中になって話していた。
「あ、す・すみません。私・・・一人で勝手にしゃべって・・・。」
「いえ、いいんですよ。朱莉さんが楽しそうに話をしている姿を見るのは・・・僕も幸せな気持ちになってきます。」
京極は朱莉の目をじっと見つめながら言う。
「あ・・あの、京極さんのお仕事の方は・・・どうですか?」
朱莉はその視線から逃れるように言った。
「ええ、お陰様で順調です。何もかも ・・・ね。」
京極の意味深な台詞を聞くたび、朱莉は不安な気持ちになって来る。すると突然京極が朱莉の左手を握りしめてきた。
「!」
思わず朱莉の肩がビクリと跳ねる。
「あ、あの・・・ここは敷地内の公園で・・誰が見ているか分からないので・・は、離して頂けますか?」
「ええ。質問に答えて頂ければ、ちゃんと離します。」
「最近・・・鳴海翔に酷い目に遭わされたり・・理不尽な態度を取られたりはしていませんか・・・?」
「え・・?な、何故突然そんな事を・・・?」
「僕は朱莉さんが・・・本当に心配だからです。それで、どうなんですか?もし・・不快な目に遭わされているのなら・・僕が助けてあげますよ?」
京極は真剣な目で朱莉を見つめた―。
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